外川さんには『顔ニモマケズ』という著書もあるので、そちらと違うのか、同じような内容をYA向けに書いただけなのか、と思いながら読んだが、随分違う。
前半は当事者の体験が書かれていて、ここは『顔ニモマケズ』と似ているが、当事者は顔を出していない。体験も『顔ニモマケズ』と比べればソフトで、子どもにも読みやすい。
この本がとても良かったのは、後半。外見に悩みを持つ人は意外に多いとはいえ、やはりそれ以外の人が圧倒的に多いわけで、当事者の人にどんなふるまいをしたらいいのか、当事者はどんなことに傷付いたのかが具体的に書いてあることは、とてもありがたい。
今問題なくても、事故や怪我で自分や親しい人が当事者になる可能性はもちろんあるし、今近くにいなくても、偶然出会うこともある。
教師や医療従事者となって出会うこともあるかもしれないし、将来生まれる自分の子どもがそうかもしれない。
それに見た目に関係なくいじめ(パワハラ、モラハラ含む)の問題はいつも認識しておきたい。
親が、ずっと子どものことを心配しても、結婚や就職をしたとたん、その問題が「終わった」と思ってしまうとか、あるあるだと思う。本人にとっては終わりじゃないのに。職場でいじめを受けることもあるし、子どもが生まれれば、子どもの友達やその親からどう思われるか(自分の見た目のせいで子どもがいじめられないか)が気になる。
子どもの運動会や卒業式などに、行きたいけど一度も行っていないという人もいて、胸が痛い。
だから、この本が必要。
私たち一人一人が普通に対応できれば、当事者の人たちが、そんなことを考えたり行動したりせずに済むじゃないか。
クラスで外見をいじられても「自分はこんな顔をしているのだから、ひどいことを言われても仕方がない。仲良くしてもらうために必要なコミュニケーションだ」(P181)と思っていたが、担任がひどいことを言った子どもをちゃんと叱って、そのあと何度も世の中のさまざまな困難を抱える人のことを折に触れ取り上げてくれたことで、随分楽になったというような話も載っていて、教育者にも是非読んでほしい。
残念ながら、医師や教育者でもこんなひどいことを言うんだという例も載っている。
教え子や患者の心を傷付けようと思ってやったわけではないだろうが、だからこそこの本を読んで考えておいてほしい。