渡辺秀樹のレビュー一覧
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著者は同郷の憲法の大家芦部信善に関する評伝から更に芦部教授が理論的に開拓した憲法訴訟の具体的な日本における展開を憲法事件として紹介する。
憲法を学ぶ上で本書のように訴訟当事者(特に原告と代理人、更に合憲性を判断する裁判官)の個々具体的な事情と考え、時代背景等コンパクトながら要点を的確にまとめてあり、大変参考になるだろう。
憲法百選に掲載されている著名な判例から最新の事件までも憲法上の各論点=テーマ毎にフォローしてあり、日本の戦後新憲法を俯瞰できる。
以下いずれも憲法の生命≒実効化のための当事者の「不断の努力」の賜物である。
第1章平和の原則(9条)
浅間山米軍基地闘争
砂川事件
恵庭事件
長 -
Posted by ブクログ
私が司法試験の勉強をしていたときは、佐藤幸治「憲法」、そして、まだ教科書も出ていなかったけど(マスメディア法とアメリカ憲法入門はあった)、松井茂記先生のお考えにどっぷりハマっていて、芦部説はあまり触れてなかった。通説だというので、芦部憲法も読んだけど、岩波の芦部憲法(確か、平成5年ころ?)の初版が出たときは司法試験に合格する年だったから、私が読んだのは放送大学のテキストだったはず。
私は松井茂記先生(当時、留学帰りで助教授だった)の講義に出て、指定教科書が佐藤幸治憲法だったのに、それとも違うプロセス憲法観を黒板いっぱい使ってエネルギッシュに展開する姿にガビーンとなり、本気で法律を学び、また、 -
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法学部で憲法を学んだ者で芦部教授を知らないというのは如何に真面目に学んでいないのかを自白するようなものだが、それが成蹊大学法学部出身の安倍晋三で憲法改正を目論んでいたのだから悪い冗談だ。
著者は芦部教授と同郷で高校の後輩という縁から、信濃毎日新聞の論説委員となってから憲法改正問題を通じて関心を持ったそうだ。
本書で特に注目したのは、著者がジャーナリストとしての嗅覚を生かした番外編2つのスクープ。
1つは第4章国家と宗教でも取り上げられる閣僚の靖国神社公式参拝問題だ。
戦前の国家神道が政治と不可分に密着し、軍隊を神格化し国への貢献を精神的に鼓舞してきた罪の大きさから現行憲法に設けられた政教分離原 -
Posted by ブクログ
様々な憲法論議がある。その憲法とは何か。私たちの権利を保障する根幹であり国家権力の横暴を抑止する効力である。その理解の欠如が、まさに民と為政者の平衡を危うくするものであり、学校教育も含めて私たちは政治により関心を抱く必要性がある。でなければ、この国は勇ましい言葉と共にまたも戦争という悲劇へと行進するであろう。憲法第9条の平和主義を疎かにしてはならない。これは右左の信条とは関係なく人として守るべき尊厳にも通じる。戦争とは命を軽視する愚行にほかならない。当書で取り上げられる靖国参拝は合憲か、違憲か、結果ありきの靖国懇は、不穏な進路に気付かないマジョリティの思い上がりがちらついている。