リディア・デイヴィスのレビュー一覧

  • サミュエル・ジョンソンが怒っている

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    ネタバレ

    たった一行にも満たないものから数十ページになるもの、物語というよりは断片としか形容できないものや、特殊な形式のものまで、作者が『短編小説である』と断ずるこの作品集には一見どうやって読めばいいのか戸惑ってしまうような短編が多数収録されている。
    正直自分の知識と感性の未熟さで楽しみきれなかったものもあるけれど、全体としてすごくスリリングで、こちらが読もうとすればするほど冷静で淡々とした文章の奥から物語がとめどなく溢れてくるすごい本だった。
    比較的長めの作品なら、執拗なまでに細かい描写と事実を淡々と書き連ねた文章を追う内に胸が痛くなるほどの激しい感情が湧き上がってくるし、極端に短い作品ならば、そのた

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    2024年12月14日
  • サミュエル・ジョンソンが怒っている

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    一行で終わる小説を含む、ブラックジョークと妄想力に溢れた短篇集。


    小川洋子の『原稿零枚日記』みたいな小説を読みたくて、久しぶりにリディア・デイヴィスを手に取った。『原稿零枚日記』は根暗の奇行と妄想が炸裂して岸本佐知子のエッセイを思わせるのだが、岸本さんの訳業のなかでも特に岸本エッセイに近しい世界観を持っているのがデイヴィス(とニコルソン・ベイカー)じゃないだろうか。
    思惑は見事的中した。特に「甲状腺日記」は気分にぴったりだった!このマシンガントーク。かかりつけの歯科医との変な関係。病気から広がる妄想。物忘れは酷くなるばかりなのに、不謹慎な連想は止まらない。『分解する』を読んだときよりずっと

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    2024年05月19日
  • 話の終わり

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    その女だけがもつ体のパーツの一つひとつが、それが愛する女のものであれば、彼にとってはかけがえのないものになった。持ち主にとってよりも大切なものだった。

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    2024年03月26日
  • ほとんど記憶のない女

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    狐に摘まれたようなとはこの読後感にピッタリの感想だろう。物語があるわけではないが、作品ごとに読者である私が受け取り紡ぐ、あるいは想起される出来事が不思議と湧き起こる。ここまで読者に意図的に委ねられている小説は初めて出会ったと思う。

    特に今の自分に印象深いのは、「肉と夫」の夫への諦観と突き放し、「私たちの優しさ」の夫の矮小さ、甲斐性なさ、「グレン・グルード」の妻の焦燥感、輝かしい過去への憧憬といったところかな。自分の心情や状況にリンクしてしまう。

    読む年代や置かれている状況によって一番刺さる作品は違ってくるに違いない、それほどまでに懐の広い作品群になっている。たった数ページで人間、社会の本質

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    2024年02月13日
  • 話の終わり

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    トゥーサンが好きなら好き、と誰かが書いていたが本当にそう。奇妙で大好き。
    全ての失恋した人に渡したいし、彼女のような目線で世界をみたい。というか、この本を読むと主人公の目線で世界をみている。本のインパクトの強さよ。

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    2023年08月10日
  • ほとんど記憶のない女

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    なんとかっこよく、へんてこで、小気味がよいのか。
    世界の切り取り方、唐突な出だし、とてもいい。
    一番好きなのは、フーコーとエンピツでした。

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    2023年05月21日
  • ほとんど記憶のない女

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    超面白い!
    フランス文学の感覚だろうと思う
    短編集で、好みは分かれるかと?
    歳を重ねるごとに、心に留まるストーリーが変わるような
    そんな面白さ

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    2019年10月29日
  • ほとんど記憶のない女

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    普段、心の奥底に潜んでいる悲しい事忘れてしまったはずの傷ついた出来事いつもはりついているような不安。大人になったら自信を持って生きていけると思ったのに、何処かに子供の頃と変わらない臆病な柔らかい部分をひらりと描いてくれた。その高い知性と明晰な言葉でひらりとすくいあげてくれた。大切な作家、大切な一冊になりました。

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    2013年12月14日
  • ほとんど記憶のない女

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    そっけなかったり、非常に客観的なのだけれど、静かに揺さぶってくる感じ。1ページだけの非常に短いエッセイも多いのだけれど、わたしはそれが特に好きです。

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    2013年06月16日
  • ほとんど記憶のない女

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    リズム、ユーモア、奇妙な感触、イタチゴッコの様な可笑しな文章…。
    ほぉと唸ってクスッと笑って、時折フワリと感覚に訴えかけてくる、
    そんな著書にすっかりヤラレてしまいました。

    『私が興味をもつのは、つねに出来事よりも、
    その裏で人間が何を考え、どう意識が動くか、そのプロセスなのです。
    出来事は、それを見せるための方便でしかない』
    こうキッパリと言い切る著者の他作品に興味津々。
    今後、未訳作品の翻訳予定もありとの事なので、今からワクワクムズムズとしています。

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    2013年03月10日
  • ほとんど記憶のない女

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    ほんの数行、数ページの短編や旅行記のようなものが51編詰まった本。

