藤原多伽夫のレビュー一覧
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ブライアン・ヘアは、イヌとボノボの研究者。学部時代の指導教員はマイケル・トマセロ、大学院はリチャード・ランガム。彼らの直系なのだから、学問的なおもしろさは推して知るべし。大学院の頃、ランガムの指示のもと、ギンギツネの家畜化で有名なシベリアのリュドミラ・トルートの研究施設で3カ月を過ごした。その時のエピソードがおもしろい。
イヌもボノボも、ヒトと同様、強力な「自己家畜化」の形質をもった動物種だ。本書で展開されるのは、ヒトの場合、この自己家畜化によって社会的知能が生み出されたという仮説。ネアンデルタール人が、われわれ現生人類に比べさまざまの点で「家畜化」の程度が少ないという指摘も興味深い。ただ、7 -
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ネタバレ進化の本かなと思って読んだけど、徐々に差別や分断の話へと変わっていった。
最後の謝辞に『(二〇一六年の)大統領選の後、第一稿の半分を没にした』とある。政治に疎い私でも前後の文から、トランプ大統領が当選したときの話だと分かった。
人間は『ずっと子供のまま』というのは、何かのテレビで見た気がする。これは『幼いまま』という意味ではなくて『好奇心が強い生き物』という事。
人間は大人になっても好奇心が強い。とはいえ、子供のころよりその好奇心は縮小されているのはひしひし感じる。それでも年を取って好奇心ゼロになる人は少ない気がする。
p190にはアメリカの刑務所制度の問題点が書いてある。実は『ポリコレの -
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ヒトが他の人類と違って繁栄できたのは、自己家畜化によって進化した協力的コミュニケーションという友好性を有していたから。一方でこの友好性は他者を非人間化し残虐に扱うことができるという負の側面もある。
協力的コミュニケーションの能力はイヌにはあるがチンパンジーにはない。友好的なキツネだけを交配すると認知能力だけでなく外形にも変化が生じた。脳の小型化や鼻面が短くなったりした。
ヒトには集団内の見知らぬ人という社会的カテゴリーが生まれ、それが人口増加と技術革新を生み出した。
ヒトは他者を非人間化し、残虐になる。非人間化の典型が猿化で、これは日本人、黒人、アイルランド人、ユダヤ人などあらゆる集団があらゆ -
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生物学の視点から“協力”行動についてを人類を含む生物全般から研究している一冊です。
単細胞の集合体である我々自身についての説明から始まり、他者への利他的行動、個体とがん細胞の関係、配偶と育児の仕組み、動物界の協力例、善い協力と悪い協力、評判と見栄の関係…などへ展開していきます。
協力とは個体が生き残る確率を上げるための保険であり、人間の社会生活におけるそれも仕事を軌道に乗せるための保険などとして役立っています。
大きな成果を得るためには個体より集団での協力が不可欠であり、集団であることの不利益と比べて協力による利益が勝る場合に問題なく機能します。
しかしこのバランスが崩れれば反乱が起き、悪意に -
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地球の生態系の主は食物連鎖というヒト目線で優位に立つ哺乳類、ことに攻撃性と可塑性で他の哺乳類を圧倒したヒトではなく、ヒトに知られる100万種どころか「推定数百万以上未発見」というほど超多様なニッチで棲み分けている昆虫!と異星からの訪問者は見るかもしれない。ヒトが最長数百年の異常繁殖の時機にたまたま到来したとしても。ヒトは100年ほど前までは地球全体の有機←→無機循環にいくらか関与して肉食獣の間引きなどで貢献していたが。何億年蓄えられた化石燃料(石炭も石油も天然ガスも太古の生物由来)を使いまくり森林を消滅させ砂漠を毎年百千平方キロも拡大させている。さらに存在しなかった有機化学物質を安易に撒布し
