乙川優三郎のレビュー一覧

  • ロゴスの市

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     大学時代に英語を学び、ロゴスの世界にのめり込んでいった男女、主人公の男は翻訳家になり、ヒロインの女は同時通訳家になった。彼らは大学生の頃から、お互いに対し恋心を抱いていたが、2人ともそのことを打ち明けることはなかった。それぞれの仕事が順調に躍進する一方、会う時間も減り、お互いの人生がすれ違い始める。しかし、心の中にはいつも存在していた。
     翻訳家と通訳家の仕事の喜びと苦悩を知ることができ、この本に表現された美しい言葉の旋律を読んで小説家の言葉の尊さを感じた。
     言葉が深く、美しい文章も何度も噛みしめるように読み返した。
     最後の衝撃の結末は涙腺を崩壊させた。
     最後に第三者から手紙で語られる

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    2025年02月05日
  • ロゴスの市

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    タイトルと素敵な表紙に誘われました。
    知らなかった言葉、メモしたくなるような表現にワクワクしました。
    読後、悠子の人生に思いを馳せたりしてしまいます。
    冒頭から読み返すと、最初に読んだ時と違う物語が見える。

    芝木好子さんの本も読んでみようと思いました。

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    2025年01月18日
  • 潜熱

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    ありがたくて、正座して読みたくなる、特別な作家です。

    どの一文も意味があり、流してしまいたくない。

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    2024年10月06日
  • 潜熱

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     正直に話す。本当に文体だけで読ませる。
     今、こんなに端正で乾いて快い文章に出会うことはあるかな。
     
     

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    2024年03月12日
  • 潜熱

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    広告コピーライター、作詞家、小説家と言葉を連ねることに生涯を捧げてきた男の物語。多くの文学賞を受賞し、死を意識する年齢になった作者が「言葉」への思いをぶつけた遺作なのだろう。

    タイトルの「潜熱」とは物質が固体や液体になるために必要とする熱量のこと。男は出会った人の潜熱で人生を変えてきた。友情や愛情、同情、敵対などが複雑に入り混じり、そこから生まれた感情を言葉として吐き出し、行動に変換する。

    作者の豊富な語彙力がふんだんに使われて、テンポの良いストーリー。男の40数年の人生があっという間に語られる。

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    2023年09月27日
  • 潜熱

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    作詞家を目指し、一角の者になり、音楽がただで聴けるようになって作家になった相良という男の一生が、一日で読めてしまう小説。あれ、珍しく主人公はハッピーエンドで終わらないのかなと思いきや、やっぱりそこそこの幸せに落ち着きそうに終わる。
    この人の小説はいくつも読んでいるが、文筆家が主人公の話が多く、中でも壱番この本が、俺もこういう残余の人生を送れないものだろうかと思った小説だった。
    まぁ、でもこの相良みたいに奥さんと国を違えて別居になって事実上の離婚なんてことになるのは望みたくない。

    に、してもいつもながら、至福の時間だったな。

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    2023年01月05日
  • あの春がゆき この夏がきて

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     言葉を、表現を、そして神木の人生を、しっかりと味わった。劇的なものはないかもしれないが、それは仕方の無いこと。憧れはないが、こんなにふうに成し遂げられないままで終わるのも本当の人生だな。

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    2022年04月04日
  • ロゴスの市

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    『ロゴスの市』‪ 乙川優三郎さん

    2年前に一度読み、再読。

    英語と日本語、翻訳家と通訳の対比表現、そしてそれらを弘之と悠子へ当てはめていく描写が素晴らしいです。‬
    ‪恋愛模様だけでなく、翻訳家事情についても非常に詳しく描かれていると思います。日本語は美しい、しかし用い方によっては醜くもなる…そう、母語は時に敵になるんですね。。
    ‪言葉を紡ぐことがどれだけ日常を豊かにするか、再度学びました。‬

    ドイツのブックフェアのシーンは、読書好きにはたまりません。会場で弘之が興奮している描写は、私の琴線に触れました。

    帯にある通り、切ないです。しかし、最後の一ページで

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    2020年08月02日
  • ロゴスの市

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    昨年読んだ「太陽は気を失う」がなかなか良かったので買ってみたが、新年早々、良いお話を読んだ。
    学生時代に出会い、惹かれあって、しかし仕事と生活の狭間で苦悩し、すれ違う男女の切なくなるような愛情模様。
    結婚という枠から外れても、こういう事情の情事なら…。
    直截的な表現はなくても艶めかしく、互いの精神の中に巣食うような表現に情愛の深さを思う。
    とても端麗な文章で、初めて触れるような言葉の使い方もあり、作中、翻訳家が英語から日本語を絞り出すのに呻吟する様が描かれているが、日本語を紡ぐだけでもどれほどのことかと思い知る。
    向田邦子、芝木好子、ジュンパ・ラリヒも読んでみたいと思った。

