レザー・アスランのレビュー一覧
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ネタバレ聖書において、救世主(キリスト)イエスとして描かれている人物を歴史的な知見から改めて見てみる本作。
そこで描かれているナザレのイエスは、地上における「神の国」の樹立を目指して、弟子たち軍団を集めながらガリラヤ全土を歩き回り、社会の大変革を企図していてた熱烈な革命家であり、エルサレムの神殿の司祭階級の権威に楯突く魅力ある伝道者でありローマの占領に反抗して敗北した急進的なユダヤ人ナショナリストである。
こんな熱意の溢れる彼だからこそ、弟子たちは彼を信じ、彼の跡を継いだり彼の権威の上に行こうとしたりせずに、救世主として描いたのだろう。
最終章らへんのパウロの暗躍などは読んでいてとっても納得できるとこ -
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神の人格化と人間の神格化は同じコインの裏表、冷酷ないやハウウェイと優しく慈悲深いイエス、
地上の人間の支配の性質が変われば、天界の神々の支配もまた、それに合うように変化した。現世政治の神格化が起こった。
ユダヤ人の間に一神教を導入したのは、換言すれば、バビロニア人の手によるイスラエルの悲惨な敗北を合理化するためだった。これが私たちの知っているユダヤ教の誕生である。バビロン補修以降台頭した神は人間的な感情と長所、善と悪を余すところなく発揮する永遠にして不可分の神。わずか500年後には、自分たち自身をキリスト者と呼び世の終わりを憂うユダヤ人の新興宗派によって、それは覆されることになる。 -
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歴史学、考古学等の最新の知見から(神〉とは何なのかに迫る本書。〈神〉という概念が誕生した1万年以上前に遡り、認知科学のHADDや「心の理論」から、神とは人間の脳が生み出した「副産物」であると著者アスランは述べる。自身ムスリムであるアスランがそう述べるところに凄みがある。そして、人格化された神の系譜を、時系列に沿って丁寧に洗い出していく中で、神のあり方が人間の現実世界と合わせ鏡のようになっていることが明らかになっていく。
微妙な邦題から宗教的な匂いを嗅ぎつけて敬遠してしまうのはもったいない。本書の半分以上を占める膨大な注釈と参考文献リストからも分かるように、知的興奮に満ちた科学読物である。べらぼ -
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邦題が『イエスは実在したのか?』ではなく、『イエス・キリストは実在したのか?』であるのは一つの肝である。実のところ、歴史学的にも考古学的にも、イエスが実在の人物であることはほぼ定説となっている。本書は、新約聖書および同時代の史料を徹底的に読み込み、新約聖書の矛盾を洗い出すことで、歴史上の人物であるナザレのイエスの素顔に迫るものだ。宗教的には聖典をそのまま受け入れることが正しい姿勢だろう。しかし、ムスリムでもある著者アスランは、歴史家としてイエスと向き合う。宗教と歴史、2つの視点で見ると、同じものを見ているにも関わらず、異なる視界が広がる。その様はエキサイティングで、スリリングである。
本書はま -
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救世主(=キリスト)としてのイエスの存在と、実際に2000年前に生きていた人間としてのイエス(ナザレのイエス)についての論考。イエスというと、磔刑に処せられた悲劇の教祖、愛と慈愛に満ちた人々を導く尊師、数々の宗教画や彫刻で表現された無垢で無謬の存在のイメージ。当然だが、元となった人物はいるわけで、数々の経典や歴史書など読み合わせる中でその人物像を描いた一冊となっている。この本で明らかにされる人間イエスは、同じユダヤの民でありながらローマの支配に従属している高位聖職者に反発し、神殿に乱入したり、不当に商売を独占している商人のお店をぶち壊したり、真っ当だが過激なスローガンで体制批判する若きカリスマ
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エルサレムの過激な宗教革命家としてのキリストを歴史学的見地からのノンフィクション。
キリスト教徒から、キレられんじゃないのか?とこちらが、心配してしまうぐらいに過激な題名で、思わず即買い。
キリスト教が世界三大宗教として確立するまでの聖書・歴史書の分析や、論理的な説明が、本当にいい。
イスラム教徒である歴史学者が、著述しているからなのか。
イエスだけでなく、ヤコブ、パウロなど、教徒でない日本人の私にとって、最高の入門書であった。
ところで、キリスト教国としてのアメリカが、テロリストとしてのオサマ・ビンラディンを、殉教者にならないよう、暗殺し、遺体を残さなかったのは、正しかったのであろう。 -
Posted by ブクログ
前回、世界遺産の興味から、世界宗教史を学び、その中から疑問として感じていた、宗教の敬う対象としての神という考え方が一体、どのように、どうやって生まれてきたのか。そして、なぜ、地球上のいろいろなところで、似たような神の存在を信じていたのか、といったことへのヒントになると思い、読んでみました。
本書は、太古の昔から人間の宗教感情が覚醒して行くプロセスを、認知科学、考古学、宗教史などの比較的近年の資料をもとに、描かれています。著者自身の信仰の歴史も紹介し、世界の宗教史を踏まえながら展開していきます。
まずは、人間の宗教感情の目覚めを、肉体は死んでも、魂は生き続ける、という信じようとする本能的性向があ -
Posted by ブクログ
・神、の人類史といえる本,かと思ったが,東アジアの儒教や仏教,神道,その他未開の地の独特な信仰体系等は触れられておらず,古代狩猟採取の超自然的な概念の誕生から最終的にユダヤ・キリスト・イスラムへの経路を辿るのみ.
・古代の狩猟採取の時代から,物や人には魂が宿るという考えやその発端が人が夢を見ることや現実世界で不可解な現象に説明をつけたかったからではという説が印象.
・神とそれに付随する宗教,古代文明や帝国の歴史,それらの推移といった,個人的に手が出しづらいところも知ることができて面白い.
・ユダヤ教,キリスト教,イスラム教あたりの話からは興味が持てなかった.
主教や神そのものではなく