藤原多伽夫のレビュー一覧
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ビッグバンから138億年を経て、「私」という意識はなぜここに存在するのか。本書はその問いを、物理学から人類学までの広大な知の地図を用いて真剣に問い直す。各章がそれぞれ独立した学問領域を扱いながら、全体として「私」への一本の道筋を描くという構造は、野心的であい、決定論か確率論かという古くて新しい哲学的問いを、現代科学の言語で語り直す試みとして、この一冊は読まれるべき価値がある。
【原題】
THE UNIVERSAL HISTORY OF US : A 13.8 billion year tale from the Big Bang to you
【目次】
はじめに
第1章 科学的に考える
第2章 時間の始まり――物理学の視点
第3章 すべては粒でできている――化学の視点
第4章 私たちのいるところ――地球科学の視点
第5章 命の出現――生命科学の視点
第6章 生命はすべての支配する――進化生物学の視点
第7章 意識の宿る場所――脳科学の視点
第8章 人類はなぜいまのようになったのか――古生物学と人類学の視点
第9章 あなたと私
第10章 なぜ私たちは存在するのか
訳者あとがき -
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ブライアン・ヘアは、イヌとボノボの研究者。学部時代の指導教員はマイケル・トマセロ、大学院はリチャード・ランガム。彼らの直系なのだから、学問的なおもしろさは推して知るべし。大学院の頃、ランガムの指示のもと、ギンギツネの家畜化で有名なシベリアのリュドミラ・トルートの研究施設で3カ月を過ごした。その時のエピソードがおもしろい。
イヌもボノボも、ヒトと同様、強力な「自己家畜化」の形質をもった動物種だ。本書で展開されるのは、ヒトの場合、この自己家畜化によって社会的知能が生み出されたという仮説。ネアンデルタール人が、われわれ現生人類に比べさまざまの点で「家畜化」の程度が少ないという指摘も興味深い。ただ、7章以降は偏見や政治の話題。話がジャンプし過ぎているような印象を受ける。
奥さんのヴァネッサ・ウッズは、ボノボに関する著作もあるジャーナリスト。ブライアンとヴァネッサそれぞれのTEDやYouTubeのトークも参考になる。 -
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ネタバレ進化の本かなと思って読んだけど、徐々に差別や分断の話へと変わっていった。
最後の謝辞に『(二〇一六年の)大統領選の後、第一稿の半分を没にした』とある。政治に疎い私でも前後の文から、トランプ大統領が当選したときの話だと分かった。
人間は『ずっと子供のまま』というのは、何かのテレビで見た気がする。これは『幼いまま』という意味ではなくて『好奇心が強い生き物』という事。
人間は大人になっても好奇心が強い。とはいえ、子供のころよりその好奇心は縮小されているのはひしひし感じる。それでも年を取って好奇心ゼロになる人は少ない気がする。
p190にはアメリカの刑務所制度の問題点が書いてある。実は『ポリコレの正体』の三章のBLM運動の話の中に「BLMは刑務所制度を解体したがっている」という話が出てくる。これも、調べた方がいいかもと思いながら放置していたのだが、答えがこの本にあったと思った。
アメリカの刑務所制度は黒人にとって不利なのである。黒人の犯罪率が高いのは貧困や病気、失業などの環境要因が大きいのだが、それを無視して刑務所に放り込む制度となっている……という事だと思う。詳しくは本を読んでほしい。
疑問が繋がるの良い。このページすごく気持ちよかった。
ラストは、都会に暮らす人口が農村部に暮らす人よりも上回ったとある。農村部よりも都会暮らしの方が社会的地位が上がり、良い教育が受けられるので都会の方がいいとなっているが……そうなると、農村部にある『動物たちと人間社会の境界線』はどうなるのだろうかと思ってしまった。いや。これは日本だけなのかな。海外は土地が広いから棲み分けがしっかりされているのだろうか。
都市計画次第では、他者と接触しない作りになることもあるので、そのような都市よりは誰もが気楽に接触できるよう設計されている都市がいいとなっている。
都市ならばどこでもいいわけでもなさそうだ。
いろんな点に気付かせてくれた本でした。 -
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ヒトが他の人類と違って繁栄できたのは、自己家畜化によって進化した協力的コミュニケーションという友好性を有していたから。一方でこの友好性は他者を非人間化し残虐に扱うことができるという負の側面もある。
