岩尾俊兵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『世界は経営でできている』の著者、岩尾俊兵氏による、
最新かつ渾身の書き下ろし。
あまりに熱がこもっていて、
「全体主義的になってしまうのでは?」
と少し懸念してしまうほど。
しかし、内容をしっかり読めばわかるが、
あくまでも思考道具として、人間の脳と身体を使って価値創造をしていくための簡便で分かりやすい方法を提示しているだけであり、
特定の思想や主義を読者に強要するものではないことが読み取れる。
変な言い方をすれば、どんな人でもその人自身のために活用できるツールであるから、
どんな思想や信条の持ち主でも同じように役立てていくことができる。
ただし唯一、「同じ人類として共存する気持ち」がまったく無いような思想の人にとっては
ナンセンスかつ無意味な内容になっている。
多少なりとも協力しながら物事を成していく気持ちのある人なら、
たとえ相反する思想の持ち主でも同じように活用できる簡便な思考道具を提供しているところは
特筆すべき点ではないかと思う。
著者の言う「経営学」の定義が、
どれくらい一般的なものなのか浅学な私にはわからないが、
少なくとも著者が提示する3つの方法、
・未来創造の円形
・問題解決の三角形
・七転八起の四角形
は、どれも私自身の例で実際に試してみたら
とても簡単に、脳のエネルギーをあまり消耗せずに具体的な決断や解決策、視点の切り替えが出来た。
ちょうど、コミュニケーションにおける「記号言葉」に似ている、と感じた。
会社の事務所で電話を受け取った時の
「いつもお世話になっております」
などが記号言葉の代表例だが、
特に気の利いた挨拶を考えなくても会話を始めることができるため、脳のエネルギーの消耗を節約するのに貢献している。
同様に、著者の岩尾氏が提唱する3つの思考道具は、
内省したり、解決策を考えたり、視点を切り替えたりする必要がある時に、
決まった方法と手順で描き(書き)進めるだけで
自動的に建設的な方向に思考が進んでいくようになっている。
数学で言うところの方程式のようなものだから、
事例や場面を選ばず、
また個人レベルから組織における意思決定レベルまで、
幅広く活用できる。
とてもシンプルで、
素晴らしい提唱をされていると思いました。
かなり思い切った主張をされているので、
各業界から多くの反発を招くことが予想されますが、おそらく、この著者の性格からして既に想定済みなのだろうと感じました。
まずは私も、この3つの思考道具を、
これからの日々の中で活用してみようと思います。
発見や不備など、気付いたことがあれば、
その際は改めて追記いたします。 -
Posted by ブクログ
現状分析に関しては共感できるところが多い。
例えば、テーマの骨子であるコンセプト化の弱さについては、他のジャンルにおいても類似の指摘を見ることができる。IT産業においては、各社のプロセスが独自的でシステムの方をそれに合わせることが産業化してしまい、標準化をすることで各社のプロセスの方を効率化し、システムの方をグローバルに売り込むということができなくなっていることが指摘されていたし、コンテンツ産業においては日本では職人性のある天才がもてはやされる一方で、ハリウッドではそういった人たちを分析し、教育パッケージとして確立することで、ベターなコンテンツ大量に生み出して産業として勝つことができているということが指摘されていることを想起させられた。
本書では、また、日本の経営技術を信じる力で負けていると言う指摘があるが、これについてもNHK 100分de名著ナショナリズムの回で触れられていた、敗戦とバブル以降の停滞を経て、日本人は自分たちに自信を持つと言うことをできなくなってしまっているのではないかという指摘を思い出した。
本書は啓蒙の色が強く、この課題について具体的にどうする?と言う話は、そこまで語られていないが筆者の言うように日本が自信を取り戻し、経営の世界においてもリードできる存在になって行けたらいいと思う。 -
Posted by ブクログ
おそらく、こうした「経営学」系の著書に対する
カタいイメージ
の先入観を払拭するために、
わざと、くだけた語り口調を使っている
のだろう。
個人的には、そもそも内容自体がシンプルかつ革新的、挑戦的なので、
口調は平坦でも良かったように思った。
「人生は経営だ」
という観点をベースに、
貧乏、家庭、恋愛、勉強、虚栄、心労、就活、仕事、憤怒、健康、孤独、老後、芸術、科学、歴史という、
日常的に起こるさまざまな出来事や話題について、
「経営」というアプローチで対応していくことの意義を
具体例を挙げながら示していく内容。
すべての人に、「人生は経営だ」という観点から
