藤原貞朗のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
世界を代表する芸術の殿堂であるルーブル美術館を軸としながら、フランス近代〜現代史を概観する書。かつて王室や富豪が独占していた美術品を、全ての「市民のための美術館」であるルーヴルに収めるという一見リベラルで開かれた政策を掲げながら、文化的には保守的なフランスという国が、その膨大な文化的遺産をその時々の国家的ヴィジョンに沿った形で最大限に活用してきた経緯が仔細に描かれている。
本書中盤にある、戦後ナチスドイツの占領から解放されたフランスが、戦時下の保守的なスタンスを払拭すべく当時ルーヴルで施行されていた印象派の伝統的絵画史への包摂政策を放棄した、という見解はやや牽強付会にも映るが、本書全体