2000年代から始まったビザなし交流の一環である、北方領土の自然環境調査。20年におよぶ調査によって明らかになってきた知られざる動物たちの世界をまとめた一冊。
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2000年代になって北方領土の動物の調査が始まったことは知っていて、たとえば白いヒグマがニュースになったりして気になっていたのですが、このほど一連の調査のまとめとして刊行されたのが本書になります。
とても興味深いことが書かれているのですが、幅広い見知が得られる内容だと思いました。それだけに読み解くためにはちょっと深めの知識が必要です。
印象に残ったのはコウモリ類で、クナシリまでは北海道とほぼ変わらない種がいるのにエトロフまで行くと激減するのだとか、詳細な遺伝子解析で北海道個体群よりも大陸個体群に近いことから、地史的な分布の段階が違うのではないかという話が面白かったです。
また、鯨類もオホーツクで見られる種類が変化しており、これらは温暖化に伴う流氷環境の変化が影響しており、流氷の減少は今後、地域の生態系に深刻な影響をもたらす可能性があることも指摘されています。
このように、北方四島だけではなくて北海道を含めた流氷圏としての生態系として論じている人が多かったのが印象的でした。海洋に囲まれた北海道・北方領土はやはり温暖化の影響を強く受けるので、今後のことが心配になりますね。
一方で北方領土は自然環境がよく守られていて原生の自然が良好に保たれているので、どう保全していくのかが課題になってくる。そこに関心を寄せるために白いヒグマもイメージ戦略として取り入れていくのはどうか、などと提言されているのもひっかかりました。
ともあれ、動物研究者たちによる調査が実は2019年(コロナ前)まで続けられていたことに驚きましたし、その後ウクライナ戦争によって交流が途絶えて研究もまた途絶えてしまったことが残念です。今、北方領土はロシアによるリゾート開発が盛んになっているようですが、原生の自然がしっかり保全されるように願います。