ユーディット・シャランスキーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
棄ててしまった物、失われた物は二度と取り戻すことができない。世の中にはそういう物があるのに、処分しようとする「断捨離」という考え方には真っ向から反対する。その対極にいて、物を棄てられない質の自分にとって、この本の序文は心に響いた。
本書は、12点の「永遠に失われた物」を取り上げている。ただし、その「物」についての解説は最初の一葉程度で、口絵も無く、ただ各章の間の黒いページに墨色で図版があるのみ。それについて知りたければ、Wikipediaなりで調べる必要がある。つまり、本書はそのような「失われた物」についての博物図鑑では無い。
代わりに、もう存在しない物に思いを馳せた、散文詩であったり、紀行文 -
Posted by ブクログ
地図から消えた島、絶滅した生きもの、散佚した古代の詩、燃やされた聖典……。歴史上たしかに存在していながら今は消えてしまった、あるいは存在しないことが明らかになってしまったゆえに忘れ去られてしまった物たちに捧げる、黒と金のレクイエム。
墓石、それともモノリスのような佇まいのハードカバーを開くと、各章ごとが濃い藍色のページで区切られ、そこに鈍金色で刷られた章のモチーフがうっすらと浮かびあがる。それは今はない島が載った海図だったり、一角獣の骨格だったり、廃墟と化した貴族の屋敷の在りし日の姿だったりする。
ドイツでブックデザインの賞を獲ったというのが納得の、一目で惹かれる存在感。中身はまた私好みの -
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Posted by ブクログ
文章と装丁によって創り上げた「本」という空間、その著者の
ヴィンダーカマー(博物陳列室)に収められた十二の物語。
・はじめに ・緒言
・ツアナキ島・・・失われた島への夢想と島を求める冒険家たち。
・カスピトラ・・・古代ローマのコロッセオ。死せる運命にも
本能を露わにする、絶滅したトラの生き様。
・ゲーリケの一角獣・・・山岳地帯で執筆する数日間のエッセイ。
・サケッティ邸・・・廃墟画家たちと描いた廃墟の運命。
・青衣の少年・・・グレタ・ガルボの漂っているような散歩での独白。
映画「青衣の少年」は「吸血鬼ノスフェラトゥ」の監督の
ムルナウの第一作目。失われた映画にガルボ -
Posted by ブクログ
2021年NHKラジオドイツ語講座のテキストでドイツ文学を毎月一冊紹介していた中から。
失われた物を展示する博物館に陳列された物の背後あるストーリーを、著者の想像を膨らませて書いたエピソード。読み始めて、文章が長い。説明が冗長。教養書読んでるみたい。飲み込みのに頭のしわ使う。しんどいな〜と思いつつ、読み続けると、口語調のストーリー(でも説明くどいけど)もあり、あ、この著者、こんな現代調の話も書けるんだ、と気づく。
失われた物にスポットを当てるアイデアと、本の装飾という著者の作家以外の職業を掛け合わせた作品は、読み物としてのみならず、ハードの本の芸術も鑑賞。失われた物という事で、黒地に薄い絵が -
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