伏見瞬のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
全体を読み終え、非常に興味深かった。ポップカルチャーを論じる書籍を初めて読んだこともあり、ややとっつき難く感じる部分や、気恥ずかしく感じる部分もあった(例えば個々の楽曲の歌詞について個別に論じていく箇所)が、特に唱歌や童謡との相似からスピッツの楽曲の特質を論じる第5章や、いわゆる「王道」の立場として見られていることを意識しつつ、それを拒み続けている(と思われる)スピッツの主体性を論じている第6章は、説得力がありつつ独創的な見解も含んでいるように感じられ、非常に面白く読めた(『遠吠えシャッフル』の「美しすぎるクニ」については、リリース当時、自分もよく同じようなことを考えていたなぁと共感した)。
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Posted by ブクログ
スピッツ愛にあふれた批評。「分裂」をキーワードにスピッツの作品を読み解く。
分裂とは、
陽/陰、希求/絶望、陶酔/虚無、非凡/平凡、現在/非現在…といったキーワードで表現される。
そんな分裂の強度が群を抜くというスピッツは公的(大量生産的)に広く好かれ、私的に強烈に愛される希有なアーティストだ。
描かれる「僕」は、君とも社会とも宇宙とも結べない存在(p38)。いまから思えば驚くほどに90年代的だ。おどろくほどに90年代的だ。どこにも行けない感じ。希望しつつ絶望する感じ。死の匂い。
<愛のことば>の分析にとても力が入っている。穏やかさと悲しさ、浮遊感と緊張感の同居、喪失と換気に引き裂かれ -
Posted by ブクログ
読売新聞の書評に興味を覚えて読んでみた本ですが、読み応えがあってよかったです。著者の伏見瞬さん、なかなかの分析力とそれをテキストにする筆力の持ち主。
スピッツ推しなファンなわけでもないので、知らない曲に関する論説はちょっと退屈してしまった部分もありますが、メジャーな曲をもとにしたスピッツに対する勝手な印象と、本書で論じられる内容はとても説得力がある、というか納得できるものであり、なるほどなあ~、という感じ。
初期のスピッツが(ネットがまだ普及していない)90年代の「コミュニケーション不全症候群」な時代に生まれた、という件がとても印象的。ネット社会な今、その空気はずっと続いている、というか深