リディア・デイヴィスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレたった一行にも満たないものから数十ページになるもの、物語というよりは断片としか形容できないものや、特殊な形式のものまで、作者が『短編小説である』と断ずるこの作品集には一見どうやって読めばいいのか戸惑ってしまうような短編が多数収録されている。
正直自分の知識と感性の未熟さで楽しみきれなかったものもあるけれど、全体としてすごくスリリングで、こちらが読もうとすればするほど冷静で淡々とした文章の奥から物語がとめどなく溢れてくるすごい本だった。
比較的長めの作品なら、執拗なまでに細かい描写と事実を淡々と書き連ねた文章を追う内に胸が痛くなるほどの激しい感情が湧き上がってくるし、極端に短い作品ならば、そのた -
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一行で終わる小説を含む、ブラックジョークと妄想力に溢れた短篇集。
小川洋子の『原稿零枚日記』みたいな小説を読みたくて、久しぶりにリディア・デイヴィスを手に取った。『原稿零枚日記』は根暗の奇行と妄想が炸裂して岸本佐知子のエッセイを思わせるのだが、岸本さんの訳業のなかでも特に岸本エッセイに近しい世界観を持っているのがデイヴィス(とニコルソン・ベイカー)じゃないだろうか。
思惑は見事的中した。特に「甲状腺日記」は気分にぴったりだった!このマシンガントーク。かかりつけの歯科医との変な関係。病気から広がる妄想。物忘れは酷くなるばかりなのに、不謹慎な連想は止まらない。『分解する』を読んだときよりずっと -
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狐に摘まれたようなとはこの読後感にピッタリの感想だろう。物語があるわけではないが、作品ごとに読者である私が受け取り紡ぐ、あるいは想起される出来事が不思議と湧き起こる。ここまで読者に意図的に委ねられている小説は初めて出会ったと思う。
特に今の自分に印象深いのは、「肉と夫」の夫への諦観と突き放し、「私たちの優しさ」の夫の矮小さ、甲斐性なさ、「グレン・グルード」の妻の焦燥感、輝かしい過去への憧憬といったところかな。自分の心情や状況にリンクしてしまう。
読む年代や置かれている状況によって一番刺さる作品は違ってくるに違いない、それほどまでに懐の広い作品群になっている。たった数ページで人間、社会の本質 -
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Posted by ブクログ
序盤は慣れない言葉のリズム感を楽しみ、〜中盤までは慣れなさによる酔いと停滞感で気怠く読み進めていたが
中腹辺りの展開から急に、血肉を持ったような生々しい不規則さで飲み込まれ、そこからは一気に読み上げた。
視点としては全く変わらない軸があって、章を跨がない限りはシチュエーションが大きく移らないのに
徹底したディティールの描写によってこんなにも得られる没入感が変わるものかと驚いた。
その一貫性に嫌悪感を抱く場合もありそうだが、何故そう過ぎるのか理由を探すと
自分の感覚を、自分のフィルターだけを通して発しているようなその浮世離れ感で。
それはわがままでも物知らずな訳でもなくて、ただ「ひとりが暮ら -
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別れた12歳年下の彼から手紙が届き、返事をどうすればよいか考えあぐねてると、小説にしようと思い立った。記憶があいまいで思い出すのも順不同なのように、お話はとりとめもなく順不同に流れていく。
何も起こらないしどうなってるかよく分からない。でも、わからなくていいんだと思う小説だった。読んでいるうちに私自身も小説の中の彼を求める「私」になった気分だった。彼に会いたいのに、パーティに来て欲しいのに彼の言葉を聞くとめちゃくちゃ怒るという、なんと矛盾した行動とる私。彼の働くガソリンスタンドまで行っちゃう私。当初はお金を返さないダメ男の彼かと思ったけど、そうでもなさそうだと思った。
はっきり言ってこの小 -
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Posted by ブクログ
確かに禅問答のような、詩のような。不思議な感覚になる。
今のところ中でも、「大学教師」という話は意外に!うなずけた。
女がカウボーイと結婚したいと思い込む。ほぼ話はカウボーイと結婚したらという妄想で続く。カウボーイと結婚して暮らしたらきっと馬具に油を塗ったり、素朴な料理を作るのだろう・・・・と。でも女は思う。もしカウボーイと結婚することになったら夫も連れて行こうと。
たぶんこれが夫婦なんだと思う。お互いが一部になって自分でもあり伴侶でもあり一対にいつしかなっているんだと思う。
村上春樹的にいえば「100%の女の子に出会う」というのに近いのではないかと強く思った話。