最後に顕微鏡に触れたのは、学生の頃だった。四半世紀以上の月日が経つが、身近な植物を顕微鏡で視ることには興味がある。
本書は、身近な植物を断面から見たらどのように見えるかについて、筆者が平易に解説する。
全部で8章からなる本書は、前半部分は、筆者が厳選した59種類の身近な植物の葉や種子、根等の顕微鏡を通じた断面写真を詳細している印象だ。後半は、本書にて掲載されている断面写真等を撮影するべく、顕微鏡の使用方法について解説している。
印象的だったのは、次の3点だ。
★パイナップル
果実の先端から伸びる冠芽(かんが)という芽の断面観察をすると、それは、約半分くらいは透明な貯水細胞という水を蓄える細胞で占めているようだ。
パイナップルは乾燥地域で育ち、環境に適応するための構造を有している。ちなみに貯水細胞は六角形様であり、効率よく水を蓄えているように見える。
★ナス
果実表皮を観察すると、細胞の大半を占める液胞に水溶性のアントシアニン類が蓄積されていることがわかる。
ナスが紫色を呈しているのは、このアントシアニン類が鉄等の金属イオンと化学結合することにより、安定した形態を構築しているためであるらしい。
なお、ナスの液胞には、それぞれ1個程度アントシアノプラストと呼ばれる斑点領域がある。これは、部分的にナスの色素濃度を高める機能を担っているようだ。液胞の形状は、五角形様が支配的のように見える。
★ノリ
板海苔の一部を採取して観察すると、想像外の光景に逢えるようだ。細胞がタイル状に並び、各細胞の色調も、色素量等で微妙に異なるらしい。
本書に掲載されている表皮の拡大断面写真等は、スケールが明確に記載されていて、リアルに対象物を観察することが可能だ。
本書を通じて、局所部分における植物の構造を観察することができた。植物の葉等を間近で視ることは、中学生以来で、純粋に新鮮だった。
植物の種類によって細胞等の形状も変化することは、生きとし生けるものの多様性が持つ奥深さを感じざるを得ない。
巨視的に、かつ、微視的に捉えたり、種々の側面から物事を視る姿勢は、今後ますます求められるだろう。
そういう意味では、本書にて経験した植物の観察は、狭い所での植物の断面構造等に係る知識だけでなく、物の見方に関する引き出しも間違いなく増やしてくれるはずだ。