これまで「古代研究」を読んで、そのイメージの喚起力に圧倒されながらも、何を言わんとしているのが良く分からなかった。本書は、折口古代学について、文学の発生理論、芸能の発生理論、さらに国家の発生に至る一般理論へと発展していく過程を具体的に跡付けて叙述され、また、折口の方法論についても詳細な説明がされるなど、納得できるものだった。
また、書名となっている、折口の戦後の天皇論、そして宗教論が、かなりショッキングな内容であることも、著者の見解によって改めて教えられたが、その背景として、硫黄島で戦死した養子への慟哭の思いがあることが良く分かった。