志水速雄のレビュー一覧

  • 人間の条件
    アーレントの軽快な文章構成のおかげでスラスラ読み進められるが、一つの言葉に対して特有の意味をもたせる彼女のスタイルに慣れるまでが大変。

    本著で考察される労働、仕事、活動という三つの題目が西洋の歴史のなかで、どのようにして各時代を渡ってきたのか、その経緯をアーレントは入念に考察する。
    古代ギリシャを...続きを読む
  • 人間の条件
    私的領域よりも公的領域に、そして労働や仕事よりも活動に、人間としての善き生を思い描くアーレントの議論は、ポリス的な生き方(公的領域で人々が交わる)を理想化しすぎでは?という不満はある。

    でも、読むといろんな疑問がわいてきて、つまりそれだけいろんな閃きの可能性に満ちていて、興奮ずくめの読書だった。と...続きを読む
  • 人間の条件
    買ってから2年くらい熟成させてから、一気に読んだ(読めた)。久しぶりに読み応えがある本だった。

    アレントは労働の意味が大きく変わった現代における人間の条件や自由のあり方について論考しているわけだが、このまま2020年代も当てはまる話であるなあと感じた。
  • 人間の条件
    本当に読み応えのある深い本でした。本書は20世紀の哲学者ハンナ・アレントの代表作の一つで1950年代に書かれました。訳者の志水氏も最後に述べているように、どちらかと言えば難解な本ですが、アレントの言葉の定義がわかってくると徐々にスラスラと読めるようになってきます。志水氏が最後に本書の概要をとてもわか...続きを読む
  • 人間の条件
    おもしろすぎる!!!!いま自分たちの生きる「社会」への嫌悪の正体がかなり明瞭に示される。均一化や消費主義ときいてポジティブな印象を受けるひとは稀だろうが、そのことが生命過程との同化といった点から語られる。そこにはなによりも労働の優位がある。しかし本書がそのような啓蒙をめざしたものではないとはいえあえ...続きを読む
  • 人間の条件
    おそらく半分くらいしか理解できていないだろうが、「出生が人間事象への唯一の希望」という表現は心に残っている。
  • 人間の条件
    人間の条件
    (和書)2012年01月17日 19:52
    1994 筑摩書房 ハンナ アレント, Hannah Arendt, 志水 速雄


    最近ハンナ・アレントさんの影響を非常に受けている。

    去年、地震があった頃、大杉栄さんの本を読んでいた。そのあたりが奇遇ではあったが、政治哲学というものを自分...続きを読む
  • 人間の条件
    長かったし、半分も理解できたのか分からないのだが、「何かの始まり」であるような気がする。つまり、数十年後に読み返したとき、「これは自分の思索の出発点だった」と振り返るような予感である。
  • 人間の条件
    3回目のチャレンジにしてようやく読み終わった…!

    これ一冊に物凄い量の教養が詰まってることだけはわかった、人に説明せよと言われてもできないけど。

    しかし、善意は大っぴらにやってはすでに善意ではないとか、物は使われなければ意味がないとか、自分なりに共感する部分は多々あった。
  • 人間の条件
    読み直したさ:★★★
    労働・仕事・活動。世界性。多数性。マルクス。第六章にて「最大多数の最大幸福」についての指摘あり(その点に関して、功利主義の失敗などにも他箇所で言及あり)。
    〈感想〉
    たしかに、しかし、〜だからである、と分かりやすく文章が続くので読みやすい。最初のうちは諸概念の理解に苦労したが、...続きを読む
  • 人間の条件
    アーレントのいう「人間の条件」とはつまり、生命それ自体=生命を維持しなければならないということ、世界性=耐久性をもった人工的環境がなければならないということ、多数性=一人一人違った人間が共生しているということ、の3つである。
    そして人間はこの3つの条件に基づき、消費物を生産する「労働」、耐久財を製作...続きを読む
  • 人間の条件
    10年程前に精読し、書き込みなどでかなり痛んでしまったので、今回新たに買い直して再読しました。
    私は長年「なぜこんなに辛いのに死んではならないのか?」「なにを心の中心に置けば安心できるのか?」「私はなにのために生きれば良いのか?」といった問いに苦しまされ、若い頃から哲学や宗教などの思想を学んできまし...続きを読む
  • 人間の条件
    読み終わるのに3ヶ月ぐらいかかった。
    本書の内容は殊更に述べる必要もないだろう。人間の活動力を労働、仕事、活動(言論など人々の間で行われるもの)に分け、今日は人々が種々の利害に囚われず活動する公的領域がなく、労働だけが支配し、人々が政治に参加せず(=活動せず)ただ生産と消費に終始する虚しい社会になっ...続きを読む
  • 人間の条件
    内容にも納得やし、自分の経験と結びつけて考えられる話も多い。人の前に現れないとと思う。なるほどな、の段階にはいけたので、その上での意見は?
  • 人間の条件
    全体主義の問題に向き合った政治哲学の書籍である。
    本書はジャン・ジャック・ルソーについて、国家の抑圧に対する反抗ではなく、「人間の魂をねじまげる社会の耐え難い力にたいする反抗や、それまで特別の保護を必要としなかった人間の内奥の地帯にたいする社会の侵入にたいする反抗」を評価する(61頁)。この視点は集...続きを読む
  • 人間の条件
    公的領域。活動。言論活動で政治生活。差異をもった他者との対話。集会での発言。言葉で説得。各個人の経済利益の調整ではなく、共通の利益や関心について話し合う。自分がだれであるかを示す開かれた場。多様な意見をもつ人々が自発的に政治に関わる。政治に自ら積極的に参加し、公共的な役割に身を投じ、戦争のときには国...続きを読む
  • 人間の条件
    人間の条件すなわち労働と仕事と活動を分析し考察することで近代社会における思想的体系の再構築を図る。

    ハンナ・カレント氏自身、ナチス政権下で祖国ドイツそしてパリを追われ国家の庇護を得ぬ脆弱な基盤を背景に、思想と行動をより強固により具現にすべく社会運動家と思想家として彼女の熱量を感じる。
  • 人間の条件
    (01)
    一義的には労働批判であり,特に近代の人間の条件として現れた労働についての批判である.しかし,射程は宇宙的であり,地球規模をも超えており.個と全体との間にある様相を世界として,活動と仕事という人間の他の条件により,労働に並置して,批判を企てている.
    古代ギリシア(*02)の市民文化を説き起こ...続きを読む
  • 人間の条件
    アーレントの『人間の条件』をおもむろに手にとって読んでいた。「人間の条件は、自然にも人工物にも条件づけられた存在である」というテーゼ。特に、人工物に条件づけられる存在であることがポイント。

    人工物を生産するのは、工業化の中での生産や、科学的実験における人工的状況の生産。

    近代科学の始まりとともに...続きを読む
  • 人間の条件
     人間の活動を分析した本。生命を維持するための労働。物による人の世界をつくり出すための製作。人と人のつながりをつくり出す活動。今まで一度たりとも考えたことがなかった視点から人間が分析されていた。
     差別や貧困、政治的腐敗、終わらない戦争等々なんと人類は愚かなのだろうと絶望していたが、この本を読むとそ...続きを読む