今西康子のレビュー一覧
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面白かった!ヒトをヒトたらしめているのは文化であるということがよく分かった。ヒトはチンパンジーと比べて特別賢いわけでも生物として優れているわけでもない。すべては文化の蓄積のおかげなんだ。ヒトは文化と切り離されたら生きていけないが、それは現代人が退化したわけではなく、狩猟採集時代においても同じこと。樹上から降りて大きな集団を作り、集団内で文化を蓄積し、文化の進化とともにヒトの遺伝子も進化してきた。
また、一見不合理に思われるようなヒトの心理特性についても文化進化の面から考えると納得いくことも多かった。こうしたヒトの生得的心理に逆らうような規範が社会に根付くのは難しいだろうこともよく分かった。それ -
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著者のジャスティン・シュミットは、2015年にイグ・ノーベル賞を受賞。授賞理由は、苦痛に耐えての虫刺されの痛みの尺度の作成。まさに体を張った研究。本書の原著は、タイムリーにも、受賞直後の刊行。
子ども向けの授業では、ミツバチが何匹も飛び回っている広口瓶に手を入れてみせる。刺されると思いきや、大丈夫。実は中にいるのはオス。オスは刺さない。進化的には、ハチの産卵管の先端が刺針に変化した。つまり、刺針をもつのはメス。
刺針や毒液がどう進化したか、防御のためにどう刺針を使うか、どんな毒虫の擬態をするか(ベイツ型とミューラー型)が、体験談も交え、かなり詳しく解説されている。トリビアも満載。
巻末には、毒 -
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原題のほうが内容をよく表している。「バイアス」というと行動経済的な印象があるが、狭い内容ではなく、「経験」がいかに意思決定を間違わせるかとそれに対してどう修正するかを幅広く考察した本。
THE MYTH OF EXPERIENCE
Why We Learn the Wrong Lessons, and Ways to Correct Them
【目次】
序章 経験はすばらしい教師だ――が、そうではないこともある
経験―それは頼れる教師
学習になじまない環境―見落としているのは何か? 無視すべきなのは何か?
経験からの教訓―いったん学んでしまうと、忘れるのは難しい
経験幻想を捨てる
第1章 -
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山の中に住んだら健康的になるかも。というようなことが書かれた本。普段人間が生活している屋内には、見えないサイズの数多の生物が生息しており、野外と比べても特別な生物相が形成されている。特殊な環境でしか見つからない菌が、普段使っている給湯器から見つかってしまったなどの例も書かれており色々面白い。
細菌などを含めた生物の多様性を維持することで人にとって悪い菌が増えるのを防ぐ話や、薬物耐性菌を野に放つと従来の耐性のない菌にリソースの問題で負けてしまう辺りの話も興味深かった。あとはコロナで話題になったPCR検査は本来こう使うのかなどと思った。
とりあえず今日から窓をちゃんと開けて換気するようにしたい -
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生態学者の著者は、これまで、生態学は外の世界を見てきたという。人類は含まれるものの、人類を取り巻く「自然」における多様な生物からなる生態系及び生態系サービスを見てきたという。だから、家の中にどれぐらい新生物がいるかをしらなかったという。それに対して、本書が取り上げるのは一軒の家にいる生き物すべてを総ざらえしようというのである。そして、その生き物たちが生態系をなしていて、微妙なバランスで成り立っているというのである。なお、本書ではウィルスは登場せず、細菌や原生動物といった微生物、昆虫、ペット、そして、人間が登場する。
たとえば、花粉症などのアレルギーは、多様な環境に暴露されなかったから、身体の -
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ネタバレ蟻と蜂が刺針をどのような目的で発達させてきたかを、その生態、社会生活を営むのか、単独性なのか、餌との関係なのか、捕食者との関係などに触れながら記述していく。
社会性の高い種ほど、その失うモノ(蜜や幼虫など)が大きいため、外敵に対する刺針とその毒を発達させ、単独性の昆虫は餌を麻痺させる目的で発達させているようだ。特にオオベッコウバチがタランチュラを麻痺させ、巣に運び、卵を産み付ける。孵った幼虫がタランチュラの血や筋肉、脂肪、消化器系などを食べられ、最後まで動いていた心臓を食べられて死ぬという。この部分を読んだ時は、タランチュラが少しだけ愛おしく感じた。
他にもヒアリが拡大した理由に人間とその -
