ノンフィクションだけどミステリのようで面白いと聞いて読んでみたのですが、全然ミステリではないような…むしろ、現実はミステリのようにスパッと解決できないんだなぁ…と思ってしまいました。
2009年、エドウィン・リストは博物館から299点もの鳥の剥製を盗んだ。
エドウィンは毛針作りに魅了され、今では手に入れることがワシントン条約等で禁止されている美しい鳥の羽で作ったヴィクトリア時代の毛針に憧れ、鳥の羽を手に入れるために泥棒をしたのだ。
しかし、信じられないことに、裁判ではアスペルガー症候群という診断のために執行猶予付きの判決が出てエドウィンは一度も収監されなかった。エドウィンの周りの人間は誰一人、エドウィンがアスペルガーだと感じた人はいなかったのに…だ。毛針コミュニティからは追放されたものの、音楽学校の学生だったエドウィンはその後フルート奏者として世界中で演奏を続けている。
警察の捜査がザル過ぎて衝撃。博物館の来館名簿も調べない(下調べのために事前に来館しているだろうと推測できるのに)、鳥の名前でネット検索もしない(そのままの名前でネット販売されていたのに)…等々、イギリス警察の捜査がダメダメ過ぎてめっちゃイライラしました。これ、日本だったら速攻で捕まってたと思うのだが…なんと犯人が捕まったのは事件の507日後。
そもそも、博物館が剥製が盗まれたことに気づいたのが犯行の1ヶ月以上後だったという…。
身勝手な犯人、博物館のずさんな警備体制、無能な警察、信じられないような判決を下す司法…なんか全てが酷いんですよね。
そこに突然乗り込んでいって、失われた剥製を取り戻す手伝いをすると言い出す著者も割と謎なんですが、本業の難民の救済事業での行き詰まりのストレスから逃れるため、失われた鳥たちの捜索に乗り出すのです。そんな理由で…?警察でもないのに…?と思いましたが、調査していく過程で次第に貴重な鳥の剥製が失われたことに憤りを感じて事件を追うようになります。
それにしても、釣り用の毛針が芸術性の高さでそんなに人気があるなんて、全く知らない世界すぎました。そして、その鳥の羽を手に入れるために血眼になる人がこんなにいるのだということも全く知らず…。
鳥の写真と毛針のカラー写真も載っているのですが、どう見ても毛針より生きてる鳥の方が美しい。ファッションのためにこの美しい鳥(の仲間たち)を乱獲し絶滅させた人間の欲望というものが本当に怖いです。人間って改めて恐ろしいほど愚かしいな…と感じました。