シュレーディンガーのレビュー一覧

  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    名著です。分かりやすく読めてホッとした。とにかくブラウン運動や量子力学の話は身近にあるものに例えると理解力が追いついていく。化石の時代の自分からしたら精子の話とか初めて知った訳だけど、今でもこんなに細かく説明される事はないと思う。主に植物の受精から育成にあたるまでの過程の話も抵抗なく読めた。X線が及ぼす突然変異の話も初耳だったけど、X線自体があまり体に良くないのは聞いていてそれが細胞レベルで問題なのも知れて良かった。男性と女性の染色体の仕組み(X、Y)も微妙に触れてはいたけど詳しい事は書かれてなくて少し残念。これは本当に名著!

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    2025年12月07日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    内容は難しいが、分子生物学誕生の立役者となったシュレディンガーの名著に触れたことは純粋に嬉しい。ワトソンかクリックだったか、まさに本著を読んだことがきっかけで遺伝学に足を運んだというエピソードはうろ覚えしてる。
    原子という生命体にとっての最小スケールの要素、そしてその原子が集まることで秩序を生み出し、生命を維持していく、その普通ゆえの偉大さを再認識。
    物理学的な視点から生物学へ接近していくこの展開の仕方が、当時の時代的潮流に新鮮さを与えたのかとつらつら思ったり。

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    2024年08月24日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    とにかく驚きなのは、DNA発見前に、物理的考察によってそのような構造の必要性を予言してたこと。なんでか高名な物理学者は晩年生物に興味を持ち始めるけど、シュレーディンガーはその中でも珍しく上手く行った例だと思う。

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    2023年02月25日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    ネタバレ

    量子力学を創造し、原子物理学の基礎を築いたシュレーディンガーが追及した生命の本質がまとめられた名著。

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    2021年09月20日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    【きまじめな物理学者の探求】
    本書が最初に出版されたのは1944年,まだ量子力学が疑いもない第一原理と認識されて間もない頃のことだ.ちなみにDNAの二重螺旋構造が提唱されたのはその10年後になる.

    まだ生物が神秘的なベールに包まれていた時代だったとは思えないほど,恐れず物理学の立場に立って,現代の描像にも通じる議論が展開されている事には驚かずにはいられない.

    【この著書の意義は何処に】
    結論を一口に言ってしまうと,「生命はたんぱく質という頑丈な歯車によって動く,機械仕掛けである.それは複雑だけれど,物理法則と矛盾しない理解は可能になるはずだ」これだけ聞くと何と平凡な結論か!

    経験的に「生物というものが居てもまぁ不思議はない」と捉えるごく普通の人にとっては,こんな結論を引き出すのに文庫本1冊をあてがう必要なんてないのかもしれない.

    むしろこの本は,Schrodinger の言葉を借りれば「きまじめな物理学の徒」に対してこそ意義を持つと思う.「きまじめな物理学の徒」とは,量子力学を唯一無二の第1原理と信じて疑わず,しかも観測される全ての物理現象は,大数の法則により初めて秩序を獲得し,法則が見出されるという事実を或る程度理解している,そんな人々のことだ.

    そんな「きまじめ屋」の前に生物なるものがひょっこり現れれば,彼の頭は疑問で溢れかえることになる事は想像に難くない.

    生細胞を構成するたんぱく質の数は決して巨視的とは言えない.であるにも関わらず,それらが高度に分化し,秩序だった働きをするのはどうしてか.

    遺伝子という疑いも無く微視的な代物が,これほど安定に受け継がれてゆくのはどうしてか.

    生命に備わる,エントロピーを捨てる能力は,物理の視点からどう解釈されるべきか.

    ...などなど,上に挙げたどの疑問も,「物理学は全ての自然現象を線で結ばなきゃいけない」という立場からは是非とも答えたいものだ.

