将基面貴巳のレビュー一覧
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「最も警戒しなくてはならないのは公権力である政府」という一文は、今の時代に特に重要なメッセージだと思った。日本では政府の政策に対して、心の中や内輪の会話で不平は言っても、結局は「国が決めたことだから仕方がないよね」と抗議行動をする前に諦めてしまっている人が多いと思う。そしてさらに悪いのは、政治に無関心であること。これでは怒るきっかけもないまま、権力者のやりたい放題になってしまう。
まずは知ることから。そして流されるのではなく、能動的に選択をすること。自分の意思を表明すること。政府は必ずしも国民の自由や幸せのために動きはしないということに改めて気付かされた。 -
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一気に読めるくらい読みやすく、面白く、しかも頭の中を整理できる。
私個人は「わきまえない女」なので、上にも人事にもずいぶん睨まれてるけど、勲章ぐらいにしか思ってない。そういう人間が組織には必要だから。ただ、なぜそうすることに意味があるのかを、筋道立てて子どもにわかるように説明するのは難しいなぁと思っていた。この本は、ちょうどそのニーズにはまった。
取り上げられている映画や小説、ドラマも(「必殺仕事人」とか。菅江きんさんが好きで見てた。懐かしい。)面白そうで興味を惹かれる。
直接の内容からは逸れるけれど、『日の名残り』の説明は「そうかー、そういう話だったかー」と納得。というくらい、自分が読みこな -
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よい本だった。
政治を、権威に従うか否かの判断の場面と射程を広くとることで、若い世代に政治に関心をもってもらう意図がある。これって自由論の反面ともいえる。
本書では、国や法律などの権威すら誤りうる、他者が決めたことに従うのでないとしたら、何に従うかと問いを立てたうえで、神、良心、共通善の候補を出し、共通善によって判断すべきという論旨になる。
この論旨は、愛国心を風土に対するものではなく、築き上げてきた制度(民主主義等)に対する誇りとすることを勧めるのと相似しており、『愛国の教科書』の姉妹本という位置付けもよくわかる。
また、日本文化における従順さへの偏りも指摘されていて興味深い。『論語』におけ -
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ネタバレ日本でいう「先生の言うことをよく聞きなさい」は「指示に従う」ことで「先生への服従」を意味するが、アメリカでは「先生によく質問しなさい」と言われ、「学習内容の理解」を促される。
一つの事実を解釈し、その解釈が感情的反応として表れる。言い換えれば、解釈に必要な価値判断基準こそが怒りなどの感情を左右する。日本人があまり怒らないのは、関心がなく、「どうでもよいこと」だから。
誰一人として自分の確たる意見を持たず、「ただ一緒にいるだけ」で、一人一人が他人の挙動ばかり目をやる集団は簡単に雲散霧消してしまう。これが大勢迎合主義の本質である。 -
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本書を語る上で欠かせない思い出がある。
学生時代、グリーン・デイというロックバンドのライブ映像を見ていた時のこと。「マイノリティ」という曲の間奏中、ボーカルのビリーが次のようなメッセージを観客に投げかけた。
「これだけは覚えておけ。支配者がどんな力でねじ伏せてきても、所詮ヤツらはオレたちに選ばれたんだ。オレたちには力がある。オレたちがリーダーなんだ。何から何まで命令してくるようなヤツらに、お前らの人生を明け渡すなよ!」(拙訳…)
グループ自体、元々政治にちなんだ曲を書いていたが、あのライブでの明言には衝撃が走った。と同時に涙がポロポロこぼれてきて、感情が大渋滞になったのをよく覚えている。
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面白かった。
従順でいることのデメリットや社会的影響を説きつつ、本題は政治に興味を持ち参加しよう、という話だった。
たしかに、大人しくしておけば面倒なことにならずに場が収まるのに…とか、黙って従ってればいいのに…とか、悪いことが起こっても見て見ぬふりをすることはよくある。小さいことなら仕事でモヤモヤしつつ発言しないとかがある。そうすると望まない方向に決まってしまうし、発言しなかった自分が悪いと思う。
本書では、何に従うのかという文脈で、神の声、自分の良心、共通善という3つをあげているが、結局神は人間が作り出したものであるし、自分の良心はその時々の時代によっても考え方が異なると思うから、本当に -
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反逆罪というのは、思えば面白い罪である。
なにせ、反逆罪を成立させるには、罪人は「何に」対して反逆をおこなったかが示されなければならない。
反逆を受け、それを罰する権威体制がなければ反逆罪は成立しないのだ。
そして、民主主義が主流となった現代において反逆罪を言い渡されるということはまずないだろう。
一方、罪刑ではない形で課せられる反逆者の立場もある。
いわゆる「非国民」的振る舞いということだ。
これからジャックアタリが予言するところの大紛争の時代となり、ナショナリズムの対立は激化するだろう。そのなかで、反逆罪研究は日の目を浴びるかもしれない。 -
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国外生活から日本を見たときに、あまりに従順な国民性に危惧を覚えたとしたら宜なるかな。若い読者に向けて、長いものに巻かれることなく「信念」「良心」「共通善」に照らして自分の頭で考え行動するよう促すのは大事なことだと思う。本書の評価の高さから窺える、このような論に触れたりこのような考え方を持つことに思い至ってこなかった日本人の多さに寧ろ驚くが、信念を持つこと、良心に照らすことに慣れていない者に、ときに権力に逆らうこともやむなし、と説くことには些か危惧を覚える。個人が抵抗を覚えるのはわかりやすい暴政だけではない。様々なシーンで立ちはだかる種々の慣習やルールに覚える反感の根拠とする「信念」や「良心」は