內田百閒のレビュー一覧

  • 蓬莱島余談 台湾・客船紀行集

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    ネタバレ

    内田百閒が日本郵船の顧問だった時に横浜、神戸、下関等を船で行き来した際の随筆を編集したもの。前半は台湾の製糖会社重役の知人を訪ねて9日間訪台した紀行文。当時の日本人の台湾に対する見方が素直に読み取れる。後半では郵船が誇る豪華客船の一等船室やレストランの様子もよくわかる。旅客機が一般化する前、客船黄金期の旅に同行しちるかのような不思議な感覚を得た。「郵船秩父丸」という随筆が特に洒脱で笑った。船旅は良いなと思った。

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    2023年09月30日
  • 追懐の筆 百鬼園追悼文集

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    冥途や東京日記などの不思議な小説で好きになり、鉄道と借金の愉快なエッセイで笑って、そして漱石先生臨終記でぼろぼろに泣いて、この人は天才だと思った。
    そんな百閒先生の追悼文集、偏屈な著者写真からは想像できないくらい情に溢れた文章ばかりで、胸がいっぱいになった。
    宮城さんの演奏や写真を見ることですら「だめになってしまふ」だったのに、どんな日々と感情を経て、あそこまで詳細な事故の様子を書いたんだろう。

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    2023年02月28日
  • 追懐の筆 百鬼園追悼文集

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    小川洋子さんのラジオで紹介。百閒先生の誠実さと愛情深さが伺える。夏目漱石、芥川龍之介、田山花袋、寺田寅彦、飼猫のクルツまで。中でも親友宮城道雄の追悼は胸を打つ。訃報を受けたあとは欠伸の数を勘定した。死神の迎えを受けて目をさましたと始まる「東海道刈谷駅」は圧巻。芥川の自殺について「余り暑いので死んでしまったと考え、またそれでいいのだと思った」と語っているのが哀しい。

    (検校(けんぎょう)は、中世・近世日本の盲官(盲人の役職)の最高位の名称)

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    2021年07月29日
  • 追懐の筆 百鬼園追悼文集

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    「なぜ死んだ。馬鹿」
    自らの落ち度で命を落とした訳ではない故人に手向ける言葉ではない。しかしその言葉を吐かずにはいられないほど動揺し、悲しんだ百閒先生の故人への深い愛を感じる言葉でもある。
    その他にも百閒先生らしい追悼文が並ぶが、中でも親しい間柄であった宮城道雄氏を悼む文章は、百閒先生の痛みが伝わって来て切ない。

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    2025年01月14日
  • 蓬莱島余談 台湾・客船紀行集

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    『阿呆列車』の百閒先生が、日本郵船の嘱託職員としての乗船三昧の日々を綴ったエッセイ集。

    乗車体験を綴らせたら当代随一だったが、その力は乗船体験においても劣ることなく発揮されている。
    文人として畏まったところが一切なく、あくまで一人の人間として、そして失礼ながら決して立派ではなくどちらかというとスノッブ的な生き方をしている人間が感じることを一切装飾なく等身大に語る。
    今でも作者の等身大の目線で綴られるエッセイやら漫画はごまんとある。
    それでも、
    ・大した下調べも裏取りもせずに、自分にあてはめて適当に推測する虚脱感
    ・虚脱の中でもリアリティを感じさせる場面を切り取るジャーナリズム
    ・時折はっとさ

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    2024年03月02日
  • 蓬莱島余談 台湾・客船紀行集

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    台湾は良かった、もう一度行きたくて夢に見るとまで書いている。
    途中で持病が出て苦しかったはずだが・・・招待してくれた、お砂糖会社の重役さんへの気遣いか。

    船で台湾の基隆(キールン)に着き、そこから鉄道で、明治精糖のある蕃仔田(ばんしでん)駅に着くのだが、特に用事もないのに、終点まで乗ってみて、海を見て折り返してくる鉄オタ百閒先生である。

    日本郵船の嘱託を務めていた関係か、何度も船旅をしている。
    横浜、神戸間が多い。
    豪華客船の旅である。
    食事代は船賃の中に含まれているので、ご馳走を食べ放題なのだが、麦酒をお腹に入れたい百閒先生は、そのためにお腹を空けておく。(アルコールは有料らしい)

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    2023年09月29日
  • 追懐の筆 百鬼園追悼文集

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    Ⅰ章は百間(と仮におく)のオフィシャルな部分。それよりⅡ・Ⅲ章のプライベートな付き合いの方に惹かれた。

