笹井宏之のレビュー一覧
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特にすきなうた5つ、わたしの解釈と想像
p18.葉桜を愛でゆく母がほんのりと少女を生きるひとときがある
母だと思っていた母が、わたしの知らないわたしの生まれる前の、母が母ではなかった時の表情をふとみせたとき、知ったときのおどろきとはがゆさ
p19.蜂蜜のうごきの鈍ささへ冬のよろこびとして眺めてをりぬ
はちみつがとろとろしないようになることで冬の寒さと季節の移り変わりに気づく。なにげない日常を取りこぼさない繊細さ
p72.ひろゆき、と平仮名めきて呼ぶときの祖母の瞳のいつくしき黒
ひらがなはなぜかかわいくてやさしい。名前を呼ぶ祖母のやさしい声色と、そのときの美しく強くやさしい瞳の -
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この歌集は、ブク友のまことがコメントですすめてくれて読んだ。
2009年に二十六歳で亡くなった歌人、笹井宏之のベスト歌集が文庫化されたもの。未発表だったエッセイや詩、俳句も掲載されている。人間のみならず、風とかテレビなどの無機物に対しても優しいまなざしを向けている感じがして好きな作品ばかりだった。本は気づくと付箋だらけである。
いくつか、特に印象に残った短歌を紹介したい。
「スライスチーズ、スライスチーズになる前の話をぼくにきかせておくれ」
つぼみより(きみがふたたびくるときは、七分咲きにはなっていたいな)
廃品になってはじめて本当の空を映せるのだね、テレビは
ひろゆき、と平仮名め -
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永遠解く力?永遠と口から?タイトルへの違和感から始まる。
フィクションが短歌になるとノンフィクションめく感覚が楽しい。
生活で使わない言葉が出てきて、新鮮でハッとする。
言葉に色、重さ、強さ、香りがあることを教えてくれる。
優しい刺激が心地いい。
日々鈍感に生きる我々を突き刺すように、筆者の鋭い感性が流れ込んでくる。
ー『この星に消灯時間がおとずれるときも手を繋いでいましょうね』
ー『ひきがねをひけば小さな花束が飛び出すような明日をください』
ー『つぎつぎと星の名前を言いあてるたそがれの国境警備隊』
どこかホッとする、絵本の一ページのような詩が特に好きでした。
懐かしさと温かさであ -
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ネタバレ2025年64冊目
★★★★☆
#えーえんとくちから #笹井宏之
過去の #Chapters 本。
初めて短歌集に触れました。
初めはサラっと読もうと思ってたけど、一句一句噛み締めて読みたくなったので思ってたよりじっくり読んだ。
笹井さんのお父さんが書かれているあとがきを読んで、さらに深まる句が多かった。
難病を抱えて、寝たきりの生活を送っていた笹井さんが、世界との繋がりを感じるための手段が短歌だったというのが伝わってくる。
くすりとできるものから、みんな人生観を感じるものまで気に入るものに出会えるんじゃないかなーと思いました。 -
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以前、Eテレの「理想的本箱」で紹介されていた
笹井宏之氏の『えーえんとくちから』を再読。
「えーえんとくちからえーえんとくちから
えいえんとくちからをください」
初めて聞いた、呪文のような言葉。
何言ってるの?と、
テレビの画面の方に振り返る。
えーえんとくちからえーえんとくちから‥
本当に呪文みたい。
そしてその謎の言葉が、解説によって
漢字変換され、"永遠解く力"だと、
ようやく分かる。
「えーえんとくちからえーえんとくちから
永遠解く力をください」
26歳という若さで生涯を閉じた、歌人
笹井宏之氏のベスト歌集の文庫本。
「はなびら」と点字をなぞる
ああ、これ -
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笹井さんの当時の状況を知ったことでよりそれぞれの歌に情景が浮かんでくるようで、切なさを感じつつもやさしい語り口に心を落ち着かせられる。好きと思う歌についてここが好きとか語りたい気持ちと、自分の平凡な言葉で表したくない気持ちがせめぎあう。せっかくやさしい言葉に触れたので、難しいことは考えずに好きな歌を残しておくことにする。
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手のひらのはんぶんほどを貝にしてあなたの胸へあてる。潮騒
この星に消灯時間がおとずれるときも手を繋いでいましょうね
切れやすい糸でむすんでおきましょう いつかくるさようならのために
ばらばらですきなものばかりありすぎてああいっそぜんぶのみこんでしまいたい