根井雅弘のレビュー一覧
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同じ著者の『物語 現代経済学』(中公新書)がなかなか良かったので購入。
『物語~』がメインストリームから外れた傍流にも目配りしたアメリカ経済学史とすれば、この本は時代の寵児ミルトン・フリードマンを中心に、サムエルソンの新古典派総合やフリードマン以前のシカゴ学派との「ずれ」に焦点を合わせたもの。それだけに、やや理論的な側面に重心を置いているものの、相変わらず素人にも分かりやすく説明している点は好印象。
ケインズとフリードマンの違いが、じつは巷間で言われるほど大きなものではなく、フリードマンのプロパガンダで印象操作された部分が大きいというのは、ちょっとした驚きだった。また、リバタリアニズムの -
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ネタバレ[ 内容 ]
アメリカ型の経済学教育の導入により、経済学の一元化が進み、自由な思考にとって最も貴重な多様性が失われている。
本書は、主流派が真剣に読まなくなった、マーシャル、ケインズ、サムエルソン、ガルブレイスらの経済学を再検討し、今日的視点から彼らの問題意識や問いかけのもつ意味を考察するものである。
異端派を排除してきた「ノーベル経済学賞」の問題点をも指摘しつつ、相対化を忘却した現代の経済学に警鐘を鳴らす。
[ 目次 ]
第1章 現代経済学の黎明
第2章 マーシャル経済学の魅力と限界
第3章 ケインズ革命
第4章 サムエルソンの時代
第5章 異端派ガルブレイスの挑戦
第6章 リベラリズムの -
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ネタバレ[ 内容 ]
ベルリンの壁の崩壊後、世界を席巻した「市場主義」。
だが、経済格差や環境破壊を引き起こすなど、欠陥を露呈している。
本書では、市場主義の源流に位置するフリードマンの経済思想を、同時代の証言を交えて読み解き、その功罪を明らかにする。
第二次大戦後、彼らが勢力を拡大した過程を辿る一方、アメリカの経済思想の多様さにも注意を促す。
[ 目次 ]
第1章 フリードマンの孤独な闘い-主流派経済学に抗して(「選択の自由」を訴え続けた経済学者 歴史の長い貨幣数量説 ほか)
第2章 静かなる時流の変化-「市場の失敗」から「政府の失敗」へ(『経済分析の基礎』 ベトナム戦争 ほか)
第3章 シカゴ学 -
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20世紀前半に活躍したウィーン大学出身の3名の経済学者たち。彼らが、社会主義に反対の立場だったことは良く知られているが、いずれも資本主義の成功のゆえに、精神の形骸化による衰退を論じていたということは驚きである。イノベーションという概念で起業家精神を主張するシュンペーターも、そして右寄りのイメージが強いハイエクも資本主義の末路を心配していた。それが民主主義と自由主義を標榜する日本においても現在進行していることを改めて痛感し、彼らの慧眼に恐れ入る次第。経済学だけではなく、政治哲学ともいうべき領域に彼らが踏み込んでいることは全く未知の領域だった。
シュンペーターの「資本主義・社会主義・民主主義」は一 -
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いわゆる”異端派”から見た現代経済学の多様性。本書は、今日の「主流派経済学」とは一線を画した、いわゆる”異端派”経済学者たちの思想を改めて振り返ることで、現代経済学の意義と限界を考察した一冊である。
本書で取り上げられている”異端派”経済学者の思想を見ると、その根底にあるのは、現代経済学が「科学」であろうとするが故に見逃してきた「非経済的価値」や「人間の非合理性」に対する注目である。例えば「第5章◎異端派ガルブレイスの挑戦」では、現代経済学の「通念」でもある「消費者主権」や「市場に従属する企業」といった概念への根本的な批判が紹介されている。このように、自らのキャリアを賭けて経済学の新知見を