生姜湯みたいな、滋養をもらえる漫画だと思いました。
すごくホッとする画風、テンポ、言葉の選び方。
男の子にドキッとして心臓が飛び出しちゃうとか女の子の可愛さに気付いてキューピッドに弓矢で射られちゃうとか、今日日なかなかありそうで見ない演出ですよね。
これだけだとミルクセーキとかはちみつラテとかそんな感じの甘々になっちゃうところ、ヒロインの〈あーしちゃん(桜野あしな)〉は恋にかまけるだけの子ではなくて、13歳から14歳という心身の変化・成長が著しいときをサッカーボールを蹴り出しながら強くなっていく予感…というピリッとした味付けがいい。
面白いなと思ったのは、あーしちゃんはサッカー部員というわけでなくてただドリブルが上手い子である(ただしやってみたらシュートとか上手い)、という設定。ドリブルしながらの登校中にサッカー部の人気者〈神堂碧斗〉と路地で鉢合わせしちゃう、ベタかと思いきやちょっと外してくる感じが全体から伝わってくる。
神堂くんは神堂くんで、人格者だしものすごくいい奴なんだけども、ちゃんとあーしちゃんの胸元とか腰とか見て悶々としたりきちんと年相応の反応をしてるのがむしろ健全で応援したくなる。《第6話》であーしちゃんがドリブル対決している様子を橋の上から見守る神堂くんはさながら明子姉さんの如し。
いや、セリフとか演出がなんか味わいがあるんですよね。語弊を恐れずに言えばスタジオジブリ的な、なんか沁みてくる。あーしちゃんの嘘みたいな牛乳瓶眼鏡と「〜だし」って語尾癖から当初は変わったキャラクターによる出オチパターンかなと思いきや、流れる空気にしっかり読者を捕まえる魅力がいっぱい。
てか、今どき牛乳瓶眼鏡って伝わるのか…。
「今日は寒くてセーター一緒だね」
「寒の戻りなんだし」(p163)
ここのやり取りが一番好き。
「只 君という惑星にもっと近づくために
あーしの頭でぐるぐるしている
君に伝えたい想いは
結局口にすることはできず
いつも重力に負けて落っこちちゃうんだし」
(p134、135)
ちょいちょい挟まるポエミーなあーしちゃんもよい。
あーしステップの続きが読みたい!
長く連載してほしいなあ。
1刷
2025.7.19