西村祐子のレビュー一覧
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高級ブランドの代名詞といえば革製品であった。本物の皮を使い、丈夫で長持ち、なおかつファッション性があるというのがブランドの始まりであった。
もちろんこの裏には、世界中で忌み嫌われた皮なめし職人たちがいたわけではあるが、欧米では皮商人などいくつか階層を挟んで、世に出ることができた。
一方、日本でも同様に忌み嫌われていた皮田部落の革製品については、彼らのブランド化に消極的なこともあり、いまだに日の目をみていない。
サステナビリティの荒波によって、いまや革製品自体が嫌われるようになり、安価な合皮や化学繊維、また植物由来の革製品が代替されているが、元を辿ればたいていの革製品は人間が食した肉の残骸 -
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ファッショングッズとしての皮革は、毎日のように目にする。
が、それがどうやって私たちの手元に届くのか。
恥ずかしながら、この歳になるまで、全く考えたことがなかった。
筆者は世界各地の皮を作る職人を調査してきた研究者。
動物の屠殺から、皮をはぎ、肉や毛を落とし、タンニンなどを用いてなめす。
皮なめし職人は高度な技術を持ちながらも、重労働の上、においや汚れが忌避され、かつてはコミュニティの周縁に追いやられることが多かったという。
この話は、日本国内でのこととしては聞いたことがある。
が、イベリア半島やモロッコのユダヤ系の人々や、客家なども同じような歴史を持っていたということは、本書で初めて知っ -
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ネタバレ皮革とブランド
変化するファッション倫理
著者:西村祐子(駒澤大学総合教育研究部教授)
発行:2023年5月19日
岩波新書
皮革製品は高級ブランドに欠かせない、中心的な存在。一方で、時代によるファッション倫理の変化の影響を受けやすい運命もある。かつては高級ファッションの象徴だった毛皮のコートを見ることも、いまやない。これは動物愛護の倫理観だが、では、その代わりに石油由来の合成皮革を使えば、今度は環境面で優しくない。
家畜の牛や豚の肉を食べた後、その皮を利用するならいいだろう、逆にその方が環境のためになる、というのも正統な理屈だが、それでも肉を食べないベジタリアンやヴィーガンは納得せず、