佐野真由子のレビュー一覧

  • オールコックの江戸 初代英国公使が見た幕末日本

    Posted by ブクログ

     筆者の研究対象への愛情がありありと分かる作品だ。これは明らかに歴史小説である。ただし、歴史学の手続きを踏んでいるので、信憑性は高い。高いがあくまでこれは研究者が小説家となって書いた作品と言える。
     オールコックが幕末の日本に来てどのような役割を果たしたのかについては同じ史料を前にしても全く異なる解釈がうまれるだろう。大英帝国の野望を持つものが未開の日本を傘下に組み込むための手段を考えないはずはない。ただ本書によれば幕府の不可解な制作決定機構に翻弄され、それでも日本文化に深い理解を示し、日本代表団をパリ万博に誘導して、国際社会へデビューさせた人物として描かれている。それは事実かもしれないが、本

    0
    2021年08月14日
  • オールコックの江戸 初代英国公使が見た幕末日本

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    日本に初めて英国駐留公使として派遣されたオールコックの半生記。まだ日英の辞書も通訳も存在せず、攘夷派武士に斬り殺される危険もあった時期の日本で、粘り強く外交を続け、ロンドン万博への日本代表派遣などの実績を残した。19世紀末に欧米人と日本人が出会うのは宇宙人との交信ぐらい勇気が要っただろうと思う。全くの手探り状態から、互いの知性と論理を通わせ、ついにはヨーロッパへの長旅を共にするまでの信頼関係を築くに至った英国公使と幕僚たちとの心中を思うとワクワクする。

    0
    2018年12月26日
  • オールコックの江戸 初代英国公使が見た幕末日本

    Posted by ブクログ

    初代英国公使、ラザフォード・オールコックの江戸在勤時の暮らしぶりや、彼の仕事、その上での喜びや苦悩が小説調で綴られる。
    西欧人にとっては「未開の地」に等しかった日本。
    そこで過ごす彼の目線から見た、幕末日本の様子が新鮮。

    0
    2012年03月31日
  • オールコックの江戸 初代英国公使が見た幕末日本

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     江戸時代末期に英国公使だったラザフォード・オールコックの人生を切り取った本。英国公使の視点で見ることで日本史で習った幕末の違った見え方を知ることができる。オールコックという人物をこの本を読むまで知らなかったが日本の歴史に水面下で大きな影響を与えている。教科書では直接歴史を動かした事件、人物で一杯一杯になっているから歴史の裏舞台を知ると今までの歴史観が変わる。
     オールコックと幕府の外国奉行とのやりとりを見ると、幕府はただ外国に押されてばかりではなかったのだということが分かる。特に神奈川を開港する条約を結ばされて横浜村を埋め立てて神奈川と言って通したのは面白い。外国人商人をうまく利用して政府代

    0
    2013年07月27日
  • オールコックの江戸 初代英国公使が見た幕末日本

    Posted by ブクログ

    初代駐日公使として1859年から1862年まで日本に滞在した
    オールコックを紹介する一書。
    作者のオールコックに対する思い入れが伺え、
    時に行きすぎでは、想像しすぎではと感じる場面もあるが
    全体的に読みやすく、内容をすっと読み込める。

    オールコックの果たした役割を分かりやすくまとめており
    日本に対して実際に国際社会に関わりを持たせる、
    自覚を得させることで、日本国内における
    政治的駆け引きとしての「外交」から解き放ったという説明は、
    なるほど読んでいて合点がいくものであった。

    0
    2012年05月24日
  • オールコックの江戸 初代英国公使が見た幕末日本

    Posted by ブクログ

    初代イギリス総領事オールコックの書簡などから彼が幕末激動の日本で総領事として どう幕府と交渉したのか、どう庶民と接したのか、どう長崎/江戸/横浜で過ごしたのか、日本人をどう思ったのか、がわかって面白い。
    やっぱり攘夷での襲撃にはかなり不安だった様子。通行の自由は欲しいものの、襲撃から保護するためにも居留地区に押し込めようとする幕府への反発。権利にはリスクも伴う という現実的な例。

    0
    2017年04月07日