第6回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。
タイトルからぴんとくる人もいるだろうが、私自身はロボトミー手術と聞いても「女優フランシス」くらいしか知らなかったので、プロローグの描写からのけぞる。
腰が引けつつも、もう少し……と読み進めたら止まらなくなった。
本編に入ってからも度々出てくる施術の描写はやはり苦手だけど、話の流れにどんどん読まされてしまった。
貧困ビジネスと医療サスペンスの合わせ技。
推理ものというよりも、サスペンスの色味が強い。
未読の興を削ぐようなネタバレにはならないと思うが、気になる方は以下ご注意を。
失踪した父を偶然見つけ、現在の住まいであるアパートを訪ねた遠田香菜子はそこにいた父の様子がおかしいことに気付く。
世話をしているというボランティア団体の胡散臭い人間が出てきて、怖くなったところを助けてくれたのが、楡川という青年。
彼の叔父も同じ団体に「保護」されているという。
乗っ取られる寸前まで経営が傾きながら、なぜか急に潤いだした病院の院長、息子の副院長、遠田の父たちを保護する団体との関連と事件性を感じ、記事にするべく追っているフリーライターの女性……
人と出来事が少しずつ繋がってくる。
そこから浮かび上がってくる、おぞましい手術と冷酷無比な術者。
「犯人」が捕まってからの最後100ページ弱が少し長い。
表面上、事件が明るみに出てからでも、登場人物の多くが何かを隠している。
その隠された真相が一つ一つ明らかになり、人物の印象が二転三転する。
キモともいえる部分だが、もっと「本編」に挿入できなかったものかと。
選評(島田荘司)にあるように読者の評価は「結末へ向けた思い入れの読書を続けられるか否か」にかかる。
他人の視線を恐れ、うつむいてばかりだった遠田さんの変化が嬉しく、すっかり彼女に思い入れてしまった私は「桁外れの純情とセンチメント(同選評)」に同意できた。
遠回りしたラストシーンに、読後感が一気に良くなる。