アントニーコックスのレビュー一覧

  • 「今この瞬間」への旅 新訳版

    Posted by ブクログ

    この本は、日本の出版界に爆弾をもたらしました。
    日本の読書界において、これほどの恐怖はありません。
    「MIND」という英語は、「心」という意味では無かったという驚愕の事実です。
    根深い問題ですよこれは・・・。

    この本は2人の訳者による共同訳になっており、その2人ともが著者のレナード氏と親交があります。
    そのうちの一人であるアントニー氏は英語が母語の生まれです。
    そのアントニー氏のあとがきにて、こう書いてありました。
    「日本ではMINDが心に訳されるのが定着しているが、英語が母語の自分にとっては違和感がある。MINDは頭の中のことである」
    日本の出版業界がひっくり返る事態です。
    思わず自分の持っている翻訳された書籍を洗いざらい読み直してみました。
    絶望しかありません。
    多くの翻訳書籍が「MIND」を「心(たまに精神)」として訳していることが分かりました。
    だから「心」「精神」と記載されている箇所を「頭脳」もしくは「頭」と置き換えて読んでみると、すべてのつじつまが合う・・・・。
    翻訳された多くのスピリチュアル本において不可解だった「ハートと心」という珍妙な言い回しの謎も解けてしまう。
    本来は「ハートとマインド」もしくは「心と頭脳」という表現だったわけです。
    これなら対比の意味が分かります。
    「ハートと心」だと対比の意味が分からない。

    たとえば「脳を変える心」(シャロン・ベグリー著)という邦訳本がありますが、案の定「Train your Mind, Change your Brain」という原題なんですね。
    本書の内容は「脳の作用それ自体が脳そのものを変えていく」というテーマの本です。
    ところが、邦訳タイトルだと「心」が「脳」を変えるということになっています。
    脳の外からのアプローチになってますね。まるで「心」を主題とした本に思えます。
    でも本書を読んでみると、「脳の中から脳自身に脳を変えさせる」ということになっている。

    Mindを心と訳す悪習のせいで、技法が日本人に正しく伝わらない。
    これはゆゆしき事態です。

    「Mindをリラックスさせる」「Mindに集中する」と英語圏の人が言ってるときに英語圏の人は頭の中に意識を持って行くが、
    それ日本に来ると「心をリラックスさせて」「心に集中する」という言い回しに替わり、日本人は胸の辺りに意識を持って行くことになる。
    日本語で生まれ育った日本人の99.9%は、「心に意識を集中させてください」と言われると「胸の辺り」に意識が行くのは火を見るより明らか。
    日本人だけMindのくだりを「心」と読み違えるせいで、まったく違った方向へ進んでしまう。
    日本人だけ、頭を力ませて頭に気が上ったまま、胸の辺りを必死にコントロールしようと試みてしまうことでしょう。
    日本人だけ「マインドフルネス」ができないという笑えない事態が起こる。
    英語圏の人たちが瞑想から着想を得て作った「マインドフルネス」は、頭の中からアプローチするものであり、まずは自分の頭の中と向き合うことを要求される。

    たとえば、恐怖を司る偏桃体は脳にありますね。
    恐怖の発生源が偏桃体であるのは医学的な常識であり、動物実験でも確かめられています。
    恐怖の源泉と対峙しようと思えば、脳に集中するしかない。
    心をいくら探っても、恐怖の源泉は無い。恐怖が発生したあとにストレスがかかるのが心だからです。
    Mindを心と訳してしまえば、日本人はみな「心」からアプローチしようとする。なにせ「心」と書いてあるんですからしょうがないですね。
    でも、そのメソッドは決して成功しない。
    「頭の中」に意識を持って行かせたい原著の意図は、日本人だけには伝わらないのが現状です。

    面白いことに、洋書で「MIND」の単語が入ってるタイトルの本を見ると、たいてい表紙に「脳」か「頭」のイラストが出ている。
    日本人翻訳者は、なぜそれにも関わらず「MIND」と「心」と訳し続けるのか・・。
    wikiでMINDの英語解説を読むと、「MINDは、思索、感じ、知覚、イメージ、意志などの現象を内包する」と書いてあり、そして頭のイラストまで付いてる。
    もはや「MIND=頭の中のこと」で間違いない。

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    2025年07月07日