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昆虫刺されの痛さを1−4スケールで示し、イグノーベル賞を取った著者の渾身の一作。
蜂と蟻がどうやって毒針を持つに至ったか。もともとは産卵管が発達して刺す機能を持ったので、メスしか刺せない!どういう蜂や蟻が刺すのかというと、失うものが大きい種類。高度な社会性を持つ場合、コロニーを大型哺乳類から守るには自らを犠牲にしてでも捕食者をすから遠ざけなくてはならない。そのため、ミツバチは毒針を自切し毒液を捕食者に対して全部注入する。またありバチは社会性はないが、メスは翅もなく長生きであるため捕食されるリスクも高い。そのため、硬い体、柔軟な針、痛い毒液を備える。痛さ最高に君臨するサシハリアリは、主に植物性の -
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下巻は特にオスによるメスの獲得、つまり「子孫を残す」という行動原理から人類の成り立ちが紐解かれていく。日本では一夫一婦制が当たり前だが、歴史的に見てもそれが必ずしも正しいとは言い切れない。しかし、長い時間をかけて、そのような秩序が形成されていったのだ。そこには宗教的な理由や男女それぞれの合理的な思惑も反映されていった。
結果として種が続いているという事を考えれば、狡猾な戦略がそこにはあるのだ。女性は、優れたハンターを独占できる方が、食に満たされ、自らの子孫を残す確実性が高まる。しかし、一夫一婦制だと「優秀なハンター」は別の誰かに独占されてしまい、「狩りの下手糞な夫」とつがいになる可能性もある -
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「WEIRD」とは、西洋の(Westem)、教育水準の高い (Educated)、工業化された(Industrialized)、裕福な(Rich)、民主主義の(Democratic) 社会という意味の略語である。世の中の研究論文が、このWEIRDを対象に結論づけられている事が多いが、果たしてその見方は正しいのかというのが本著の問題提起だ。
家族形態や識字率、宗教観や人生観、経済観念においても、一様にWEIRDが世界代表と言えるわけではない。偏った標本のはずだ。我々の常識とは、本当に常識と言えるのか。
上巻は、そうした偏りを招いたであろう証拠を探っていく。特に決定的に感じるのは宗教だ。プロテ -
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本書を読み出したキッカケは、訳者の今西さんが気になっていたからです。
同じく彼女が翻訳したカール・ジンマー『ウイルス・プラネット』(飛鳥新社、2013年)を読んだことがあり、面白かったので別書もと思っていたところ、本書を知って早速読み始めました。
私達の住む家には、20万種の生きものがいて共生している、と著者のロブ・ダンは書いています。
ハエ、クモ、甲虫、ハチやアリ。そして、ピリオド「.」の大きさに中には、チリダニ、アメーバ、細菌、酵母、カビ胞子など様々な生きものがいる・・・。さらにそのダニを食べるダニまでいたりして、微生物の世界に改めて驚かされます。
その世界を初めて垣間見たレーウェ -
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経験は、信頼できる教師となる。だが、そうならない場合もある。現代では、個人的経験が頼りにならない領域が広がっている。
経験が目をくらますとき、「必要な情報が抜け落ちている」ときと、「無視するべき意味のない情報が入り込んでいる」場合がある。だがそれに気づくのは容易ではない。
本書では、経験によるバイアスにはどんなものがあるか、またそれを避ける方法について詳細に説明する。
・危機や災害への対応
・創造性を発揮するには
・意思決定をコントロールさせないためには
・倫理的に問題のある行動を避けるには
・成功の確率を高めるには
・経験が幸福感を妨げないようにするには
などなど、具体的な状況に即しているの -
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厳しい環境に適応するために遺伝子が変化してきたというこれまでの典型的な進化論的アプローチとは異なり、生き残るために文化が形成され、それに適応してきた結果、ヒトが遺伝的にも進化してきたという新たな進化論を、様々な事例を挙げながら解説している本書。正直「卵が先か、ニワトリが先か」のような話かと思っていたが、読むと非常に説得力があり、大変興味深かった。
人類が地球上でもっとも繁栄してきたのは、単に知能が高いからではない。他の動物との決定的な違いは「文化」があること。環境に適応していく中で文化(毒抜きや調理法、狩猟方法、道具の作り方、タブー、儀式、風習、ルールなど)が生じ、それに基づいて社会が形成さ