協力的コミュニケーションの能力はイヌにはあるがチンパンジーにはない。友好的なキツネだけを交配すると認知能力だけでなく外形にも変化が生じた。脳の小型化や鼻面が短くなったりした。
ヒトには集団内の見知らぬ人という社会的カテゴリーが生まれ、それが人口増加と技術革新を生み出した。
ヒトは他者を非人間化し、残虐になる。非人間化の典型が猿化で、これは日本人、黒人、アイルランド人、ユダヤ人などあらゆる集団があらゆる集団に猿化されてきた。非人間化を抑えるには、教育ではなく接触が重要である。 -
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生物学の視点から“協力”行動についてを人類を含む生物全般から研究している一冊です。
単細胞の集合体である我々自身についての説明から始まり、他者への利他的行動、個体とがん細胞の関係、配偶と育児の仕組み、動物界の協力例、善い協力と悪い協力、評判と見栄の関係…などへ展開していきます。
協力とは個体が生き残る確率を上げるための保険であり、人間の社会生活におけるそれも仕事を軌道に乗せるための保険などとして役立っています。
大きな成果を得るためには個体より集団での協力が不可欠であり、集団であることの不利益と比べて協力による利益が勝る場合に問題なく機能します。
しかしこのバランスが崩れれば反乱が起き、悪意に基づく協力が組まれれば多数の犠牲により少数が成功を掴む結果も有り得るのです。
協力とは道具と同じく扱う者次第で過程と結果が大きく異なる諸刃の剣であることが、様々な例を用いて解説されています。
日頃意識せずに行っている“協力”行動ですが、凄まじい力を持っているのだなと考えさせられました。 -
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地球の生態系の主は食物連鎖というヒト目線で優位に立つ哺乳類、ことに攻撃性と可塑性で他の哺乳類を圧倒したヒトではなく、ヒトに知られる100万種どころか「推定数百万以上未発見」というほど超多様なニッチで棲み分けている昆虫!と異星からの訪問者は見るかもしれない。ヒトが最長数百年の異常繁殖の時機にたまたま到来したとしても。ヒトは100年ほど前までは地球全体の有機←→無機循環にいくらか関与して肉食獣の間引きなどで貢献していたが。何億年蓄えられた化石燃料(石炭も石油も天然ガスも太古の生物由来)を使いまくり森林を消滅させ砂漠を毎年百千平方キロも拡大させている。さらに存在しなかった有機化学物質を安易に撒布して昆虫の微妙なライフサイクルを乱している。
数十年前には車のフロントグラスに付く虫は無数にいた、著者はヒトの棲息地では半減以下と推測する。昆虫の総量も種の数も急激した。民主主義の選挙民は「昆虫が減って何が困るんですか?」の認識、グローバル生態系の一つの歯車を欠くことの影響が計り知れない。殺虫剤の無法図な使用と外来種の侵入で種の大絶滅が起こっており餌が無くなった鳥も激減している -
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地球46億年を1日とすると、二時間半で生命が出現、カンブリア爆発は午前5時、昆虫の原型である節足動物の陸上進出は午後10時。石炭紀は昆虫がセルロースを消化できるよう進化したことで終わった。大量に卵を産み世代交代が早い昆虫は進化が速い。植物とあいまって細分化多様化し環境を安定させる/ラスト数秒に出現した人類は文明を持って0.1秒、ミリ秒で化石燃料を用い自然環境をせっせと破壊し生物とくに昆虫の種の大絶滅させている/Apesの狡知は歯止め無い同種殺しも招くので種の安定的生存に有利か疑問である、他の地球型惑星に多細胞生物が生まれ繁栄しているなら昆虫の可能性は高いと
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鳥たちよりももっと静かにひっそりと姿を消していってる昆虫達
そして困ったことに昆虫の世界はあまりに広くて、とてつもなく深いので人間の頭では理解するには複雑すぎる
昆虫の話題になると『その虫がなんの役に立つの?、虫なんか嫌い』と言われることが多いが(身内にも虫嫌い多数…)、本書にもあったように本来そこにいるのに理由や役割など必要ない。そしてたぶん仮に役割があったとしてもこういうことを言う人に理解などできない
北欧やEU諸国など自国の農薬規制には乗り出しているのに、それを生産し続け他国に輸出し続けている超絶ダブルスタンダードや日本をはじめ農薬の検査はしているがその検査の仕方があたまりにも自然の状態にあっていなくて、検査の意味があってないようなものだったり、驚く事実がたくさんあった
こうしたことはあまり報道もされず、知ろうと思わない限り情報が入ってこない
