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Posted by ブクログ
ネタバレ『君を「ナツキ」と呼ぶまでの物語』は、「名前を呼ぶ」という一見ささやかな行為にこれほど深い感情と時間を託せるのかと、静かな驚きを与えてくれる作品。本作は派手な出来事や劇的な転換に頼ることなく人と人との距離がほんのわずかずつ縮まっていく過程を、誠実に、そして丁寧に描き切っている。
物語の中心にあるのは、相手を大切に思うからこそ踏み込めない心の逡巡であり、呼び名一つを変えることすら躊躇してしまう不器用さだ。その感情は決して誇張されることなく、沈黙や言葉の選び方、視線の揺れといった細部を通して描かれるため、登場人物の内面に静かに寄り添うことになる。
本作の重厚さは、感情を急がせない構成にこそ宿っ