革命を経て、帝国から共産国へ変わったロシア(ソ連)。貴族だからという理由での銃殺刑を免れ、モスクワの名門ホテルに生涯軟禁されることなった元伯爵の物語。
宝塚に、「神々の土地」という芝居の演目がある。おそらくいま最もヅカファンから支持されている座付き作家上田久美子さんの作品で、30年以上宝塚ファンの私
...続きを読むがもしかしたら一番好きかもしれない演目である。帝政崩壊・革命のきっかけともなったラスプーチン暗殺の実行者として知られる、時の皇帝ニコライ二世の従弟 ドミトリー・パヴロヴィチ・ロマノフが主人公のモデルになっている、美しく重厚な作品だ。ストーリーが登場人物を動かすのではなく、登場人物がストーリーを作っている感じがとても好きだ。
それが頭にある状態で読み始めたのだけれど、この小説は全然「神々の土地」とは違った。悲壮感はごく薄く、どちらかというと軽やかでユーモアに溢れた物語だった。
元伯爵も彼と関わりあう登場人物たちもとても魅力的で、温かく、ロシア人に対して私が抱いていたイメージ(というより偏見…)が変わった。
「ここで終わってしまうの?」という幕切れだったけれど、この後の展開を自分なりに想像するのも楽しい。この小説「以後」の伯爵の人生について、きっと人それぞれ想像することが違うんだろうな…