    リズムがすごく心地よい。アフォリズムも好み。

    小説は、伝わるならばなるべく短いほうが良いと思っているので、すごく気持ちよく読めた。

    ポールオースターと過ごした日々についての短編も入ってます。
    ポールオースターも同じエピソードを作品として残しているらしい。

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    2011年06月21日
  • 分解する

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    ネタバレ

    生活の断片を覗き込んでいるような細かな描写が魅力的だった。知らない人物だけれど、その不安や恐れなどを直に知ることで身近に感じるというか。文章でなければ得られない楽しさがあった。
    特に後半に好きな話が多く「昔、とても愚かな男が」「メイド」「コテージ」「年寄り女の着るもの」が良かった。言葉の流れも美しく、繰り返して目で追いたくなる。泣き喚いたり必死に訴えかけてきたりしない、静かな絶望を一人で受け止めているような描写が好みだった。また他の作品も読みたい。

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    2023年12月04日
  • 話の終わり

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    序盤は慣れない言葉のリズム感を楽しみ、〜中盤までは慣れなさによる酔いと停滞感で気怠く読み進めていたが
    中腹辺りの展開から急に、血肉を持ったような生々しい不規則さで飲み込まれ、そこからは一気に読み上げた。

    視点としては全く変わらない軸があって、章を跨がない限りはシチュエーションが大きく移らないのに
    徹底したディティールの描写によってこんなにも得られる没入感が変わるものかと驚いた。

    その一貫性に嫌悪感を抱く場合もありそうだが、何故そう過ぎるのか理由を探すと
    自分の感覚を、自分のフィルターだけを通して発しているようなその浮世離れ感で。
    それはわがままでも物知らずな訳でもなくて、ただ「ひとりが暮ら

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    2023年09月21日
  • 話の終わり

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    別れた12歳年下の彼から手紙が届き、返事をどうすればよいか考えあぐねてると、小説にしようと思い立った。記憶があいまいで思い出すのも順不同なのように、お話はとりとめもなく順不同に流れていく。

    何も起こらないしどうなってるかよく分からない。でも、わからなくていいんだと思う小説だった。読んでいるうちに私自身も小説の中の彼を求める「私」になった気分だった。彼に会いたいのに、パーティに来て欲しいのに彼の言葉を聞くとめちゃくちゃ怒るという、なんと矛盾した行動とる私。彼の働くガソリンスタンドまで行っちゃう私。当初はお金を返さないダメ男の彼かと思ったけど、そうでもなさそうだと思った。

    はっきり言ってこの小

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    2023年04月04日
  • 話の終わり

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    これは私の話だ、と思った。
    好きな人の髪の色や服、コーンチップとトランプ、安くて苦い紅茶の味。事実を並べているだけなのに、そこからいろんな感情が連想されるところが素敵だった。
    誰かのことを好きになって、愛して、深い悦びを知ったとしても、別れがこんなにも辛いのなら、最初から何もしなければいい、そうやって人と距離を置いて暮らしたら楽なのかなと思った。

    あんなに好きだったのに、一緒にいる時間が耐え難くなる。でも別れたらその姿を求めてやまない。なんでこんなに矛盾していちいち喜んだり倦んだり悲しんだりするんだろう。

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    2023年03月05日
  • ほとんど記憶のない女

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     数行のお話から数十ページのお話まであり、内容も寓話あり紀行文あり何でもありの、とても幅広い一冊。主観的な描写があまりないうえに世界観も抽象的で、どう感想を言えばいいのか分からないほどの掴み所のなさだけど、それだけに引き込まれた。

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    2015年11月29日
  • ほとんど記憶のない女

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    こんな人がいたらこわい…
    でも、いそうだし、私にもその片鱗があるかも…

    するすると情景の浮かぶ、読んでいてたっぷりその世界にいける本。

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    2014年08月21日
  • ほとんど記憶のない女

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    ネタバレ

    ち、ちょっと手に余るって言うか…手に負えません。
    リディア・デイヴィスの頭の中を覗き見ようと、気合いを入れようと、逆に流して読んでみようと、やっぱり理解できないんだから。いや、理解しようなんて考えるほうが間違いだったのかも!センス・オブ・ワンダーの範疇なのかも、ちょっと分からない。でも、分かりづらい世界があるのも、楽しいことなのかも?って思える不思議な短編集でした。

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    2013年09月25日
  • ほとんど記憶のない女

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    いろいろな感情や状況や設定を煮詰めて書いている作品。
    とても短い話(三行のものもある)ばかりだけれど、おもしろい。短い言葉だけれど、的確に伝えてきてくる。

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    2011年09月17日
  • ほとんど記憶のない女

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    確かに禅問答のような、詩のような。不思議な感覚になる。
    今のところ中でも、「大学教師」という話は意外に!うなずけた。

    女がカウボーイと結婚したいと思い込む。ほぼ話はカウボーイと結婚したらという妄想で続く。カウボーイと結婚して暮らしたらきっと馬具に油を塗ったり、素朴な料理を作るのだろう・・・・と。でも女は思う。もしカウボーイと結婚することになったら夫も連れて行こうと。
    たぶんこれが夫婦なんだと思う。お互いが一部になって自分でもあり伴侶でもあり一対にいつしかなっているんだと思う。
    村上春樹的にいえば「100%の女の子に出会う」というのに近いのではないかと強く思った話。

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    2011年06月11日