    宮城道雄との親交は初めて知った。鉄道を愛した百間だが、刈谷を通過する時は哀惜の念に耐えなかったであろう。

    又、同窓生や教え子への追悼は若くして黄泉路に旅立った人々に対する、残された者からの寂寥の感を感じた。

    ※蛇足だが、森まゆみ氏の解説はピントがずれている、或いはそもそもの人選ミスか。この文集はⅡ・Ⅲ章が要諦であるのに(少なくとも自分はそう思う)、森氏は解説のほとんどを氏の専門であるⅠ章に費やし、「こんな風に書いているときりがない」とⅡ・Ⅲ章をほぼ触れない。挙げ句、「日本の植民地主義に

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    2021年04月01日
  • 追懐の筆 百鬼園追悼文集

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     副題のとおり、百閒の追悼に関する文章をまとめて一冊としたもの。
     師、漱石についての文から始まる。岡山の中学校時代、満州に漱石が旅行するとの記事を見て、汽車に乗車している姿を一目見ようと駅に出かけた話から、初めて会いに病院に訪問したときのこと、また金を貸してもらうよう依頼に旅先の湯河原まで行った話が綴られつつ、臨終の時の様子が描かれる。全体を通して、漱石への畏敬の念が窺われる。
     友人であった芥川との思い出、投稿していた博文館「文章世界」の選者であった花袋との快気祝いでの邂逅、その他漱石山房先輩格の三重吉や、海軍機関学校同僚だった豊島与志雄との思い出が語られる。

     しかし、本書の圧巻はやは

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    2021年03月29日
  • 蓬莱島余談 台湾・客船紀行集

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    日本郵船の嘱託時代に同社の客船で台湾旅行をした際の寄港文集。
    相変わらず百閒先生は無邪気だが、台湾への渡航も含めて無邪気でいられた時代の記録として読めるかもしれない。

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    2025年01月14日
  • 蓬莱島余談 台湾・客船紀行集

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    編集付記にあるとおり、本書は著者の台湾紀行と日本郵船時代の船旅にまつわるエッセイを独自に編集し一冊とした文庫オリジナル作品である。太平洋戦争開戦前夜の客船周遊記は、出際に神戸で首尾よく麦酒が飲めるかどうかという話で始まる。結滞の発作をかかえたままの約9日間の台湾紀行には、観光名所的な紹介はあまりないが、時代と土地の空気がしっかりと感じられる。
    「だから内証だが、台湾はいい所だと思った。非常にいい風が吹く。」

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    2022年06月03日
  • 蓬莱島余談 台湾・客船紀行集

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    百閒が台湾を旅したときの紀行文かと思いきや、ほとんど台湾は出てこない(笑)。台湾が恋しいときは別の本を読むとして、この本では百閒節を味わえばいいと思う。

    旅行が特に好きじゃない百閒は、目的地に着いても下船しないし、頭の中は常に麦酒(ビール)のことでいっぱい。だから話は船内での同行人やボイ(ボーイ)とのやりとりが大半を占めている。

    大きい船をつくって他国を圧倒し、領土を広げることが正義だった時代の船の様子や、接客の作法などが興味深い。

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    2022年04月04日
  • 蓬莱島余談 台湾・客船紀行集

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    客船の体験を述べた随筆が中心ですが「台湾紀行」「国内のクルージング」「日本郵船の客船を使って行われた文士達の船上座談会」ーーという話が収録されてます。
    日本郵船の嘱託員として働いていた時期が時期だけに、太平洋戦争開戦前の気配を感じつつ、でも飄々とクルージングと豪華な食事と麦酒を堪能してる百閒先生の筆致は素敵です。
    たまに、その飄々としている描写の中で一瞬、怪異と繋がったかのようにゾッとする表現がしれっと混ざるのもまた味わい深い……。

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    2022年03月17日
  • 蓬莱島余談 台湾・客船紀行集

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    一冊まるごと台湾への船旅の話かと思ったら、意外とその分量は少なく、あとは国内での船旅の様子だった。当時の日本の雰囲気が伝わってきたし、百閒さんの飄々と悠々として率直で人を食った感じの、他人とは一味違う行動が面白かった。船旅がしてみたくなった。

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    2022年03月07日
  • 蓬莱島余談 台湾・客船紀行集

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    随筆一つ一つは当然百間らしさは出ているのだか、通して読むと内容が重複する部分が多く、編集部が台湾つながりと旅客つながりの随筆を手当たり次第にまとめた、という感じが否めない。

    他の方が書かれているが、台湾には一度十日間程行っただけだし、旅客も日本郵船の顧問であった割には乗船回数は多くはない。百間は飛行機にも縁があるわけだし、鉄道以外の乗り物紀行集、とより間口を広げれば良かったのに、と感じた。

    喜久屋書店阿倍野店にて購入。

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    2022年02月17日