1章
ぼくだってぼくを選びなおすことは、できるはずだ。
信じられるおとなを探して。
誓ってもいいが、子どもの涙はおとなの涙よりちいさいなんてことはない。おとなの涙より重いことだって、いくらでもある。誤解しないでくれ、みんな。なにも、むやみに泣けばいいと言っているのではないんだ。ただ、正直であることがどんなにつらくても、正直であるべきだ、と思うのだ。
どんなにつらいことだったとしても、自分の心に正直であれ、と。
ただ、ごまかさないでほしい、そして、ごまかされないでほしいのだ。不運はしっかり目をひらいて見つめることを、学んでほしい。うまくいかないことがあっても、おたおたしないでほしい。しくじっても、しゅんとならないでほしい。へこたれないでくれ!くじけない心をもってくれ!
本ってのはね、ほんとうの読者が手に取ってくれるのを、じっと待っているんだ。自分のことばをほんとうに必要としてくれる、たったひとりの読者が現れることをね。ほかのだれでもないアンタという読者に見つけてもらうことをね。
ごまかざず、ごまかされないこと。正直であること。勇気とかしこさ。
「なぜ生まれてきたのか」「なんのために生きているのか」という問いは、確かに子供っぽい悩みかもしれない。でも僕はそれを解消できなかった。誰も納得いく形で答えを提示してくれなかった。そういう問いに対して、大人が全力で考え、正面から答えを出そうとしているものが、僕はやっぱり好きだ。
みんなわからないし、考えることにフタをしちゃってるんだ。考えないほうが生きやすいと、知ってしまったから。人生は猛スピードでアタシたちの背中を追いかけ、追い立ててくる。急げ、走れ、前に進めってね。答えがあるのかないのかわからない問いに頭を悩ませているヒマがあったら、目の前の面倒ごとを片付けなきゃいけない。アタシたちに与えられた時間は、有限なんだ。
大人が若者に偉そうに言います。「お前の悩んでいることは大人になったらどうでもいいことだったとわかる」と。どうでもいいことに気づくことを成長みたいに言わないで欲しいと、僕は思います。
どういうわけだか本のなかのおとなたちは違う。生きる理由とか、生まれてきた意味とか、ほかのおとなたちが見て見ぬふりをしている問題を真剣に考えて、なんとかことばにしようと、もがいている。
「信じられないおとなが身近にいない。それは心底さみしいことだ。なにもかもいやになって投げ出したくなるくらい、さみしいことだ。でも、本の向こうには信じられるおとながいる。考えることをフタせず、自分をごまかすことをしなかった、真剣なおとなたちがいる。」
「だったらちゃんと受け止めてあげよう。その作者は、アンタを信じて書いているんだからね。きっと届く、きっと読んでくれる、きっとわかってくれる、と信じているからこそ作者は書いて、本に残すのさ」
「もしもアンタが本は嫌いだとか読むのは苦手だとか思っているとしたら、それは大間違いだ。アンタはこれまで、『自分に宛てられた手紙』に出会っていなかっただけなのさ。」
いちばん正しくて、いちばん退屈な答えを言うなら『手当たり次第に、片っ端から読め』だ。片っ端から読んでいくなかで、不意に運命の一冊と出会う。自分のために書かれたとしか思えない本に出会う。『この気持ちがわかるのは自分だけだ!』って感激するような本にね。その快感といったら、それはすごいものさ。
『わからない』って経験も大切なのさ。
だけど安心しな。わかるときは、ちゃんと来る。
こういう謎ってのは、ふとした拍子に気づいたりするものだから。
間違っても自分のこと、みじめだなんて言うもんじゃかいよ。
2章
とっくに答えを出しているのに、自分の答えに自信が持てないでいる。自分ひとりで決めるのが怖くって、自分じゃないだれかに決めてもらおうとしている。
愛だってよろこびだって、あたたかさだってたのしみだって、ぼくが提供するんでなければ、誰もこっちに与えてくれない。
この苦しい毎日からアンタ自身を救い出すため、アンタは立ち上がるんだ。アンタが自分から行動を起こさないことなかは、ずっとこのままなんだからね。
へこたれるな、くじけない心をもて。アンタがアンタ自身に、語りかけなきゃいけないことばなのさ。これから自分が一歩を踏み出すためにね。
恋をしている者は偉大な創造者です。しかし、恋されている者は、もし恋されているだけならば、哀れな享受者にすぎません。
アタシたちにとっていちばんのよろこびさ、だれかやなにかを『好きになること』なんだ。『なにかを好きになる自分』を、待っているのさ。
自分にとってほんとうに大切な本を読むときのアタシたちは、本のなかに『自分』を読むのさ。まるで鏡を覗き込んで、しげしげと自分の顔を眺めるようにね。鏡がなかったら自分がどんな顔をしているのかわからないだろ?それと同じで、アタシたちの心も、自分ひとりではどんな姿をしているのかよくわからないものなのさ。
いい本には、かならず自分が映し出される。そして本に書かれたことを頼りに、アタシたちは自分を知っていく。自分という深い森のなかを、探検していくんだ。その作者はきっと、アンタと同じ悩みを抱えていたり、過去に経験していたり、あるいはそれについてとことん考えたりしたんだろうね。
3章
本はただのことばだ。でも、アンタと同じくらいのさみしさを抱えた作者が、だれかとつながろうとして書いたことばだ。だから本は、アンタが手に取ってくれるのを待っている。アンタとつながることを待っている。
好きなものに優劣はない。
本を読むときには、その『思いどおりのならなさ』がスリルだったり、おもしろさだったりするんだ。こっちの願いとはぜんぜん違う方向に進んでいくおかげで、アンタを思いもかけない場所に連れていってくれる。
ウソと秘密は、違うもの。だれだって秘密は、抱えているもの。
4章
日時のなかで、なるべく心を動かさないようにしていること。感情を抑えて、自分を守ろうとしていること。それはかまわない。社会で生きていくにあたっては、ある程度必要なことだ。でも、ずっと動かさないままでいると心は固まって、衰えていく。
なるべくたくさんの意見に耳を傾けて、自分にとっての正解を、自分で見極めるんだ。
5章
足元の闇に目を向けず、光を探すこと。
闇の誘惑を振り切って、光を探す。ちいさな希望を、その光を、自分のなかに探していく。そして見つけた光だけを追って、前に進む。足元の暗闇は、いっさい見ない。おかげでいつも、あかるく照らされている。
なんの光も見えないときは?どこにも希望が見当たらないときは?
いちばんよくないのは、俯くこと。顔を上げる。見える景色を変えてやる。深呼吸をして、新鮮な酸素を取り込む。それだけで案外、光は見つかるものさ。ほんのちいさな光かもしれかいけどね。
6章
選んだ道がどこに続いてゆくかなんて、生きてまたなけりゃわからない。あれこれ考えずに直感に従う。