猫が見たいろんな話。
奇妙…というよりも不気味寄りの短篇集ですが、ハッピーエンドなので読後感が良悪くないです。
【キノコと3人家族】
小さな家に引っ越して来た3人家族。怪しい大家のおばあさんに教えられ、床下のキノコを食べると毎日毎日家の中では小さなキノコのようになってしまいます。
それでも朝にはちゃんと人間に戻り、しかも以前より元気はつらつになったみたい。
【もちつもたれつの館】
大金持ちの男は、自宅に7つの寝室を作って曜日ごとに違う部屋で眠る。それに目をつけた風来坊たちは、男が使わない曜日の部屋にそれぞれ眠る。
明日の自分も元気に生きられるか不安な大金持ちの男は、大事な招き猫に自分が明日も元気かどうか未来が知りたいと頼む。
今週使う予定の部屋を次々と覗いてみると、自分のパジャマを着た男の後ろ姿が見える。それを自分の未来の姿だと勘違いした大金持ちは、安心してぐっすりと眠れるようになりましたとさ。
【おかあさんのいす】
人の入れ替わりの激しい社宅の1室で、不思議なことが起こるようになった。
どうやらこれは古道具屋で買った椅子の魔法らしい。
調べてみると、椅子の裏には「この椅子にに座っておかあさんが子どもたちに言ったことは、全て本当になる」と書かれていた。
「子どもたちのテストはずっと100点」「お年玉がざっくりもらえて、その半分はお母さんがもらえる」
魔法の期限ギリギリにそんなお願いをしたお母さんと子どもたち。それがほんとに叶ったかというと…
「それがなんと、わからないのさ」猫が次にその家を訪れた時には、既に家族は次の転勤で引っ越してしまっていた。
「ま、そうぞうして楽しもうじゃないか「すっげえ!こんどの転校生、百点しかとらないぜ!」といわれてるきょうだいのすがたなんかをね。え?そうぞうがつかないって?じつはオイラもだよ、ハッハッハ」
【天国か地獄か?】
ねこが気がつくと、ふわふわと霧が立ち込める中で列に並んでいた。前にいたおばあさんの番になると、おばあさんと係の男の人が言い争っている。「天国なんか冗談じゃない!」「あなたのピアノの音色が人を幸せにしていたので、あなたは天国行きです」
そうだ思い出した。自分もおばあさんのピアノを聞いていた。雨から逃れようと誤っておばあさんの家に入ってしまい、ほうきで追いかけられて、二人してベートーベンの石像の下敷きになったのだ。
「ばあさん。いっとくけどな、あんたのピアノで、オイラの心はしあわせになったんだぜ。ほかのれんちゅうだって、きっと同じさ。だからあきらめて、天国に行きな」
結局亡くなる予定だったのは別の人たちで、おばあさんとネコは地上に返される。どういうわけかおばあさんはネコの言っていることがわかるようになっていた。
おばあさんは人(とネコ)の心を幸せにできていたことに喜び、ねこも人をこんなによろこばせることができて嬉しかった。
そしてふたりは、一緒にしあわせに暮らすようになりました。