塩谷舞のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ブックファースト新宿店開店16周年記念「名著百選2024」で、まなもんがお薦めしていた本です。
美術館で一人静かに絵画を鑑賞しているかのような感覚で読み終えたエッセイでした。
暮らしとArtの話、不妊治療の話、海外での生活、夫婦生活の話など日常の些細なことや、著者がどう感じてどうしていったのか丁寧かつ美しい日本語で描写されており、千早茜作品を読んでいる時のように読み終えました。
強烈に心に残ったのはp.139からの不妊治療の話です。
色んな意見があっていいし、何が正解ということもないけれど、妊婦さんへのリスペクトや気遣いってホントに必要なものだなぁと感じました。
あと、Artについての話も色々出てきますが個人的にはp.181の生真面目なビーバーの話がシンプルに面白くて好きでした。
素早く読み進めるのではなく、ゆっくりじっくり味わって欲しい本だと思いました。
レビューするには言語化が難しく、良さが全然伝わってないと思うけどとても良い本です。ぜひ読んでほしい一冊。
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Posted by ブクログ
まだ見ぬここじゃない世界への憧れ。
以前いた、ここじゃない世界で起こった
良き思い出。
それらが胸を支配して、今この場所から
逃げたくなる。
しかしこの世界もここじゃない世界も
どちらにも意味がある。
そのことに気づけるか、
ちがいを本当に理解できるか。
その違いを理解しようとする中で、
自分も変化していく。
それぞれ違う世界があることを
街、夫婦、友人関係、政治などを通じて
見つ直すことができた。
「大都市を離れて」の章の、世界のどこに行ったってに続く言葉が心に残る。
筆者と同じく夜の時間を楽しむ者として、
これからも静かな時間にゆっくり読みたいと
思う本。
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Posted by ブクログ
大学2年生になって忙しさと焦りから毎日いっぱいいっぱいな日々。
家に帰れば疲労感に襲われて本を読む気力すらないけど、現実逃避したくて久々に手にとってみたのがこのエッセイ。タイトルの「ここじゃない世界に行きたかった」という言葉がすっと心に沁み込んできた。
夜型のわたしには、同じく夜型らしい塩谷さんの描く文章がとても心地よかった。
自分と重なる部分、自分とは違う視点からの考え方、彼女の紡ぐ想いや言葉に触れて今自分に見えてる世界がいかに一部であるか知れたような気がする。
色んな考え方を持った人がいるこの世界で、その全てを理解して肯定することはできなくても、やみくもに否定することなく、そっと「こんな考え方もあるんだな」と受け入れられる器を持っていたい。それから理解できないことを理解できる成熟さも。
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私たちは「ここじゃない世界に行きたい」といまいる場所から離れてしまいたくもなるけれど、その遠い場所では結局、別の現実の中で人々が懸命に生きている。
けれども「努力が実を結ぶのは自分の実力」という考えそのものが、自分がマジョリティ側だからこその特権でもあったのだ。それを知るだけの想像力は、持ち合わせていなかった。
世界が鮮やかであることを忘れないために、自分とは色の異なる友人を大切にしたい。いま見えている色だけではなく、できれば育った環境も含めて。
良いことでは飯が食えない、だなんてつまらない一般論には、さっさと終止符を打たなきゃいけないのだ。
もっとも、警鐘のサイレンが鳴り続ける中で、夢から醒めないでいるほうがむずかしい。 -
Posted by ブクログ
塩谷舞さんと、その著作である本作の単行本版を知ったのがいつで、何がきっかけか、もはや思い出せない。
ただ、これは読まないといけない、もったいないという印象だけがずっとあった。
文庫になって、それからも時間が経って、ようやく手に取り、読んだ。
なんというか、もっと刺激を与えんとする内容かと思っていた。心の中に溜め込んだモヤモヤが引っ張り出されるというか。
しかし、実際には違った。
人生の歩み方は、自分と対比されるほど大胆に見えるのに、その道筋や分かれ道での葛藤は重なるものがあって、なんというか、慰められるというか、受け止めてもらえているというか、とにかく弱さゆえの優しさがじわじわと伝わってくるようだった。
でも、自分自身は「ここじゃない世界に行きたい」と思ってないんだ、ということも思い知った。
それなのに共感できるのはなんだろう。
多分、「ここじゃない世界に行きたい」のではなく、「これじゃない自分になりたい」という思いはあって、そこに響くものがあるのかもしれない。
こんな文章が書ければいいのに。
懲りずにそう思うあたり、やはり「これじゃない自分になりたい」のだろう。 -
Posted by ブクログ
結論、この本を読んでよかったと思った。
テレビや、ニュースでの報道や
自分の知ってる情報で
これと言ったら〇〇なイメージという
ものが出来上がると思うが、
それは自分の知ってる情報が
いかに不足してるのか
断片的なイメージなのかを
自分だけで俯瞰してみることは
なかなか難しい。
私はこの本を読むまで
知らないことが多くて、
自分の悩みは小さなものだなと
感じることもできた。
同時にこんなにもナチュラルで
変な思想の偏りないリアルが、
著者の温度感と共に書き綴ってあるので
そこがまた人間味あって心地よかった。
寒い日や季節よりも、
暖かくなってきた季節に
ゆっくりのんびり読んだらよさそう。
平和ボケしそうな気持ちを
少しシャキッとさせてくれそうな本。 -
Posted by ブクログ
30代半ば、フルタイムで勤める仕事は忙しく、子どもが生まれてさらに生活のタスクが増え、日々が慌しく過ぎるようになった。
合理的なものを好む夫と建てた家は全館空調で快適そのもの、AIスピーカーにお掃除ロボット、食洗機、ドラム式洗濯乾燥機など便利な家電がある我が家で、私は科学技術の恩恵を多分に受けている。便利なものは生活水準を上げてくれる。
それでも、たまに思うのだ。
家の中で外気の寒さの影響を受けたピリッとした寒い朝の空気を吸う。
洗いたての服の洗剤の匂いを嗅ぎながら洗濯物を干す。
自分の手で床を拭いて磨き上げる。
手を乾燥させながらお皿を洗って立てかける。
朝、起きてカーテンを開ける。
そういう不便さはあれど、五感を使って感じる生活が遠のいていくことへの寂しさを。
効率化された家の中で失われた、ささやかな野暮ったくも愛おしい生活の気配を。
本著を読んでいて、普段は忘れていた、そんな私の中の小さな違和感、寂しさを思い出していた。
そしてそんな小さな、ともすれば日々の生活にかき消されてしまいそうな私の中の〝小さな声〟に耳を傾ける時間や余裕を忘れないようにしたいな、と思う。
過去に「人生フルーツ」というドキュメンタリー映画を観て生活が便利であることと、豊かであることは違うのだと私は知った。
便利な生活は尊いしありがたい。
それでもそこからこぼれ落ちる何か、には時々思いを馳せられる自分でありたいと思う。
そんなことを改めて思った、素敵なエッセイだった。