関口正司のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ミルが晩年に、功利主義の考え方についてまとめた本です。功利主義は、現代においても誤解や先入観によって批判的に捉えられることが多いですが、当時(1860年代)のイギリスにおいても、同様でした。本書は、想定される批判を潰していくという形式を取っており、当時の風当たりの厳しさを肌で感じ取れます。
ミルはまず、既存の倫理上の2つの学派として、「直覚主義学派」と「帰納主義学派」の2つを取り上げます。直覚主義学派というのは、道徳の原理は明らかにアプリオリ(最初から決まっている)という考え方です。一方の帰納主義学派は、観察と経験から道徳を決定しました。一見真逆の道徳観ですが、道徳は原理から導き出さなければ -
Posted by ブクログ
自然権といった経験を越えた普遍的な原理により何が正しいかを判断すべきでない。個々人の幸福はさまざまで、幸福の優劣を判定する客観的な基準はない。▼行為の正しさはそれが何をもたらすか(帰結)、幸福をもたらすかどうかで判断すべき。幸福は善であり、苦痛は悪。幸福をできるだけ増やし、苦痛はできるだけ減らす。自由はそれ自体に価値があるのではなく、幸福をもたらすなら価値があり、幸福をもたらなさないなら価値はない。▼自然権は特権階級の利益(一部の人々の幸福)を守るためでしかない。社会の幸福は個々人の個別の幸福の総計で見るべきで、これを最大化すべき。「一部の人々」の最大幸福ではなく、「最大多数」の最大幸福を目指
-
Posted by ブクログ
・功利主義を前提とした著書。
・社会的自由:個人がそれぞれの個性を発揮する。そしてその個性の結果の言動によって他者を害することなく、様々な幸福を追求していくこと。だから、他者を害していない(一般的功利を損なっていない)行為の抑制は不当であり、そのラインまでが社会が個人に対して行使できる権力の限界。
・19世紀以降、国民と政府ではなく、個人と個人の間で抑圧が発生するようになってきた(多数者の暴虐)。多数者の暴虐についても対処が必要であり、そのために用いるのが「危害原理」。危害原理とは、社会の自己防衛が目的の自由の規制は正当であるが、他者に害が及ばない範囲で権力の行使は生徒と言う考え方。
・ -
Posted by ブクログ
1863年刊。
有名で、現在はしばしば悪評も高いベンサムのスローガン「最大多数の最大幸福」というアレに代表される「功利主義」の考え方について、あれやこれやと弁明を試みる著作。
私自身、「最大多数の最大幸福」というスローガンは目下大嫌いで、あれを浅はかに理解し利用し、多数者のためなら少数者を虐待しても良い、多数決で決まったら少数意見はことどとく蹂躙して良い、といった暴虐につながりかねないからだ。
ミルがどのようにこれを擁護するかというと、「効用」は人間の獣的な欲望の部分で測るべきはなく、すこぶる知的な・十全に道徳的な心性において最大限に長期的な視野に立って測るべきものだ、とするのだ。