    慎ましやかな物理学の立場から,それらやや卑怯な質問に対して真剣に骨折って議論したのが本書といえる.
    思い切ってかいつまむ

    この本の中心的興味は,
    (1) 生命そのものの安定性は物理学で説明できるのか
    (2) 秩序を保ち続ける生命活動は,何らかの物理法則に従うのか
    の2つと言える.そして Schrodinger は(1)には yes と,そして (2) には maybe と答えたはずだ.

    (1) に関しては,量子力学から導かれる分子の安定性こそが,生命を構成するたんぱく質の安定性に他ならない.遺伝や突然変異も,分子のエネルギー構造から説明される.
    現代では「たんぱく質」が,より正確に DNA に置き換わるだけで,この描像は実に的を射ている.

    そして(2) こそが,現在でも研究が続いているわけで,「未解決難問」のカテゴリーに属する.
    僕の理解では,たぶん Schrodinger の考えは,
    「生命活動は,量子力学にしたがって行われるに違いないが,それは決して統計によって秩序を得るものではない.
    それゆえ,統計に頼らない緻密な理論が必要であり,現在の物理学はこの問題を扱うことが出来ない」
    ということだと思う.

    そもそも量子力学は,現在完成したといっても巨視的な系を十分満足に説明できるわけではない.
    物性に限っても,強磁性や超伝導のメカニズムが共通認識になってきたのは最近の話だ.
    しかもそれは巨視的な,「統計性」が前程にある系でしかない.

    対して生命現象においては,一つ一つの分子がそれぞれに重要な役割を演じる歯車なのだから,「統計性」によって導かれる物理法則では歯が立たないわけだ.
    たとえばエントロピーを減少させるという生命の驚異的メカニズムは,(生命は孤立系でないので熱力学的に矛盾は無いが!)あきらかに構成分子一つ一つの動力学によるものだ.

    これは量子力学の限界というより,物理学者が地団駄している,と言った方が正しい気がする. Schrodinger も「我々の美しい統計理論は,(生命現象という)当面の問題を内包していないのです」と悔しそうに述べている.

    でもだからこそ,生命は未知であると同時に魅力的な研究対象でありつづけるんだろう.
    最近では,生物を複雑系の立場から研究する流れが強い.生命現象に共通な構造を現象論的に定式化しようという試みなんだと僕は思っている.
    きっと,そういう現象論を物理学の第1原理でつなぎ合わせることが出来れば,Schrodinger への最上のはなむけになるんだろう.

    (2009年ごろの自分の読書ログからの転載です。)

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    2018年01月31日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    858円

    183P

    やや難

    再読
    2026/08/18

    シュレーディンガー
    エルヴィン・ルードルフ・ヨーゼフ・アレクサンダー・シュレーディンガー(ドイツ語: Erwin Rudolf Josef Alexander Schrödinger [ˈɛɐ̯viːn ˈʃʁøːdɪŋɐ]、1887年8月12日 - 1961年1月4日)は、オーストリア出身の理論物理学者。シュレディンガーとも表記される。1926年に波動形式の量子力学である「波動力学」を提唱。量子力学の基本方程式であるシュレーディンガー方程式や、1935年にはシュレーディンガーの猫を提唱するなど、量子力学の発展を築き上げたことで名高い[3]。1933年にイギリスの理論物理学者ポール・ディラックと共に「新形式の原子理論の発見」の業績によりノーベル物理学賞を受賞した[1][3]。1937年にはマックス・プランク・メダルが授与された[2]。1983年から1997年まで発行されていた1000オーストリア・シリング紙幣に肖像が使用されていた。

