エイモアトールズのレビュー一覧
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なんと言おう。今年最高の読書体験。ベスト1。
軽くネタバレですが、ロシア版ゴージャス『ショーシャンクの空に』。何度笑い泣きしたことか。金箔を効果的に使った装丁も大好き。
ロシア革命により生涯を豪華ホテルの屋根裏部屋に軟禁されることになった伯爵が、死を考えながら幾度も生きる意味を見つけ、人と絆を結んでいく。
もともとホテルが舞台の話は好物なので、舞台となっているモスクワ・メトロポールという実在する超一流の宿の、細かく書き込まれた舞台裏も、プロに徹するスタッフの仕事ぶりと人柄も、すべてが極上の味として刻まれました。
抜き書きしておきたいセリフ、場面、考察がたかさんあるけど、「自らの境遇の奴隷となっ -
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1922年ロシア革命後に軟禁刑になったロストフ伯爵。ロシアの高級ホテルの屋根裏部屋で過ごすことになりホテルから一歩でも外に出れば銃殺刑に。ホテル内の閉ざされたなかでも伯爵は背筋を伸ばし紳士として周りを思いやりながら生活する。ホテルスタッフたちとの交流、友情、少女との出会い。そこからの鮮やかな日々。軟禁という生活のなかでも心持ちでかわる日常の色。ユーモアを忘れず人との時間を大切にし自分にできること、やらなければいけないことを見つけそれをまた人に返していく。狭い世界に閉じ込められても出会った人、見つけたもの、その全てが愛おしく思えるようなとても素敵な物語。
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舞台は1922年のモスクワ。
革命政府に無期限の軟禁刑を下された伯爵アレクサンドル・イリイチ・ロストフ。
メトロポールホテルのスイートに住んでいたが、
これからはその屋根裏で暮らさねばならない。
ホテルを一歩出れば銃殺刑が待っている。
そんな境地に陥った伯爵の32年にも及ぶ軟禁の物語。
同作者エイモア・トールズの前作『賢者たちの街』と時代設定は同時期だが、
今作の方が個人的にはかなり好みでもあり、胸に刺さるものがあった。
コロナ禍というものを体験した現代の我々も、
ある種この軟禁というものに関しては共感を抱けるであろう。
だが、我々と大きく違うのは伯爵は残りの人生全てなのである。
想像した -
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1954年、アメリカ。
18歳のエメットは更生施設を出所し、弟が待つネブラスカの自宅に戻って来たが、そこには施設から逃げ出したダチェスとウーリーもいた。
エメットと弟は、母が暮らしているはずのカリフォルニアに行き、心機一転、新しい生活を始めるはずだった。だが、ダチェスとウーリーに愛車のスチュードベーカーを奪われ、仕方なく二人の後を追ってニューヨークに行くことに。
ダチェスは、上流階級出身のウーリーの一族がニューヨーク州北部に所有する屋敷の金庫の金をみんなで山分けすると豪語していたのだ。
孤児院のシスター、胡散臭い牧師、妻と別れた善良な黒人男性、売れないシェイクスピア俳優、憧れの作家――道中、エ -
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1922年、革命後のロシア(ソ連)。新政府によって王族や貴族が次々処刑されるなか、パリから祖国に戻り、そのまま残ることを決めたアレクサンドル・ロストフ伯爵。過去に発表した一篇の詩のおかげで死を免れた伯爵だが、それからはモスクワの中心地にある高級ホテルから一歩もでられない軟禁生活を送ることに。滞在していたスイートから狭い屋根裏へ移され、客から従業員へいつしか立場を変えながら、ホテルが全世界であるかのように味わい尽くそうとした男の半生記。
トム・ハンクス主演のスピルバーグ映画みたいな小説。装幀から漂うウェルメイド感は読者を裏切らず、古き良き時代の上品な世界に連れていってくれる。
ロストフはソ連 -
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ネタバレ前に読んだ『モスクワの伯爵』と同じ作者。『賢者たちの街』の方がデビュー作だけど、自分はデビュー作の方が好きかも。
装丁といい、主人公が上流社会にお邪魔するところが『グレート・ギャツビー』ぽいと思ったけど、それみたく作中モヤモヤすることはほぼなかった気がする。
ヒロインは周りの玉の輿を狙うDreamy Girlsとは一線を画した自立系女子。『モスクワの伯爵』の伯爵同様、どんな相手の言葉も知的にかわし、スマッシュもばっちり決める。上流社会を垣間見る時も(驚いただろうけどそれを顔にも文章にも出さず)読書家の彼女らしい豊かな表現で、冷然と観察している。
友達に一人は欲しいタイプ。自立系女子は今でも -
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ロシア文学や、彼の国を舞台にした話に関しては物々しくて殺伐とした印象があった。(イラストもさることながらライトグリーン・ゴールド・モノトーンのコンビネーションが完璧な表紙とそれにマッチした上品な花切れに一目惚れしたのが動機…)
それに対して本書はお貴族様が主人公なので、彼の人柄や彼を取り巻く世界が実に紳士的でエレガント!長ったらしい小話や馴染みのない彼らの近代史、凝ったモノの例え・言い回しのせいで何度も立ち止まらなきゃいけなかったけど、少なくとも読んでいてイラつくことはなかった。
のらりくらりと(絶対に真似できないような)受け応えをし、時には自分から首を突っ込んだりして難題をかわしていくさ -
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1966年、NYの近代美術館(MoMA)で開催された古い隠し撮りの写真展(実際にあったものらしい)で懐かしい人物が写っているところからスタートする。始まりからお洒落。
主人公ケイト・コンテントは大恐慌(1929年)のとき16歳となっているから、1913年生まれということになる。
1937年から39年の間に、才能に恵まれて野心に満ちたロシア移民の二十代女性がハイ・ソサエティーに入り込んで、さまざまな人達と交流していくさまを描いたもの。
先に読んだ「モスクワの伯爵」の作家の第一作らしい。
二つの作品ともに、普通の人間は垣間見ることない、優雅な上流階級を描いていて、まるで映画の世界の中に引き込まれる -
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『モスクワの伯爵』で、とんでもない逸材を引き当てたと思ったエイモア・トールズの、これが長編デビュー作。一九二〇年代から一九五〇年代のロシアを舞台にしたのが『モスクワの伯爵』なら、これは一九三七年のアメリカ、ニューヨークが舞台。まるでタイムマシンに乗ってその地を訪れているかのような、ノスタルジックな世界にどっぷり浸れるのがエイモア・トールズの描き出す作品世界。デビュー作とは思えない完成度の高さに驚かされる。
一九六六年十月四日の夜、中年の後半に差しかかっていた「わたし」はニューヨーク近代美術館で開かれた写真展のオープニング・パーティに出席した。黒のタキシードと色とりどりのドレスがシャンパンで酔 -
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ロシア革命によりモスクワの高級ホテルに軟禁されることになったロストフ伯爵。スイートルームから屋根裏部屋へ移され、ホテルから一歩も出ることができなくなる。だが、伯爵はそれまで通りホテルでの生活を紳士として続ける。ホテルの従業員たちと親しくし、貴族としての身のこなし方や知識からレストランで重宝され、泊まり客の女優の危機を救ったことからベッドを共にすることになり…。
軟禁されているとはいえ、ユーモアとセンスと知識で伯爵らしい生活を続けているのだが、あることから女の子の養育を任される。伯爵の生活に、女の子の父親としての生活が加わる。
あり得ない設定なのに、伯爵のセンスにどんどんひかれていく。思わずク