榎村寛之のレビュー一覧
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紫式部や清少納言の活躍した平安中期—よりも後。
平安前期は、あまり資料もなく、よくわからないというイメージがある。
一方、平安後期は、やたらに人がたくさんいて(裏を返せば「キャラ立ち」する人がいない)、入り組んでいて、とかく複雑、というイメージ。
さて、私の典型的な平安イメージ=西暦1000年ごろを起点に、その後を描いているのが本書。
西暦1000年ごろを境に、中世という歴史区分がはじまる。
では、筆者は中世の専門家かというと、実は古代だというので、また驚いてしまうのだが、そこは斎院・斎宮を専門としている研究者であるとのことで、女院や内親王など、高貴な女性たちが「権門」となっていく状況を説明 -
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面白かった! 筆者はこの本を上梓したくて前作『謎の平安前期』をとりあえず書いたのではないかと思う。ノリノリで書いている姿が頭に浮かぶ。平安後期、従来の摂関政治が終わり、院政へと移行していく中で「女院」という存在がいかなる力を持っていたかということを生き生きと描いている。後の時代を描く書の中で「軍事貴族の○○は○○門院に仕えていた」というような記述がなぜあるのか不思議に思っていたが、本書を読んで腑に落ちた。そして、相変わらずの榎村節! 一般読者には分からないような特殊用語を使わず、現代に引き寄せて説明してくれる。たとえば、『今昔物語集』を平安後期の大スキャンダル事典と言ってみたり、「成人した天皇
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平安時代前期の歴史を生き生きと記述した一書。平安貴族社会はのぺーとした一様なものではなく、その時時の天皇、藤原家の面々の思惑、天皇と結婚したキサキに男児が生まれるか女児が生まれるか、といった様々な要因で、あれこれを揺れ動いたいた(当たり前と言えば当たり前)。歴史学者はともすれば(『広辞苑』にも載っていないような)難しい漢語を使うこともあるのだが、著者は分かりやすい言葉、しばしば現代のカタカナ語を使い、現代で言えばこれこれこういうことだと説明してくれるのでとても分かりやすい(呑み込みやすい)。たとえば官位の低い歌人が活躍できたさまを「いわば誰でも参加できるカラオケバトルが宮廷で文化として定着した
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咀嚼できてない部分もあるが、一気に読んだ。とくに第八章の紀貫之の話は、元々古今和歌集の仮名序に関心があったのでとても面白かった。
いわゆる六歌仙の時代は和歌不遇の時代で、紀貫之らによる古今和歌集は和歌復権の旗印だったと。
仮名序で6名の名を挙げながら全然褒めてないとは知っていたけど、貫之にしてみれば、柿本人麻呂や山部赤人の時代が至高で、在原業平らのことは、最近にしちゃマシな方だけど和歌の魅力はこんなもんじゃない!みたいな扱いだったということか。
ただし、なぜそれが後に六歌仙などと呼ばれるようになったのか、の謎は深まった。
また、女性の活躍の場の変遷(というか活躍の場がなくなっていく様)の説明 -
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<目次>
序章 平安後期200年の女人たちとは
第1章 寛仁三年に起こった大事件~刀伊の入寇
第2章 彰子が宮廷のトップに立つまで
第3章 道長の孫、禎子内親王が摂関政治を終わらせた
第4章 貴族と武者と女房と~斎王密通事件と武士
第5章 躍動する『新猿楽記』の女たち
第6章 院政期の中心には女院がいた
第7章 源平の合戦前夜を仕切った女性たち
第8章 多様化する女院と皇后、そして斎王たち
第9章 究極のお八条院八条院暲子内親王と源平合戦
第10章 それから~鎌倉時代以後の女性の力
<内容>
前作『謎の平安前期』に続き、平安時代を朝廷や摂関政治、院政の男たちから描くの -
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一般的になよっとしたイメージを持たれがちな平安時代であるが、有名な紫式部や藤原道長などが活躍したのは平安時代の後半であり、平安遷都からの約200年間=「平安前期」は、時代の転換期で面白く変化に富んだ時代だったという問題意識から、桓武天皇の事績とその後の皇位継承、貴族と文人の関係、宮廷女官、斎宮・斎院、紀貫之を通して見る平安文学など、平安前期の様々なエピソードを解説。
確かに著者がいうように、平安時代としてイメージするのは平安時代の後半期のことが多く、平安前期については、高校の日本史で習った通り一遍のことは知っていても、その具体的なイメージはあまり持っていなかったので、本書の内容はとても興味深か -
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イメージが湧きにくい平安時代の前期200年を天皇、文人官僚、貴族、宮廷女性など多様な視角から描き出そうとする試み。人名などに馴染みがないので読み進めるのが難儀な箇所も多いが、時折平たく噛み砕いて説明してあるので、何とか読み通すことが出来た。
最後の第10章に全体のまとめがあり、これはわかりやすい。序章の年表もわかりやすい。ただ中身はそう簡単に理解できない。とくに第5章、第6章は読み返さないとついていけない気がした。
やや強引にまとめると、中国の律令制を模倣しようとして完コピに失敗した日本があらためて国家目標としたのは、「天皇を中心とした官僚制度」の確立であり、それは桓武天皇から始まりようや -
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<目次>
はじめに 平安時代は一つの時代なのか?
序章 平安時代前期200年に何が起こったのか
第1章 すべては桓武天皇の行き当たりばったりから始まった
第2章 貴族と文人はライバルだった
第3章 宮廷女性は政治の中心にいた
第4章 男性天皇の継承の始まりと「護送船団」の誕生
第5章 内親王が結婚できなくなった
第6章 斎宮・斎院・斎女は政治と切り離せない
第7章 文徳天皇という「時代」を考えた
第8章 紀貫之という男から平安文学が面白い理由を考えた
第9章 『源氏物語』の時代がやってきた
第10章 平安前期200年の行きついたところ
<内容> -
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本書は、飛鳥時代から鎌倉時代まで、天皇の代替わりごとに占いで選ばれ、伊勢神宮に仕えた未婚の皇女である斎王と、その住まいである斎宮について、特に斎王個人を取り上げることにより、その歴史を浮かび上がらせている。
斎宮という現代ではなじみのない世界について手頃に知るにはうってつけの一冊である。
他の古代発祥の諸システム(天皇、上皇、摂関など)と異なり、斎宮はなぜなくなってしまったのか、という問題意識とそれに対する答え(古代の日本「国」の成立とともに、それを象徴するものとして形成された「斎宮」制度は、中世の日本「地域」の成立とともに、終焉することとなった)も興味深かった。