    「この小著は、一理論物理学者が約四〇〇人の聴衆に対して行った一連の公開講演をもとにしたものです。私は聴衆に向かってまず最初に、この題目の問題は難しい問題であって、物理学者の使う武器として最も恐れられている数学による推理はほとんど用いないが、本講演は決して大衆向きということはできないと警告しましたが、聴衆の数はたいして減りはしませんでした。数学を使わなかった理由は、数学なしで説明できるほど問題が簡単だからではなくて、むしろあまりに複雑で、十分数学を使えなかったからです。この講演が少なくともうわべは通俗的にみえたもう一つの理由は、講演者の意図が、生物学と物理学との中間で宙に迷っている基礎的な観念を、物理学者と生物学者との双方に対して明らかにすることにあったからです。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「もしこの答が、従来なしとげられなかったことを、将来なしとげることが可能であろうという希望を改めて述べるだけの意味しかもっていないとするなら、これは実につまらない意見でしょう。ところが、この答の意味するところは、もっとずっと積極的なものであって、このようなことがなぜ今日に至るまで不可能であったかということが、十分に説明されるという意味なのです。  今日では、生物学者たち、それも主に遺伝学者たちの、過去三、四〇年間の巧妙な研究のおかげで、生物体の実際の物質的構造と、その働きとについて、十分な知識が得られて、生きている生物体の内部で、時間的・空間的に起こっていることを今日の物理学と化学とがどうしても説明できなかったのは、どういう点に関してであり、それはなぜであったかを、はっきりいうことができるようになったのです。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「生物体の最も肝要な部分にある原子の配列や、その間の相互作用は、物理学者や化学者が従来実験的・理論的研究の対象としてきたあらゆる原子配列とは根本的に異なったものです。しかし、私がいま「根本的」と呼んだ差異は、物理学と化学との法則はすべて統計的な性格をもつものであるということをすっかり頭にしみ込ませている物理学者以外の人には、たいした差異とは思われないようなたぐいのものなのです。 * この論点は、少しく一般的すぎるようにみえるかもしれません。詳しい議論は本書の終りの方、 67、 68節に譲ります。  というのは、生きている生物体の肝要な部分の構造が、われわれ物理学者や化学者が今までに実験室で取り扱ったり、机に向かい頭の中で取り扱ってきたどんな物質の構造とも、まったく異なっているというのは、統計的な観点に関してのことだからです。われわれが従来の研究で発見した法則や規則性が、たまたま、それらの法則や規則性の土台をなす構造をもっていない体系の行動に、そっくりそのままあてはまるなどということは、ほとんど考えられないことです。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「4  原子はなぜそんなに小さいのか?  この「きまじめな物理学者の考え方」を進めてゆくうまい方法が一つあります。それは、風変りな、人をばかにしたような疑問、「原子はなぜそんなに小さいのか?」から出発することです。そもそも、原子というものは実際まったく小さなものです。われわれが日常生活で取り扱うものは、どんな小さな一片の物質でも、とほうもなく多数の原子を含んでいます。このことを人々にピンとわからせるために、いろいろな説明の仕方が今までに工夫されてきましたが、ケルヴィン の使った次のようなたとえほど印象的なものはないでしょう。いま仮に、コップ一杯の水の分子にすべて目印をつけることができたとします。次にこのコップの中の水を海に注ぎ、海を十分にかきまわして、この目印のついた分子が七つの海にくまなく一様にゆきわたるようにしたとします。もし、そこで海の中のお好みの場所から水をコップ一杯 んだとすると、その中には目印をつけた分子が約一〇〇個みつかるはずです。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「6  物理法則は原子に関する統計に基づくものであり、近似的なものにすぎない  さてそこで、あまり多数でない原子だけから成り、わずか一個ないし数個の原子の衝突に対してさえも敏感である生物体の場合には、これらのことすべてがみたされえないのは一体なぜでしょうか?  それは、すでによく知られているように、原子はすべて、絶えずまったく無秩序な熱運動をしており、この運動が、いわば原子自身が秩序正しく整然と行動することを妨げ、少数個の原子間に起こる事象が何らかの判然と認められうる法則に従って行われることを許さないからなのです。莫大な数の原子が互いに一緒になって行動する場合にはじめて、統計的な法則が生まれて、これらの原子「集団」の行動を支配するようになり、その法則の精度は関係する原子の数が増せば増すほど増大します。事象が真に秩序正しい姿を示すようになるのは、実はこのようなふうにして起こるのです。生物の生活において重要な役割を演ずることの知られている物理的・化学的法則は、すべてこのような統計的な性質のものなのです。そうでないようなどんな法則性や秩序性を考えても、それらはすべて原子の絶えまない熱運動によってかき乱されて無効になってしまうのです。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「このことを、二、三の例によって説明しましょう。次の例は何千というものの中から半ばでたらめに拾い上げたもので、おそらくこのような事情をはじめて学ぶ諸君に訴えるには最も適した例ではないでしょう。が、この事情が現代の物理学および化学において基本的なものであることは、たとえば、生物学において生物体が細胞から成り立っているという事実や、天文学におけるニュートンの法則、あるいは数学における整数列 ​ 1, ​ ​ 2, ​ ​ 3, ​ ​ 4, ​ ​ 5, ​とさえくらべられるものです。まったくの入門者では、以下の数ページからこの問題を十分理解し、その意味を味わうことは無理でしょう。この問題はルドウィヒ・ボルツマンとウィラード・ギブズの輝かしい名に結びつけられ、教科書で「統計熱力学」の名の下に取り扱われているものであります。  細長い石英の管に酸素ガスをみたして、それを磁場の中に入れますと、ガスが磁化されます。この磁化は、酸素の分子が小さな磁石であって羅針盤の針のように磁場の方向に平行に向きを転ずるという事実に基づくものです。ただし、分子磁石が実際にことごとく磁場に平行に向きを えるのだと考えてはなりません。なぜなら磁場の強さを二倍にすれば、その酸素ガス全体の磁化の強さは二倍になるのであって、この比例関係は磁場の強さがきわめて高くなるまで保たれ、磁化の強さは外から加えられる磁場の強さに比例して増加するからです。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「真に驚嘆すべき事情をもう一度くっきり描き出してみましょう。ハプスブルク王朝の中のいく人かは特殊な下唇の奇形(ハプスブルク唇)をもっています。その遺伝は、注意深く研究されて、ウィーンの帝国学士院から王家の賛同を得て歴史的な肖像を完全に収めて出版されています。この特徴は正常な形の唇に対して純粋にメンデル性の対立形質であることがわかりました。一六世紀の家族の一員の肖像と、一九世紀に生きていたその子孫の肖像とに注目いたしますと、その異常な特徴をひき起こした遺伝子の物質的構造は、何世紀も通じて世代から世代へと運ばれ、その間に行われたあまり回数の多くない細胞分裂のどの一つにおいても、忠実に複製されたと仮定しても間違いはないといえましょう。そればかりでなく、その役目をになっている遺伝子構造に含まれている原子の数は、X線によって検べられた場合と同じ程度の大きさであるように思われます。この遺伝子はその期間全体を通じて、華氏九八度付近の温度に保たれていたのです。この遺伝子が何世紀もの間、秩序を乱そうとする熱運動の傾向にかき乱されることなく持続したことをどう解釈したらよいでしょうか?」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著