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地球46億年を1日とすると、二時間半で生命が出現、カンブリア爆発は午前5時、昆虫の原型である節足動物の陸上進出は午後10時。石炭紀は昆虫がセルロースを消化できるよう進化したことで終わった。大量に卵を産み世代交代が早い昆虫は進化が速い。植物とあいまって細分化多様化し環境を安定させる/ラスト数秒に出現した人類は文明を持って0.1秒、ミリ秒で化石燃料を用い自然環境をせっせと破壊し生物とくに昆虫の種の大絶滅させている/Apesの狡知は歯止め無い同種殺しも招くので種の安定的生存に有利か疑問である、他の地球型惑星に多細胞生物が生まれ繁栄しているなら昆虫の可能性は高いと
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鳥たちよりももっと静かにひっそりと姿を消していってる昆虫達
そして困ったことに昆虫の世界はあまりに広くて、とてつもなく深いので人間の頭では理解するには複雑すぎる
昆虫の話題になると『その虫がなんの役に立つの?、虫なんか嫌い』と言われることが多いが(身内にも虫嫌い多数…)、本書にもあったように本来そこにいるのに理由や役割など必要ない。そしてたぶん仮に役割があったとしてもこういうことを言う人に理解などできない
北欧やEU諸国など自国の農薬規制には乗り出しているのに、それを生産し続け他国に輸出し続けている超絶ダブルスタンダードや日本をはじめ農薬の検査はしているがその検査の仕方があたまりにも自然の状態 -
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まず、読み始めて最初に思ったのは、日本語のタイトルがミスリードかもしれない、ということ。『「協力」の生命全史」』とあるから、社会学や人類学のような視点かと思うと、筆者の専門は進化論や行動学のような生物学寄り。(「生命全史」という箇所からそれを読み取らないといけなかったかも。)
とはいえ、第4部などで社会学や人類学の側面からの記述がされている。
筆者の書き口は学術的な色を強く感じた。研究の設計からそこから分かった関係、しかし、それは相関関係であって、因果関係ではない。など、安易に断定しない点でとても信頼できる。
その一方で、文章がどうしても冗長的になってしまうので、少しメッセージが受け止めに -
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前半退屈すぎて読むのやめるところだった。特にP = F / Aという圧力の法則をもちだして、「モグラの体は見事に地中生活に適応している!動物の体の構造は物理法則に支配される!」みたいな話。P = F / Aが関係するのどこやねんと。爪のことを言ってるのか?結論ありきで物理の話をねじ込んでるようにしか見えない。
そもそも地中を掘る哺乳類がどれだけいるか知ってるのだろうか。ガチでそういう話するなら、ハダカデバネズミやミーアキャットやプレーリードッグやウォンバットやカモノハシやツチブタの体を比較して、「彼らがすむ土はこういう性質だから掘るのにこういう手のかたちが適していて…」的な話までもっていってほ -
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あとがきが染みる。生物の多様性現象に目を向けず、地球外生命探査を優先する人類とは何なのか。まずはこの地球の昆虫を驚きの目で見つめようじゃないか、と。人間中心生命史観を覆す昆虫生命史観は傾聴に値する。
外骨格、小さな体、翅、変態のすごさ。
・殺虫剤への耐性を発達させた昆虫は数百種類にも及ぶが、20世紀を通して人類が特定の昆虫を根絶しようと取り組んだにもかかわらず、絶滅した種は一つもない。
・多くの生物学者は、まず植物が陸に進出しなければ、動物は陸に住めなかっただろうと考えていたが、反論の余地はある。
・陸生の節足動物が植物の上陸より何百万年も前から繁栄し、陸地で生き延びる能力を備えていた。
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「最強」と聞いて読まずにはいられないのが男の性です。
とは言っても、本書は『テラ・フォーマーズ』の「クモイトカイコガの糸は鋼鉄の強度を持つ」のように固有種の能力を解説するものではなく、進化の歴史をたどりながらどうやって昆虫が地球一の多様性を手に入れたかを解説した一冊です。
そういった意味では雑学的な面白さはありませんでしたが、どのような生命であれ、途方もない年月がもたらす進化の過程というのは奇跡のような物語であり、この上なく面白いです。特に昆虫にいたっては始まりが古生代で、哺乳類よりも数億年も昔に陸に上がり、空を飛び、完全変態をしていたのですから。
でもこうした進化の話を読んでいると、き