エルファーン王国の第二王女ラズシエル・エルファーンの部屋に、とつぜん魔族の王子ルークが入り込んできます。いきなりラズシエルにキスをしようとするルークに、思わず叫び声を上げてしまったラズシエルでしたが、やがてルークが、ラズシエルを彼女の姉でエルファーン王国を統治するミネルヴァ・エルファーンと間違えたことが分かります。
魔族の王イシュルスと、エルファーンの前国王だったラズシエルの父は、双方の跡継ぎの婚約を取り決めていたのです。そこでルークは、エルファーンの新たな女王となったミネルヴァとの婚礼を執り行うため、エルファーンにやってきたのでした。
けっきょく、エルファーンの元老院の意見も集約しなければならないという理由で、ルークとミネルヴァの婚礼の件はいったん保留となります。そんなある日、ラズシエルはルークに誘われて、城下町の散策に出かけます。ところが、ルークが魔族であることが町の人びとにバレてしまいます。ルークは身を挺して、人びとの襲撃からラズシエルを守り、このことがきっかけでラズシエルの心はルークの方へと傾いていきます。
その後、ラズシエルとルークが城の中庭を散策していると、とつぜん何ものかが発砲し、ルークの身に着けていたチョーカーが外れてしまいます。じつはチョーカーには、ルークの強すぎる魔力を制御する機能があり、それが破壊されたことでルークは理性を失ってしまいます。彼はラズシエルへと襲いかかり、彼女の服を引き裂いてしまいますが、そこに騎士のグレン・ハルジオンらが駆けつけ、ルークをラズシエルから引き離します。
じつは、ルーク襲撃を指示したのは、元老院の長であるガナッシュでした。彼は、魔族のルークに対するミネルヴァの処遇に不満を抱いていたのです。さらに、ルークの襲撃を知った魔王イシュルスは、エルファーン王国への襲撃を開始します。ラズシエルのことを愛し始めていたルークは、彼女たちと協力して、魔族の侵攻を食い止めようとします。
イシュルスもまた、かつて一人の人間の女性を愛し、彼女との間にルークを授かることになったのでした。戦いの中でイシュルスは、かつて自分が完遂することのできなかった種族を超えた愛を、息子のルークが実現しようとしていることを認めるようになります。
魔族の襲撃を退けた後、ラズシエルは、毒に身体を蝕まれつつあるルークと身体を重ね、お互いの愛を確かめ合います。
著者の七海ユウリは、「美少女文庫」レーベルなどで男性向けジュブナイルポルノを多く手がけている作家です。そちらの方では、若干ヘタレで軽いSっ気のある男性キャラクターに女性作家の視線を感じてしまって何だか落ち着かない気分にさせられることが多かったのですが、女性向けのティーンズラブ小説では、反対にルークのキャラクター設定が上手く生きているように感じます。