    「生命というものだけにある特徴は何でしょうか?  一塊の物質はどういうときに生きているといわれるのでしょうか?  生きているときには、動くとか周囲の環境と物質を交換するとか等々「何かすること」を続けており、しかもそれは生命をもっていない一塊の物質が同じような条件の下で「運動を続ける」だろうと期待される期間よりもはるかに長い期間にわたって続けられるのです。生きていない一つの物質系が外界から隔離されるかまたは一様な環境の中におかれるときには、普通はすべての運動がいろいろな種類の摩擦のためにはなはだ急速に止んで静止状態になり、電位差や化学ポテンシャルの差は均されて一様になり、化合物をつくる傾向のあるものは化合物になり、温度は熱伝導により一様になります。そのあげくには系全体が衰えきって、自力では動けない死んだ物質の塊になります。目に見える現象は何一つ起こらない或る永久に続く状態に到達するわけです。物理学者はこれを熱力学的平衡状態あるいは「エントロピー最大」の状態と呼んでいます。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「それでは、われわれの食物の中に含まれていて、われわれの生命を維持する貴重な或るものとは一体何でしょうか?  それに答えるのは容易です。あらゆる過程、事象、出来事 何といってもかまいませんが、ひっくるめていえば自然界で進行しているありとあらゆることは、世界の中のそれが進行している部分のエントロピーが増大していることを意味しています。したがって生きている生物体は絶えずそのエントロピーを増大しています。 あるいは正の量のエントロピーをつくり出しているともいえます そしてそのようにして、死の状態を意味するエントロピー最大という危険な状態に近づいてゆく傾向があります。生物がそのような状態にならないようにする、すなわち生きているための唯一の方法は、周囲の環境から負エントロピーを絶えずとり入れることです。 後ですぐわかるように、この負エントロピーというものは頗る実際的なものです。生物体が生きるために食べるのは負エントロピーなのです。このことをもう少し逆説らしくなくいうならば、物質代謝の本質は、生物体が生きているときにはどうしてもつくり出さざるをえないエントロピーを全部うまい具合に外へ棄てるということにあります。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「太陽系の秩序、すなわち諸惑星の運動は、ほとんどはてしのない長い時間にわたって維持されています。今の瞬間の星座はピラミッドの時代の任意の特定の瞬間における星座と直接関連しています。今日の星座から過去にさかのぼってピラミッドの時代の星座を追跡して求めることもできるし、またその逆も可能です。有史時代の日食が計算され、それは歴史に記されている記録とはなはだよく一致することが見出されましたし、また歴史上承認されていた年代を訂正するのに役立った場合すらあります。これらの計算は何ら統計を含まず、専らニュートンの万有引力の法則に基づいているのです。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「右のような事情にもかかわらず、「物理的な時計仕掛け」が外見上きわめて顕著な「秩序から秩序へ」の特徴を現わすという事実に変わりはありません。そして物理学者が生物の世界でそういうものにぶつかった時びっくりしたというわけです。この二つの場合はつきつめてみれば何か共通なものをもっているように思われます。何がその共通のものであるかを知り、生物体の場合を結局新奇で前例のないものにしている著しい違いが何であるかを知ることが残されている問題です。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著


