ユーディット・シャランスキーのレビュー一覧

  • 失われたいくつかの物の目録

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    目録となっているが、12篇の短篇集のようでもある。
    今はない物への偏愛、憧憬と幻視による物へのオマージュ。論文調だったり、小説のようだったり、日記のようなものまであって一つ一つが面白い。
    カスピトラがローマの見世物になったりフリードリヒのグライスヴァルト港の絵がリク川の源泉を辿る旅仕立てになったりして想像の行くところがいい。
    そして何より本としての佇まい、章ごとの仕切りの美しさ、ため息が出ました。

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    2023年03月17日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    『ユリイカ』のハン・ガンのインタビューで「今読んでいる本」として挙げられていたもの。章ごとに差しこまれる黒い表紙には、光の加減でその章のテーマとなる「失われた物」のビジュアルが浮かび上がる。「失われた物」と続く物語の関連性が自分には上手く見出せずしたがい物語に入っていけず、眠くなることもしばしば。しかし「グライフスヴァルト港」の章は…… 良かった…… あの章だけ何度も読み返したいくらい。植物や野鳥に精通した目があれば、「自然豊か」のひと言で片付けられそうな光景も、あれほど精緻で優しい描きかたができるのだ。

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    2025年01月25日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    棄ててしまった物、失われた物は二度と取り戻すことができない。世の中にはそういう物があるのに、処分しようとする「断捨離」という考え方には真っ向から反対する。その対極にいて、物を棄てられない質の自分にとって、この本の序文は心に響いた。
    本書は、12点の「永遠に失われた物」を取り上げている。ただし、その「物」についての解説は最初の一葉程度で、口絵も無く、ただ各章の間の黒いページに墨色で図版があるのみ。それについて知りたければ、Wikipediaなりで調べる必要がある。つまり、本書はそのような「失われた物」についての博物図鑑では無い。
    代わりに、もう存在しない物に思いを馳せた、散文詩であったり、紀行文

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    2025年01月16日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    地図から消えた島、絶滅した生きもの、散佚した古代の詩、燃やされた聖典……。歴史上たしかに存在していながら今は消えてしまった、あるいは存在しないことが明らかになってしまったゆえに忘れ去られてしまった物たちに捧げる、黒と金のレクイエム。


    墓石、それともモノリスのような佇まいのハードカバーを開くと、各章ごとが濃い藍色のページで区切られ、そこに鈍金色で刷られた章のモチーフがうっすらと浮かびあがる。それは今はない島が載った海図だったり、一角獣の骨格だったり、廃墟と化した貴族の屋敷の在りし日の姿だったりする。
    ドイツでブックデザインの賞を獲ったというのが納得の、一目で惹かれる存在感。中身はまた私好みの

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    2020年12月31日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    読者を選ぶ本。博物学や、内容紹介で挙げられているモチーフに惹かれた人には面白いかもしれない。でも文体も話ごとにバラバラでどうしても苦手な文体もあったし、基本的に教養が高い人じゃないと単語がいちいちわからず調べたりするはめになる。きりがないのでわからないまま読み飛ばしたりしたけれど、本当は全部わかっていないと話の奥深さが理解できないんだろうなあ、と思う。わかるものについては、知的好奇心を刺激されてすごく面白かった。著者の博学と美意識の高さに感嘆した。

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    2020年09月04日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    文章と装丁によって創り上げた「本」という空間、その著者の
    ヴィンダーカマー(博物陳列室)に収められた十二の物語。
    ・はじめに  ・緒言
    ・ツアナキ島・・・失われた島への夢想と島を求める冒険家たち。
    ・カスピトラ・・・古代ローマのコロッセオ。死せる運命にも
           本能を露わにする、絶滅したトラの生き様。
    ・ゲーリケの一角獣・・・山岳地帯で執筆する数日間のエッセイ。
    ・サケッティ邸・・・廃墟画家たちと描いた廃墟の運命。
    ・青衣の少年・・・グレタ・ガルボの漂っているような散歩での独白。
       映画「青衣の少年」は「吸血鬼ノスフェラトゥ」の監督の
       ムルナウの第一作目。失われた映画にガルボ

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    2020年07月27日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    2021年NHKラジオドイツ語講座のテキストでドイツ文学を毎月一冊紹介していた中から。

    失われた物を展示する博物館に陳列された物の背後あるストーリーを、著者の想像を膨らませて書いたエピソード。読み始めて、文章が長い。説明が冗長。教養書読んでるみたい。飲み込みのに頭のしわ使う。しんどいな〜と思いつつ、読み続けると、口語調のストーリー(でも説明くどいけど)もあり、あ、この著者、こんな現代調の話も書けるんだ、と気づく。
    失われた物にスポットを当てるアイデアと、本の装飾という著者の作家以外の職業を掛け合わせた作品は、読み物としてのみならず、ハードの本の芸術も鑑賞。失われた物という事で、黒地に薄い絵が

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    2025年06月19日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    題名で読むことを決めたので、どういう内容かは全く把握しないまま読み始めた。
    失われてしまったもの12個に関する話を短編小説のような形で書いたもので、翻訳ということもあって正直読み進めにくかった。
    お気に入りは、森の百科事典と共和国宮殿。

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    2024年03月10日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    緒言を読むのから、結構な気力・知力を要求される。

    地図と、辞書またはスマホを側に置きながら読み進めないと、文字だけが頭を流れて、イメージが浮かばず、世界が形作られない。

    様々な文体、対象について描かれていて、この本の読書を通じて、この本に慣れることはなく、常に挑むような感覚。
    一読だけでは内容を掴みきれない。時間を置いて、もう一度読み、咀嚼したくなる。

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    2021年06月28日