間違った経営をしないように呼びかける一冊。
なかなか先進的な発想だと感じるので、
ここに書かれている「経営」の定義が、今の社会的常識と符合するものか、私にはわからない。
たとえ符合しなかったとしても、著者は
「今の社会的常識になっている経営概念がそもそも間違っている」
と言いそうだ。
私個人としては、具体的で示唆に富んだ内容が多く、
荒削りながらも幅広い内容について「経営」の観点から紐解き指摘していく著者の大胆な呼びかけは、
「既存の膠着した社会に一石を投じる」
という点も含めて、
この本が街中の書店で平積みにされていること自体に大きな意義を感じた。
日ごろ、当たり前のことだと思って見過ごしていた多くのことに気付かされ、
自分の人生を自分で舵取りすることを後押ししてくれる、
全編を通して厳しくも温かみのある内容だった。 -
Posted by ブクログ
「経営」の意味を改めて確認しながら解釈を広げていくエッセイ。
全体に皮肉の効いたユーモアがてんこ盛りで、クスクスニヤニヤしながら読んでいたら、終盤で一気にギアが変わって熱いメッセージに心を打たれた。
最後まで読んでから、冒頭に戻ると、著者がなぜこの本を記したのか、私なりに腑に落ちた。
「何かを有限だと思う気持ちは常にそれを失う恐怖と隣り合わせだ。
金銭も、時間も、関係性も、勉強法も、問題解決も『人生において価値あるものはすべて誰かがすでに作ったもので、有限にしか存在しない』という既成概念に取り付かれると、限りあるものを守るための短期的で局所的な思考/志向に支配されるのである。」
という言葉が胸に響く。
そして同時に、この気持ちに囚われないでいられることの難しさも強く感じる。
だからこそ、本来の「経営」の概念である、
「価値創造(=他者と自分を同時に幸せにすること)という究極の目的に向かい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げる対立を解消して、豊かな共同体を創り上げること」
に立ち返って、信じ続ける精神力が必要なのだな、と思う。
ふだん、「経営」の2文字が出てくるだけでちょっと身構えてしまう人にこそ、おすすめしたい一冊でした。 -
Posted by ブクログ
『世界は経営でできている』と言う本から続いて価値を有限ではなく無限なものとして考え、価値を創造して分け合う社会の重要性を述べています。
主題として全く正しい事を述べられていますし、私もそう思っています。
方法論的な考え方もあり分かりやすい内容だったと思いますが、大事なポイントで2点ほど、現状ではかなり難しい、もしくはもはや無理なのでは?と感じる点がありました。
一つめは金の倫理と人の倫理の歩み寄りと言っている点です。
みんな苦しいと言われるとそうなのかも知れませんが、労働者の側からすれば資本家と経営者の両方からの歩み寄りが得られなければ、単により搾取されるだけですし、まずこの点がサラリと流して良い点ではないと思いました。
二つめは、ユダヤ教的な選民思想と日本の和の心の対比がありましたが、私はそこは真逆ではないかなと考えています。
ユダヤ教ではユダヤ教徒のコミュニティに対する忠誠を教えにしていて、ユダヤ教に最低限の敬意を払う人への敬意も教えにしていると思います。
反対に日本でも昔は村や会社という利害関係だけかもしれませんが、人が忠誠を誓うコミュニティがありましたが、今ではそう言うものも無く、むしろムラ社会や会社は自分のためのお金を稼ぐために仕方なく心ここに在らずの状態で所属しているだけのように思います。
日本にはキリスト教的なあなたの隣人を愛せよと言うような教えもなく、個人がバラバラになり、そうでなくても利害関係のない友人やサークルの方が大事と言われ、相手の本当の顔も知らないSNAなどに夢中になる人々ばかりになりました。
個人の学びや経験や知恵をシェアしても、それがもはやビジネスと言う利害関係の中に拡がっていかない状態にまでなってしまっていると考えると、日本は和の心で大丈夫とは言えないのではと思いました。 -
Posted by ブクログ
経営を「価値創造という究極の目的に向かい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げるさまざまな対立を解消して、豊かな共同体を創り上げること」と定義し、世の中のあらゆる事象が経営でできていると説いている本。
経営が価値創造と言う目的思考に基づいているという点で、目的と手段が入れ替わることが身の回りで多々あるという論調であり、目的思考を経営言い換えたとという印象を受けた。
ただ、最後に述べられていた、本来人間に創造できない価値は無いというのが経営の根本層にあると言う着眼点と、現代が限りあるものを奪い合う価値有限思考に陥っているという指摘は面白いと感じた。