    「私は、本書の課題の純粋に科学的な面を、何らの主観を交えずありのままに解き明かそうとして真剣に骨折ってきました。その代りここでは、この問題の哲学的な内容に対する私自身の見解をつけ加えたいと思いますが、これはどうしても主観的たるを免れないことを御諒承下さるよう希望します。  これまでのページで述べてきた事実を基にして考えれば、生きている生物の身体の中で行われる時間・空間的現象は、その生物の心の働きや自覚的な活動に対応するものであっても、(それらの現象の複雑な組立てと、物理化学によるその統計的説明として認められていることがらとを併せ考えると)厳密に決定論的といえないまでも、とにかく統計的 =決定論的であります。物理学者に対して強調したいのですが、私の見解では、或る一派の人々の懐いている意見とは反対に、これらの現象の中では量子論的な不確定性は生物学的にみて重要な役割は何も演じておりません。ただし例外として、減数分裂や自然発生的および X線により誘起される突然変異などのような現象においては、おそらくその純粋に偶然的な特性を強化することにより生物学的に重要な役割を果しております。とにかくこの点は明らかであり、十分に認められています。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「 このような洞察そのものは決して新しいものではありません。私の知る限り最も古い記録は約二五〇〇年あるいはもっと以前にさかのぼります。古代インド哲学の聖典ウパニシャッドのつくられた時代の初期から、「人と天とは一致する」(アートマン =ブラーフマン。人間の自我は普遍的な全宇宙を包括する永遠性それ自体に等しい)という認識がインドの哲学思想において、神を冒瀆するものどころか森羅万象の最も深い洞察の真髄であると考えられていました。人間が言葉を使うようになって以来、ヴェーダンタ哲学の学派に属するあらゆる人びとの精進は、実にあらゆる思想の中で最も偉大なこの思想を心中に会得することにありました。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「もしこの問題を深く立ち入って分析するなら、それは個々の単独なデータ(経験と記憶)を単に寄せ集めたものにほんのちょっと毛のはえたもの、すなわち経験や記憶をその上に集録した画布のようなものだということに気づくでしょう。そして、頭の中でよく考えてみれば、「私」という言葉で呼んでいるものの本当の内容は、それらの経験や記憶を集めて絵を描く土台の生地だということがわかるでしょう。たとえば皆さんが遠い国へやって来て、友人の誰一人にも会えなくなり、ほとんど昔の友達を忘れてしまったと考えてごらんなさい。そこで新しい友達をつくってそれらの人びとと生活をともにし、かつて昔の友達と交わっていたときと同様の深い交わりを結ぶとします。この新しい生活を営んでいるときには、皆さんがなおも昔の生活を思い出すということは、しだいしだいに重要さを失ってゆくことでしょう。「かつて私であった青年」のことを第三者のこととして物語るようになり、事実、皆さんがいま読んでいる小説の主人公のほうが、おそらくいっそう親近感がもて、いっそう生き生きしていてよく知っている人物のように感じられるでしょう。にもかかわらず昔と今との間には途切れ目はなく、一度死んだわけではありません。そしてたとえ熟練した催眠術師が皆さんの昔の追憶をうまくすっかり根こそぎに消し去ってしまったとしても、催眠術師が皆さんを殺してしまったとは思われないでしょう。如何なる場合でも、自分自身の存在が失われてしまったことを嘆くことはありえません。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「本書のエピローグの中程に「[ショーペンハウエルなどのような思想家ではない]普通の人の場合でも、本当の恋人同士が互いに相手の眼をじっと見つめている時、二人の思想と二人の歓喜とは文字通り一つとなり ​ 」 ​という言葉がある。私がこの原書を翻訳したのは二五歳の時で、まだいわゆる童貞だった時だが、この言葉は当時の私の心に深い共感的感銘を刻印した。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

