內田百閒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『阿呆列車』の百閒先生が、日本郵船の嘱託職員としての乗船三昧の日々を綴ったエッセイ集。
乗車体験を綴らせたら当代随一だったが、その力は乗船体験においても劣ることなく発揮されている。
文人として畏まったところが一切なく、あくまで一人の人間として、そして失礼ながら決して立派ではなくどちらかというとスノッブ的な生き方をしている人間が感じることを一切装飾なく等身大に語る。
今でも作者の等身大の目線で綴られるエッセイやら漫画はごまんとある。
それでも、
・大した下調べも裏取りもせずに、自分にあてはめて適当に推測する虚脱感
・虚脱の中でもリアリティを感じさせる場面を切り取るジャーナリズム
・時折はっとさ -
Posted by ブクログ
台湾は良かった、もう一度行きたくて夢に見るとまで書いている。
途中で持病が出て苦しかったはずだが・・・招待してくれた、お砂糖会社の重役さんへの気遣いか。
船で台湾の基隆(キールン)に着き、そこから鉄道で、明治精糖のある蕃仔田(ばんしでん)駅に着くのだが、特に用事もないのに、終点まで乗ってみて、海を見て折り返してくる鉄オタ百閒先生である。
日本郵船の嘱託を務めていた関係か、何度も船旅をしている。
横浜、神戸間が多い。
豪華客船の旅である。
食事代は船賃の中に含まれているので、ご馳走を食べ放題なのだが、麦酒をお腹に入れたい百閒先生は、そのためにお腹を空けておく。(アルコールは有料らしい)
船 -
Posted by ブクログ
Ⅰ章は百間(と仮におく)のオフィシャルな部分。それよりⅡ・Ⅲ章のプライベートな付き合いの方に惹かれた。
宮城道雄との親交は初めて知った。鉄道を愛した百間だが、刈谷を通過する時は哀惜の念に耐えなかったであろう。
又、同窓生や教え子への追悼は若くして黄泉路に旅立った人々に対する、残された者からの寂寥の感を感じた。
※蛇足だが、森まゆみ氏の解説はピントがずれている、或いはそもそもの人選ミスか。この文集はⅡ・Ⅲ章が要諦であるのに(少なくとも自分はそう思う)、森氏は解説のほとんどを氏の専門であるⅠ章に費やし、「こんな風に書いているときりがない」とⅡ・Ⅲ章をほぼ触れない。挙げ句、「日本の植民地主義に -
Posted by ブクログ
副題のとおり、百閒の追悼に関する文章をまとめて一冊としたもの。
師、漱石についての文から始まる。岡山の中学校時代、満州に漱石が旅行するとの記事を見て、汽車に乗車している姿を一目見ようと駅に出かけた話から、初めて会いに病院に訪問したときのこと、また金を貸してもらうよう依頼に旅先の湯河原まで行った話が綴られつつ、臨終の時の様子が描かれる。全体を通して、漱石への畏敬の念が窺われる。
友人であった芥川との思い出、投稿していた博文館「文章世界」の選者であった花袋との快気祝いでの邂逅、その他漱石山房先輩格の三重吉や、海軍機関学校同僚だった豊島与志雄との思い出が語られる。
しかし、本書の圧巻はやは