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Posted by ブクログ
昭和30年代、信州の小さな町で育った相良と友人の大庭。相良はコピーライター、大庭は俳優を目指して上京する。相良は広告の世界で頭角を現し、やがて作詞、さらに小説へと表現の場を移していく。
その歩みの中で、結婚、娘の成長、そして人との再会。人生は静かに形を変えていく。
大きな事件が起こる物語ではない。けれど、広告・作詞・俳優という少し華やかな世界を背景にしながら、そこで生きる人間の「日常」が描かれている。
淡々としているのに、なぜか引き込まれる。乙川優三郎さんの静かな筆致の力を改めて感じました。
タイトルの「潜熱」は、物質が姿を変えるために内側で費やされる熱のこと。
表には見えないけれど、確かに存在しているエネルギー。
人はきっと誰もが自分の中に「潜熱」を持っている。
それを使うか、留めておくか。どちらが正しいわけでもない。けれど本書のラストを読んだとき、その熱を生かして生きる人生のほうが、少しだけ世界が輝いて見える気がしました。
Posted by ブクログ
信州の小さな街の貧しい畳屋の一人息子として生まれた主人公の相良梁児が、故郷を捨てるようにして上京、小さな広告代理店にもぐり込む。
そこから始まる主人公の人生が、昭和30年代から令和までを舞台に描かれる。
そしてその道連れとなるのが、遅れて上京してきた大庭喜久男。
母子家庭に生まれた大庭は上昇志向の強い野心に満ちた男で、俳優として世に出ることを夢見ている。
さらに大庭の恋人となり、後には相良とともに生きていくことになる女優の宇田川陽子が加わって、それぞれの歩みが綴られていく。
読み始めるとすぐにその世界に引きずり込まれるのは、これまで同様で、全体に抑えた調子の品格ある文体が心地いい。
そしてその底に見え隠れする深い想いが胸を打つ。
それは古稀を目前にした作者自身の現在の心境が強く投影されているからだ。
そこには悔恨や哀しみばかりでなく、秘めたる熱情を感じとることができる。
それこそが「潜熱」なのであろう。
なお「潜熱」とは、物質が状態変化する際に発生するエネルギーのことである。
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