    「一つは、麻薬や覚醒剤や幻覚剤が精神状態にもたらす薬理的な効果の研究からの光だ。それによれば、オルガスムの忘我感は幻覚剤(サイケデリックス、最も有名なのは LSD。覚醒剤とは違う)がもたらす効果と質的に似ているという。ただし、そんな科学研究を待たずにも既にかなり多くの人々が自分の体験から知っているように、その忘我感は、大抵の仕事や遊びに没頭し夢中になっている場合の意識状態よりいっそう没我的であり、たとえばジェットコースターで得られる眩暈(めまい感)と表裏をなすエクスタシーに近いらしい。ともあれ、以上のことは脳科学のうちでは神経伝達物質やその阻害剤や助長剤の効果に関する研究からの光だ。」

    —『生命とは何か-物理的にみた生細胞 (岩波文庫)』シュレーディンガー, 岡 小天, 等著

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    2026年08月18日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    ●2026年6月7日、Yahooフリマで見つけた。600円→半額クーポン使用で300円で買える。

    →20年近く前の本なのに2026年の今でも学生?っぽい人が参考にしてるのはすごいな。

    ●2026年8月2日、ジェミニと話しててすすめられた本のひとつ。Yahooフリマのクーポンが明日までなので、数ヶ月前?にジェミニと相談して作成した、13冊+1冊の読書スケジュールにプラスするなら?と質問して返ってきたのが以下。

    ジェミニ:
    「クーポン消化に最適な「1冊完結」の新規候補

    1.​『生命とは何か』(シュレディンガー/岩波文庫)
    ​論点: 物理学の巨頭がネガティブ・エントロピー(負のエントロピー)の概念を用いて生命現象を解き明かした、分子生物学の起点となる名著。


