感情とは何かを体系的に理解する教科書のような本で、これまでの研究についても網羅的に整理されていて分かりやすい。例えば、全てを詳述はしないが、1890年代ジェームズーランゲ説、1920年代キャノンーバード説、1960年代シャクターシンガー説、1980年代ラザルス説、1990年代ソマティック・マーカー仮説など。
ジェームズーランゲ説は、興奮させるような事実を知覚すると、まず直接的に身体的な変化(胸がドキドキする、息が荒くなるなど)が起き、それらの変化を脳が感じることが情動の本質である。これは心理学本なんかでも有名で、楽しくなくても無理矢理笑ってみれば、なんだか楽しくなっちゃうなーのアレだ。やる気がなくても先に身体を動かしてしまえ!という身体ハック的な自己啓発の文脈でも語られる。
シャクターシンガー説あたりから、身体反応は自分の過去の感情体験を結びつけて判断する、認知的な物語をラベリングしているのだという発想になっていく。
いずれも、身体反応の認知的評価が感情の主体であるという考え方であり、感情と身体は切り離せない。少しややこしくなるが、これを更に定義づけすると、動物にもあるような未分化で原始的な反応を(emotion)情動。ヒトで発達している社会的に意味のある反応を感情 (affect)。対象や誘引が明確でないこころのアップダウンを気分(mood)とする整理が紹介される。
マラソンで考えてみると、情動とは、苦しくてもう走れないという即時的な身体反応。だが、もう少し頑張ればゴールだからと前向きに捉えるのが感情による社会的翻訳。その翻訳において、計算や検索などのプロセスを担うのが思考だ。気分は更にホルモンバランスからの持続性ある身体反応という理解ができそう。
難しめな話もあるが、分かりやすく楽しめる良書だと思う。読後の感情はポジティブだ。