日本SF作家クラブ編のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『ポストコロナのSF』に続く日本SF作家クラブによるアンソロジー。オーウェルの『1984年』の100年後、というお題で書かれた23編。『ポストコロナ』もだいぶ面白かったがよりぶっ飛んだ設定が多くて大変良かった。『1984年』をどこまで意識したりオマージュするかもそれぞれで、想像力を解放してくれればどちらでもいいんだけど、それでもやっぱり『R___R___』の二重思考をあれだけ表現した筆致は凄すぎてニヤけた。あとは短編だからこそではあるんだけど『男性撤廃』は長編にするか『女性撤廃』との二本立てで楽しんでみたくなった。
事実が小説より奇なりなんて、ぶっ飛ばせ。 -
ネタバレ
・「小説よりも奇妙な現実なんて、誰も求めてないよ!」
・「僕は今幸せなんです。現実ってそんないいものですか?この世界で歌っていてはいけませんか?
誰にも迷惑かけてません。一人でいるだけなのに」
「現実だって、それほどいいものじゃない。だがなあんたがそうやって現実から逃げているあいだも、
現実を支えるために必死で戦ってるやつらがいる。誰にも迷惑をかけてないと言うが、
あんたの幸せは、彼らの犠牲で成り立ってる」
・効率優先、生産性第一の社会、即ち若いことが価値だとされる社会では、
人間的な豊かさや幸せは二の次になりがちだ。
・人類が到達した「無眠社会」。それは人が起きたまま睡眠できるようになり -
Posted by ブクログ
「1984年」のオマージュとして企画された23人の作家によるSFアンソロジー。ディストピア小説のオマージュだからか、暗いというかなんというか。
2084年という未来を描いた物語であるのに、未来は無限で輝かしい、みたいなキラキラした物語はないように思いました。拡大する世界、進歩する科学、それらの速度に追いつけない個人の精神世界。その乖離を埋めるための科学が、さらに隙間を広げてゆく、かのような。
知らないうちに、世界と社会とのずれが生まれていて、小さいものが無視できないほどの存在感を持ち出してしまって、押しつぶされそうになってしまった、という恐怖がある。そんな読後感です。
自分と他人、自分以外のも -
Posted by ブクログ
様々な方向の作品が読めて良い。特に気に入ったのは、斜線堂有紀「BTTF葬送」。未来の話なのに大変ノスタルジックな筆致で描かれるのが新鮮。遠い未来の主人公と現代の読み手との感情のシンクロさせるような仕組みが素晴らしい。竹田人造「見守りカメラ is watching you」もよい。リズミカルにユーモラスに描かれるが、その実、近い将来の問題を描き出してて、笑いながら読んで、読み終えてどきっとする。十三否塔「至聖所」も、オーソドックスではあるが、だからこそ未来のお話なのに足のついた物語としてのギミックがよい。春暮康一「混沌を掻き回す」も、テラフォーミングという大掛かりな装置を巡る世界の動向を、確かに
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Posted by ブクログ
ネタバレおそろしき
こともなき世を
おそろしく。
1984年生まれの身からすると『1Q84』が刊行されたあたりで一度生まれ年についてめんどくさいなぁ、という気分になったことがあると思うのだけれど、逆に1984年生まれなのに1Q84読んでないの? って云われたくって本当は読んでいるのに読んでいないことにしているわたしのようなひとは沢山居るんじゃないかと思っています。いやわたし本当に読んでないですけどね?
さてさて、フーコーが、トリュフォーが、長谷川一夫がこの世を去り、じゃぁ誰が生まれたかというとまぁあんまりぱっとしないわけなんだけれど、日本で公開された映画が、と云えば結構粒ぞろいで、とはい -
Posted by ブクログ
日本SF作家クラブによるアンソロジー。前作「ポストコロナのSF」の執筆陣がリアルタイム・オールスターみたいな陣容だったのに比べると、ニューフェイス寄りの人選。他にも、逢坂冬馬氏がSFを書くことを、恥ずかしながら迂生はここで始めて知った。そのせいか、作品の傾向もバラバラ、出来の方も玉石混交とまでは言わないが、かなりばらつきがある。SFの濃度(?)も、普段SFを読まない読者に配慮したような作から、尖りすぎて、ほとんど何が書いてあるのかさえ、理解できないようなのまである。とりあえずは、この幅の広さを楽しんで、趣味があった作を愛でればいいと思う。個人的に気に入ったのは「至聖所」、「移動遊園地の幽霊たち