    2.​『自己組織化とは何か』(都甲潔 ほか/講談社ブルーバックス)
    ​論点: カオスや複雑系の中から、なぜ自律的な秩序や構造が立ち現れるのかを数理・物理モデルで明かすシステム論の重要書。


    3.​『生命をシステムとしてとらえる』(フリチョフ・カプラ)
    ​論点: 物理・生物・社会システムを貫くパターンやネットワーク構造を統合的に論じたシステム思考の骨太テキスト。」

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    2026年06月07日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    高3の友達の小論文、大1の生命科学の決定論に関するレポート、24歳くらいのときなんとなく再読、に続いて4回目くらいに久しぶりに読んだ。高3の小論文書いた友達と会えるとのことでエモ効率で。


    「ちょっと信じられないほどの少数個の原子から成る集団、あまり少数なので、厳密な統計的法則などはとても示しそうもない原子団が、生きている生物体の中できわめて秩序のある規則正しい現象を支配するような役割を、確かに演じているのです。」P41

    主題は完全にこれ。遺伝子が統計物理学の範囲を超え出てないかみたいな議論から、量子力学と生命との関連について話が進んでいく。
    状態の不連続性(量子飛躍)、物質代謝の意味(負のエントロピーを取り入れる)など、かなり面白い概念が沢山。


    でもこれ読む度に、決定論と自由意志についてとか、結局量子力学ってなんなんだっけってことが分からなくなってしまう。
    量子力学的に、1個の原子とかに対して運動が確率的にしか定まらないから決定論は合ってなくて、だから天下り的に自由意志は存在するでいいのかなー。
    哲学と物理学の間で面白い議論だとは思うんだけど、いかんせん両方への理解が乏しいせいで自分の中で何も昇華できないんだよなー。

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    2026年03月12日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

    Posted by ブクログ

    本書を引用して主張を述べている別の本経由でこの本を知った。この本を読みながら、昔の本を読む意義とは何か、教科書には載っていないようなこと(今の知見では誤っているとされていたり重要性の低いと見られているもの)を今知ることが何に繋がるのだろうと考えた。まだ確信のある答えを見つけることはできていないが、現代ではあまり触れられていないからこそ、大多数の人とは違った発想力を身につけられることなのかなぁと思う。歴史上でルネサンスが起きたように、過去の知見を掘り起こすことは決して無価値なものではない。現代で信仰されている画一的な考え方だけを支持することは、学問の発展を妨げる因子になるのかなぁと思った。

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    2026年03月02日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    量子力学から生命を論じた本書。
    ここでその内容などを記すと誤解を生みそうなので内容について興味がある方は他の感想を読むことをおすすめする。


    身体について何か新しいことを学んだとき、自分の身体が自分のものでないような気がすることがある。
    体内では電気信号で情報を伝達しており、今、手を動かしていることや、何かを考えていることはなんなのか。「私」というものはなんなのか、、

    著者はエピローグで、「私」とは「経験や記憶を集めて絵を描く土台の生地だ」と言っている。
    経験や記憶は日々書き換えられ、その絵は連続的に変化している。だからこそ多くの経験をした人は厚みのある人間になるのかもしれない。

    また、生地上の絵は10年前とは全く違うものになっているかもしれないが、それが今の「私」であり、「私」というものは如何なる場合でも無くなることはない。人はそんなに簡単には変わらないし、表面を剥がせば汚い部分も綺麗な部分も見えてくる。

    結局、私とはなんなのかという答えは分からないし、分かったところで日々変わるものだから分からなくていいのかもしれない。

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    2025年05月13日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    分子生物学の入り口本。
    人間など生物体が崩壊しないのは負エントロピーの摂取によるものという概念が面白い
    福岡さんの動的平衡にも似た内容がある

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    2025年04月19日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

