ジェームズ・ボールドウィンのレビュー一覧

  • ジョヴァンニの部屋

    Posted by ブクログ

    ネタバレ


    悲しい物語、どうしてこんなに悲しいのか

    主人公デイヴィッドが「愛そのもの」よりも「社会的に安全な自分」を選んでしまうこと
    ジョヴァンニの愛がまっすぐで、真剣で、逃げ場がないこと
    そしてすべてが“取り返しのつかない時間”として語られる構造

    ジョヴァンニの部屋という“閉じた空間”は、愛の聖域でもあり、社会からの隔離でもあり、逃げ場のない真実の場所でもある。あの部屋が、まるで心の内部みたいに感じられる。

    あの部屋で、あの目で、彼はずっと愛している。
    一方でデイヴィッドは、愛しているのに、自分の恐れのほうを選ぶ。

    ジョヴァンニの運命は変わらないとわかっている。デイヴィッドの後悔も、もう取り返せないとわかっている。だけど、どこかで運命がかわるんじゃないかって願ってしまう。だからカウントダウンが苦しい。読んでいる間、「お願いだから選び直して」って何度も心の中で言ってしまう。でも選び直さない。それがもうわかっているから、ページをめくる手が重くなる。

    デヴィッドが一番可哀そう、自分のことを愛してくれた、自分もまた確かに愛した男が今はもういなくなる、今後はその後悔を抱えて生きていかないといけない。ジョヴァンニは死によって物語が閉じる。でもデイヴィッドは、生き続ける。

    そして生き続けるということは—— 「本当は愛していた」という記憶を、消すことも昇華することもできないまま抱えること。
    彼は臆病だった。社会の目を恐れ、自分の欲望を恐れ、“普通の未来”にしがみついた。
    でも、その選択が一番愛してくれた人を失わせる。もし愛していなかったなら、ただの過ちで済む。でも愛していた。 だからこそ、あの部屋の記憶は一生消えない。夜中にふと蘇る。あの光、あの匂い、あの体温。それを抱えたまま、「何事もなかった顔で」生きていく。それがいちばん辛い。

    デヴィッドの行動には悔しいとおもってしまう、今の時代だったらこんな結末にはなってない、時代背景も彼らの運命に大きく影響している


    0
    2026年02月20日
  • ジョヴァンニの部屋

    Posted by ブクログ

    自分に違和感を覚え、何か満たされない者たちが惹かれ合って依存してしまい、その先に破滅が待っていると知りつつも刹那的な愛と美しさを求め合う。
    ジェームズ・ボールドウィンの小説にこんなにも感銘を受けるのは、自己の探究を深いところまで激しく描いているからだ。時に息を呑むほど美しく詩的であり、時に読むものに恐れを抱かせるほどに激しく徹底的に正直に。それはやはりボールドウィンが黒人作家であり同性愛者であったからであり、常に愛と人間の尊厳を最も尊び語ってきたからだと感じさせられた。

    0
    2025年02月09日