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    2019年01月12日
  • ロゴスの市

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    男は翻訳家、女は通訳。二言語の間を取り持つという果てのない世界に、少しだけ違うアプローチで魅せられた二人の運命を、長い年月にわたるがほんの短い交流で描いている。
    とにかく暖かく重みがありながら、エッジを失わない文体で綴られている。翻訳という作業も、こういう選びぬかれた言葉でじわじわと積み上げていく苦行なのかと思わせる。

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    2018年12月06日
  • 立秋

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    装丁が写真から絵になってはいるが、話の組み立ては変わらずの乙川節とでもいうのかな。
    得意の火灯し頃は一度きりだけだったけど、また十分にこの特異な文体で語られる男の物語に浸って時間が過ぎた…

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    2025年11月12日
  • 潜熱

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    信州の小さな街の貧しい畳屋の一人息子として生まれた主人公の相良梁児が、故郷を捨てるようにして上京、小さな広告代理店にもぐり込む。
    そこから始まる主人公の人生が、昭和30年代から令和までを舞台に描かれる。
    そしてその道連れとなるのが、遅れて上京してきた大庭喜久男。
    母子家庭に生まれた大庭は上昇志向の強い野心に満ちた男で、俳優として世に出ることを夢見ている。
    さらに大庭の恋人となり、後には相良とともに生きていくことになる女優の宇田川陽子が加わって、それぞれの歩みが綴られていく。
    読み始めるとすぐにその世界に引きずり込まれるのは、これまで同様で、全体に抑えた調子の品格ある文体が心地いい。
    そしてその

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    2023年12月10日
  • ロゴスの市

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    ロゴス愛に溢れた一冊。
    翻訳という仕事のことがよくわかりました。まるで異業種交流したような気分です。
    恋愛については…昭和感が味わえると思います!

    翻訳には明確なルールがなく、訳者のセンスに任されるところが大きいことから〈翻訳という作業も創作〉といえるそうです。

    そういった意味で、個人的に一番気になるのはタイトルのつけ方です。
    たとえば本書にもでてくる『若草物語』。
    原題は『Little Women』(直訳: 小さな婦人たち)だったそうですから、つけた人のセンスに脱帽です。

    有名な『レ・ミゼラブル』は黒岩涙香氏によって『ああ無情』となりますし、世の中には素晴らしい邦題がたくさんあることに

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    2023年12月10日
  • 潜熱

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    ネタバレ

    畳屋の息子がコピーライターを夢見て家出同然で東京へ。同じく俳優を夢見る大庭との友情などの章。次はコピーライターから作詞家への転身と結婚、最後はさらに作家を目指す。
    関わってくる人々への深い人間観察と書く言葉選ぶ言葉への偏執的なまでのこだわりが文章になって表れている。
    時代の流れ、空気感、そして主人公たちの移り変わりと変わらずにいるものが心に染みる。そんなに長い小説ではないけれど、じっくり読み応えのある一冊でした。

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    2023年03月06日
  • ある日 失わずにすむもの

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    NYのスラムで生まれたマーキスは、弟とともにジャズミュージシャンとして生計を立てていた。そんな中、近々戦争になるという噂を耳にし……
    ある日戦争によって失われる日常を描いた短編集。ゆっくりとあるいは突然に、容赦なく。

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    2023年02月26日
  • ロゴスの市

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    はじめて恋愛小説を読んだ。
    なかなか面白いもんだ。
    ストーリーを追うのが楽しくて、読めない漢字をそのままにしてしまったことが少し後悔。
    漢字が読めたらもっと楽しめたかも。

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    2023年02月17日
  • 地先

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    面白いかな?なんて不安はこれっぽっちもなく安心して読める貴重な作家さんです。旧作の時代物がデジタルで読めることを願います。

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    2023年01月11日
  • 潜熱

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    人生を振り返る時。また、まだこれか先を見つめる時。その人の潜熱。内部にひそんでいて外にあらわれない熱量を見つめる時。

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    2022年12月10日
  • ナインストーリーズ

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    また、読み終わりたくない時間があっという間に過ぎてしまう。なんでなのかな。話自体は九篇あるうち、もの珍しいのはそれほど多くないのだけれど。しかも、それぞれの登場人物から見れば悪いばかりではない終わり方なんだろうけど、話としてのハッピーエンドではない話も多いしな。でも逆に、これからのことを考える話ばかりだから、それぞれの読後感は悪くなくて、眠いはずの帰路の電車の40分余り、全く寝なかった。

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    2022年08月24日
  • あの春がゆき この夏がきて

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     過去、現在、未来 → すべてつながっているが、過去の不幸は現在の不幸でも未来の不幸でもない。現在の不幸は今現在作り続けている不幸であり、未来の不幸は悩み続けているからの不幸であるから。
     どこか納得させられました〜

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    2022年04月21日