abさんご…書かれていることは特別のことではない情景です。
描かれている家族の話自体は、ありがちな物語でしょう。
例えばこれを映像化してそれを様々な人に逆に文章に起こさせたら、
それ程の表現をもってしなくても万人にあっさりと読みやすく表現されてしまうのではないでしょうか。
ということでこれは、物語
...続きを読むを読む小説ではなく表現を読む小説なのだなと思いました。
ひらがな、漢字の「場所」をよく考え抜かれたのでしょうね。
これは若くしては書けない技法だと感じました。
難しく感じる言葉や表現に漢字が多く、感情や独特の言い回しを
多用する箇所にひらがなが多く用いられているように感じました。
それは私個人の感覚で実際は違うのかもしれませんが。
縦書きの方の「タミエちゃん3部作」(と勝手に呼びますが)は
不穏な空気に満ちています。子供ってでも実際にタミエちゃんのように
手を下さなくてもこんな不穏さは持ち合わせているものです。
見逃しがちなところをうまく掬い上げていると思います。
でも、この小説そのもの云々と言うよりも、この3部作と受賞作との間に
半世紀ほどの時が流れている、ということの方に感慨を感じます。
よくぞ続けられたなと文学に懸ける信念を感じます。
黒田さんの独特な感性から発せられた言葉をもって
違う文体で書かれた作品がいつでてくるのか、興味津々です。