著書は研究者でバリバリ論文を書いているが、同時に普及することの大切さも痛感していて、本書にも堅苦しいだけでない話がたくさん掲載されている。特に第四章のあるかも知れない未来の世界の描写は秀逸。
また章の終わりごとに『私の好き虫』と題して様々な虫について面白く書かれているのでこれも必読! -
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まず、読み始めて最初に思ったのは、日本語のタイトルがミスリードかもしれない、ということ。『「協力」の生命全史」』とあるから、社会学や人類学のような視点かと思うと、筆者の専門は進化論や行動学のような生物学寄り。(「生命全史」という箇所からそれを読み取らないといけなかったかも。)
とはいえ、第4部などで社会学や人類学の側面からの記述がされている。
筆者の書き口は学術的な色を強く感じた。研究の設計からそこから分かった関係、しかし、それは相関関係であって、因果関係ではない。など、安易に断定しない点でとても信頼できる。
その一方で、文章がどうしても冗長的になってしまうので、少しメッセージが受け止めにくいこともある。
総じて、「協力」ということを進化論的・遺伝学的に迫る良い本だった。これが気に入れば、ルトガー・ブレグマン氏の『Humankind 希望の歴史』がより多面的に「協力」を論じているように思うので、おすすめ。 -
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前半退屈すぎて読むのやめるところだった。特にP = F / Aという圧力の法則をもちだして、「モグラの体は見事に地中生活に適応している!動物の体の構造は物理法則に支配される!」みたいな話。P = F / Aが関係するのどこやねんと。爪のことを言ってるのか?結論ありきで物理の話をねじ込んでるようにしか見えない。
そもそも地中を掘る哺乳類がどれだけいるか知ってるのだろうか。ガチでそういう話するなら、ハダカデバネズミやミーアキャットやプレーリードッグやウォンバットやカモノハシやツチブタの体を比較して、「彼らがすむ土はこういう性質だから掘るのにこういう手のかたちが適していて…」的な話までもっていってほしい。
著者はモグラにそっくりな動物として有袋類モグラをあげていたが、この2種は手の形状が全然違う。P = F / Aへの影響甚大です。
ところが中盤一変しておもしろくなる。分子・原子レベルでの生物にかかわる物理法則の講義がはじまる。おそらくこちらが著者の真骨頂なのではないか。ていねいな解説でわたしでもかなりイメージができた。生物をミクロの観点で見直すことでこの世界の神秘さをあらためて感じた。はからずも宇宙にも少し詳しくなる。
最終的に読んでおいてよかった一冊となった。 -
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<目次>
第1部 なぜ昆虫が大事なのか
第1章 昆虫についての短い歴史
第2章 昆虫の重要性
第3章 昆虫の不思議
第2部 昆虫の減少
第4章 データで見る昆虫減少
第5章 移り変わる基準
第3部 昆虫が減少した原因
第6章 すみかの喪失
第7章 汚染された土地
第8章 除草
第9章 緑の砂漠
第10章 パンドラの箱
第11章 迫りくる嵐
第12章 光り輝く地球
第13章 外来種
第14章 「既知の未知」と「未知の未知」
第15章 いくつもの原因
第4部 私たちはどこへ向かうのか?
第16章 ある未来の光景
第5部 私たちにできること
第17章 関心を高める
第18章 都市に緑を
第19章 農業の未来
第20章 あらゆる場所に自然を
第21章 みんなで行動する
<内容>
イギリスの昆虫学者の地球への警鐘の本。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の現代版。確かにいつの間にか昆虫が減っている気がする。蚊にせよ蠅にせよ、蜂などはもっと減っている。著者は「マルハナバチ」の専門家。昆虫の話が多いが、植物から農薬、政治にまで多彩に分析している。第3部では、現状が進んだときの「ディストピア」をしっかりと書いている。昆虫は自分も多くは、イヤなものだが、食物連鎖や土壌、植物の育成に欠かせない存在。しかし研究者が少なく、わかっている種が少ないらしい。そこに付け込んで、農薬などの大企業は批判してくる。おそらくそれは、地球の破滅を早めるだけなのだろう。足元しか見ていない政治家は、これを解決できるはずがない。こうした本(ちょっと厚いが)、しっかりと読んで、知識を身につけて、市民運動から頑張っていかねばならないだろう。昆虫だけではなく、植物や動物、農業や環境問題、すべてが連鎖しているのだから。