    Posted by ブクログ

     原書は1944年に出版されたそうだが、現代の科学、特に現在の大学教養レベルまでで学習する基本的かつ古典的な科学で分子生物学が簡潔に説明されており、一気に読むことができた。
     生物分野は遺伝の話が中心。DNA発見以前の本であり、当然のことである。しかし、この理論的背景を分子生物学が確立するはるか前に、波動物理と熱力学で物理的化学的に美しく説明できているのはさすがシュレディンガーである。

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    2024年08月21日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

    Posted by ブクログ

    物理についても進化についても、今までのイメージが少し違っていたことがわかって面白かった。原子が無秩序に動くこととか、突然変異は「飛び離れた」変化であることとか。
    後、「オスの蜂はでっかい精子」というのが面白かった笑

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    2023年08月15日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

    Posted by ブクログ

    ⑩
    開始:2023/3/6
    終了:2023/3/10

    感想
    生命は神秘に属するか。この論争は一生決着することはないかと思われる。人間の自由意志も同様。大数の法則と梵我一如。西洋と東洋。

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    2023年03月10日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

    Posted by ブクログ

    生命(正確には遺伝子と呼ぶべきか)の秩序の驚くべき永続性はまさに量子力学から来るものであるという、我々が実感できる生命の神秘を(ミクロな)物理学の理論によって説明する一連の流れに大いに興奮を覚えた。
    著者は必ずしも物理学に明るくない一般読者を想定していたようだが、やはりこの興奮は実際に物理学を学んでこそではないだろうかと思う。
    そうは言っても生命の神秘と聞いて心躍る人間は誰しも是非一度読んでほしいと感じる本だった。

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    2022年06月15日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

    Posted by ブクログ

    物理学者の彼が、なるべく専門用語に走らず一般向けに書こうとしたことが伺えて、人柄に親しみを持った。とはいえ数式が出てくる箇所はさっぱりわからない。
    でも本を通して、生命が無秩序に向かう大きな流れに抗いながら生命として存在していること、いずれは必ず永久に何も動かない状態(死)に至るということを想像した。

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    2022年05月22日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

    Posted by ブクログ

    生物学の知識皆無だったので、少し勉強しながら読みました。
    生命活動、心の働きさえも、「原子の運動」であり、自然法則に従って成り立つものだということを改めて認識させられます。
    1944当時の物理学者の視点、生化学は未発達であり、未知のものに対する戸惑いなど、なまなましさが感じられました。
    議論の進め方が丁寧、こういうのを論理的というんですね。
    第六章の負エントロピーの話は物理学者の指摘で、なかなかおもしろい。
    再読します

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    2021年06月15日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

    Posted by ブクログ

    シュレーディンガーの波動方程式で量子力学の礎を築いた物理学の泰斗が生命の仕組みについて考察した古典的名著です。

    生命の遺伝の仕組みや生命活動について、真摯で誠実な筆致で論じており、久々にじっくりと味わいながら読み進むことが出来ました。

    古典を読むと、本当にその著者と書斎で対話をしているような気分になれます。

    自然界の物理法則が、無秩序で拡散する傾向を持つ中で
    非周期性の結晶である遺伝子が生命の情報を堅牢に守り伝え進化させる。

    また、生命は周りの秩序(非エントロピー)を取り込んで崩壊して無秩序になるのを防いでいる、自然界の物理法則とは異質の存在。

    物理学というロジカルな世界を極めた著者が、生命やこの世界あり方に哲学的に思索を広げられていることに、心を打たれました。

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    2019年11月04日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

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    秩序を「吸う」ことでエントロピー的死を免れようとする、というのが生命であるというシュレディンガーの言説は非常に興味深い。MITメディアラボのゼザール・イダルゴ教授が同じようにエントロピーの概念を用いて「情報の秩序」について語っていたWhy Information Growsとの類似性を感じた。

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    2019年07月01日
  • 生命とは何か 物理的にみた生細胞

    Posted by ブクログ

    最後のエピローグではやや稚拙な論を立てているが、まぁ時代だしね。その後のファシズムの点からも注意を要する。訳者あとがきでちゃんと触れているので心配はしないが。

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    2018年10月21日