15歳の少女はなぜ嘘をついたのか… 性犯罪への偏見、歪んだ司法を描いた法廷ミステリ #小さな嘘つき
■あらすじ
弁護士のアリスは、強姦事件の被害者であるリザから弁護の依頼を受ける。アリスが事件について調査を進めていくと、ある日リザから衝撃的な告白がされる。当時15歳だったリザが嘘をつかざるを得なかった理由とはなんだったのか…
■きっと読みたくなるレビュー
真実とは曖昧で、ある方向から見れば○であっても、他方から見れば×ということもある。現代に書かれるべくして書かれた小説… なんかもう、胸が苦しくなるわ。
本作は少女時代に性犯罪を受けた女性から、控訴審裁判の依頼を受けた弁護士の物語。物語の後半は法廷ミステリーとなり、事件の裏側にあった少女の横顔が描かれていく。
15歳の少女といえば、まだ大人の階段を上っている途中ですよね。世界各国、いつの時代においても、この世代の女の子にはセンシティブだったりします。本作ではそんな微妙な時期の彼女を露骨に描いてるんです。
親と子どもの衝突、子どもたち同士の歪んだ関係性など、若いからこそ染み出てしまった感情がやたらリアルに迫ってくる。爆発しそうな罪悪感がわかりみが過ぎるのよ。やっぱり親子関係って大事だよなーと痛感しましたね。
推したいキャラと言えばやっぱりこの人、弁護士のアリスですよ、おそらく私と同じ年代の彼女。難しい課題に立ち向かっていく女性って、なんでこんなにも輝いて見えるのか。カッコイイんです。特に終盤の法廷シーンは読み手をぐぐっと惹きつけますね。映像化されたら、きっと力強い演技になりますね。
性犯罪への偏見、歪んだ司法をテーマにしており、Metoo運動、ホワイト社会が叫ばれている今こそ読んでおきたい一冊でした。
■ぜっさん推しポイント
今日も過去にあった芸能人の性加害記事でネットニュースを賑わせている。これらの問題は被害者保護の観点から、事実が明らかになることは少なく、被害者がどのようにとらえているかという視点で語られるのがほとんど。
被害者たちは本当に辛いだろうし、決して嘘をついたり、事を大きくしたりしたいわけではない。でもその時々の色んな事情、自身の状態、人間関係によっては、客観的な視点において、事実から歪んでしまうこともありうる。
一番いけないのは、見聞きした情報の断片をとらえて、好き勝手騒ぎ立てることではないだろうか。自分の人生が大切であるように、その騒がれている事件の関係者の人生も大切ということを忘れずにいたい。