杉田弘毅のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この書がアメリカの制裁手段としてドル決済の停止の有効性、その影響力をわかりやすく著された良書なのは確かだ。
アメリカがドル決済の停止による金融制裁を多用し始めたのはオバマ政権以降であり、トランプ政権になると武力行使を忌避する自身の意向から無秩序に乱発された。政権ごとに一変する外交方針の一貫性のなさから制裁の効果も今一つで、中国やロシアなどドル離れを模索する国の行動が活発化している。かなり端折ったがそのような内容だ。
ただこの書の目的が制裁外交の弊害を素にトランプの批判のみに帰結するというものなら、現状を考慮すると疑問符がつく(この書は2020年初版なのでバイデン政権の政策は未知である)。
-
Posted by ブクログ
所謂「国際報道」というモノが在る。それは「如何いうモノなのか?」を深く考えて綴ろうとしたことから本書は始まり、やがてロシアのウクライナへの軍事侵攻という事態が発生し、「連日のように耳目に触れる“国際報道”」ということになって、その報道の在り方にも筆が及んでいるのである。
本書の中で「戦争の最初の犠牲者は事実」という旧い言葉が引かれていたのが少し強く記憶に残った。実際、「戦争について伝えられた経過」を振り返ると、「事実は??」という程度に姿が見え悪くなってしまうものなのかもしれない。
ウクライナの件は、これまでの何度も繰り返された戦争の報道と一味違って、ロシアと米国と、権威主義と民主主義との大き -
Posted by ブクログ
昨今のウクライナ危機で、制裁について取り上げられる機会が多いため、手に取った。
近年のアメリカ外交における制裁について、分かりやすく解説してある。特に、基軸通貨ドルの強さを活かした金融制裁の威力が詳しく書いてある。事例を交えて解説しているので、ニュースと関連付けながら理解できる。ポスト冷戦期のアメリカ外交の復習にもなると思えるくらい、アメリカ外交における制裁が占めるウェイトが大きいのだと感じた(第二部)。
一国の法律、あるいは州の法律が安易に「国外適用」(米当局は国外適用であることを否定する)されることには、違和感を覚える。それは差し引いたとしても、特に後半部における、著者のアメリカに対す -
Posted by ブクログ
著者の杉田弘毅さんは、1980年共同通信社入社後、大阪社会部、テヘラン支局、ニューヨーク支局、ワシントン支局長、論説委員長などを経て、現在は特別編集委員兼論説委員であり明治大学特任教授(メディアと国際政治)でもある。2021年度日本記者クラブ賞受賞。
国際報道に携わってきた自身の経験と見識から、特に日本の国際ジャーナリストに望むことが主題となっている。
この本を書いている最中にロシアのウクライナ進攻が始まったようだが、ジャーナリストの観点でその見方が具体的に書き加えていると感じた。
目まぐるしく変化する国際社会に、安易な理想や思い込みは通用しない。ジャーナリストにとっては、権力に流されるこ