川邊健太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
川邊さん御本人が執筆されているであろうことが存分に伝わってくる。ウィットに富み、学を感じさせつつも、スルスルと読ませてくる文章。本の内容以上に、本を楽しく読ませてくる感覚が久しぶりであった。内容も当然面白く、いまでは当たり前のものが全てイノベーションであり、始まりがあり、起点となった人物がいて、それを独自視点で語って頂けている。
他にも面白い点が多いが、なかでもほとんどのサービスの始まり時点では、川邊さん御本人でも「あれは成功しない」「誰が使うんだよw」という視線で見られていたという振り返りである。書のキーメッセージでもあるが、『いかがわしいもの』がビジネスで成功するとは氏ほどの御仁でも想像できなかったことが知見に富む。
・勝負は「誰が最初に思いついた」かでも、「誰が最初に作った」かでもない。市場に受け入れられ、社会に定着するその瞬間まで、数え切れないほどの失敗を乗り越え、情熱を絶やすことなく、しつこく改善し続けられるかどうか。それが本質である。
・起業家とは、「いかがわしい」という侮蔑や嘲笑、嫌悪といった社会的な摩擦に耐え、それでも前に進む『いかがわしいもの』のことを指す。
・清き流れに魚住まず。
・一番優秀なヤツが、道具をつくれ。
・これまでの法則では「ネット屋がやる〇〇ビジネス」は、「〇〇屋がやるネットビジネス」に必ず勝つ。であったが、これからの法則は「ネット屋がやるAIビジネス」よりも、「AI屋がやる〇〇ビジネス」が必ず勝つ。である。
▼これからは『のび太』が大事だよ
本書にもたびたび登場したソフトバンクの孫正義さんは、常々そう語っています。
空を飛びたい。行きたい場所に瞬時に行きたい。ジャイアンをぎゃふんといわせたい。欲望や夢だけは人一倍持っていて、困ったときに「ドラえも〜ん、助けて!」と素直にもたれかかることができる。完璧な優等生を目指すのではなく、AIに臆(おく)せず依存できる「のび太」になれるかどうかが、AI時代における人間の生き方だと、孫さんはいうのです。
論理的に正しい答えはAIが出してくれます。しかし、論理だけで人は動きません。
これからの時代に価値を持つのは、人間味あふれる「人気者」です。
「正しくはないかもしれないけれど、こいつがいうならやってみたい」「この人の夢に乗っかってみるか」。そう思わせる人間的な魅力や愛嬌(あいきょう)、あるいは狂気のようなパッションこそが、人を動かし、お金を動かすようになるでしょう。
目指すべきは、完全無欠の「出木杉」ではありません。欲望に忠実で、どこか憎めない「のび太」です。ドラえもん(AI)が自らポケットに手を伸ばすことはありません。みなさんが「助けて!」と泣きつくことで初めて、「しょうがないな」と道具を出してくれるのです。 -
Posted by ブクログ
「LINEヤフー」という巨人を率いるものとしてインターネットの最前線を見続けてきた川邊健太郎氏の30年史。その「7つの激変」のうち5つはある意味インターネット黎明期に王者であった「Yahoo!」の敗戦記であり辞世の句とも受け取れる。氏が度々語る「清き流れに魚棲まず」をで体現した逆説的なトップランナーといえよう。一方で「文化」や「起業」の章は大企業の長の荷を降ろした氏の等身大の姿が窺えて興味深い。結局成否を分ける要素に「しつこさ」を挙げ、荒野を唯我独尊で突き進む「いかがわしさ」を強調する点に氏ならではの説得力がある。三木谷氏の「生き残るためにビジネスモデルを変更するのはあたりまえのことだよ」の言葉にカリスマ起業家そして稀代の経営者としての迫力を感じる。
ユーモア混じりに臨場感を持って語られる各エピソードはとても面白く氏自身ネット業界の要人であるが、推薦文を寄せた孫正義氏や三木谷浩史、藤田晋氏とのエピソードももう少し聞きたいところ。30年史をなぞる解説的話題が多くインターネット史としては非常にわかりやすかった一方、日本の代表的企業の経営者としての視座が欲しかった。