石井遊佳のレビュー一覧
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ネタバレ⚫︎感想
設定が大変おもしろかった。著者も主人公も日本語教師ということで、マジックリアリズムに、リアリズムがより濃く感じられた。なんでもありのインドならこんなこともありそうだ…というインド、チェンナイで大洪水のあと、川底にあった百年積もり積もった泥。泥の中から引きずり出される人、物、自らの人生、様々な人々の人生の記憶。本作は橋の片側から片側へ渡る間に主人公が現在過去未来に様々な物や人を通して輪廻を感じるが重たいそれではなく、「どうやら私たちの人生は、どこをどう掘り返そうがもはや不特定多数の人生の貼り合わせ継ぎ合わせ、万障繰り合わせの上かろうじてなりたつものとしか考えられず…」という諦観の軽やか -
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ネタバレ南インドのチェンナイで働く日本語教師。行き当たりばったりで胡散臭いけど、不思議と親近感が湧いてくる。
連想ゲームみたいに数珠繋ぎに話が展開されるのが面白くてどんどん読み進める。彼女の物語であって彼女だけのものではないそれらが波のようにうねる。
実話のようなトーンで、有る事無い事ごった煮の世界なんだけれど、悲しい過去も思い出も一切を包み込む懐の深さを感じた。
ガネーシャと招き猫の共通点や、インドの名誉殺人と日本の敵討ちを見比べたりしていたら、そう遠い話でもない気がしてきた。
無口というのを通り越した無言の母と旧友の話は、なんだか美しくて切なくて聞き入ってしまう。「ことば」のない心が繊細に描かれて -
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東京FMのラジオ番組「Panasonic Melodious Library」で(けっこう前に)紹介されていて、興味を持った。
あらすじはこうだ。南インドの都市チェンナイで日本語教師をする私は百年に一度の大洪水に見舞われる。水が引いたあと私は、百年分の記憶を孕んで地上に投げ出された泥の山から、チェンナイの人々が、遠い昔に死に別れた家族や友人をいとも自然に引っ張り上げては思い思いに邂逅を果たすさまを見る。日本語講座の生徒である青年が熊手で掻き出す泥の中からは、この地にあるはずのない私の思い出の品も転がり出てきて、私の、彼の、語られなかったはずの記憶の声が鳴り出す。
ラジオでこの作品の特徴とし -
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読書開始日:2021年7月5日
読書終了日:2021年7月6日
所感
芥川賞受賞作品を読み進めている最中ではあるが、とても好きな作品に出会えた。
タイトルとはかけ離れた清涼感があった。
ラストシーンの鳥肌は、川上弘美さんの「真鶴」以来かもしれない。
この作品は、チェンマイに降りかかった百年に一度の大洪水により浮上した百年積み重ねた歴史ともいえる泥を掘り起こすことによって、
登場する人々の過去を振り返る内容。
飛翔通勤や、泥から出てくる人間、それらがしっかりと作品の中の現実になじむくらいに、現実と虚構の線引きが無い。
過去は年月を重ねるうちに変形し、過去への思いの強弱も変わる。
そこにある事柄、 -
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この本に出てくる主人公と場所は違えど同じ職業をしている身として、彼女の日本語を教える教室での心労が手に取るようにわかるのだけど、この本の本筋はそこにはなく、インドという国とそこの考えに全く馴染みのない自分でも、そこにある宗教的というか土着的というか、そういう世界観の深さを垣間見ることができる話だった。
百年泥から湧き上がってくる記憶とも過去ともつかない幻想的な物事の中で、主人公と主人公を悩ませる生徒の過去が一際色鮮やかに語られて、そこに何があるという訳もなく、ただ彼らが今どうして彼らであるのかがわかっていく話。橋を渡り始めてから渡り終わるまでに、主人公と学生がこの企業の一教室で出会ったことの不 -
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場所は南インド、チェンナイ。百年に一度の洪水によってもたらされた膨大な泥。アダイヤール川にかかる橋を渡ると、泥の中から無くした人や物を探しあて、再会に涙ぐむ、喜ぶ人達の姿で溢れていた。
インドの文化をリアルに描きつつ、ファンタジー要素を隠し絵のごとく違和感なく盛り込んで、圧倒的な混沌の中から人生の悲喜こもごもをインド哲学と日本の仏教の両方から掘り起こして表現しているような印象がしました。
現在と過去、インドと日本、現実と仮想を交互に行き交う文体は、読みやすくはなかったですが、不思議な世界観でとても面白かったです。インドってすごい!と素直に思いました。
本当にインドでは飛翔通勤してる人達がいる -
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読書開始日:2022年1月15日
読書終了日:2022年1月22日
所感
【象牛】
やっぱりどこか著者作品は爽快感がある。
本作もとても好みだった。
最終シーンは百年泥と同じくらい爽やか。
ぶらつくか、目的地を決めるか。
全ての過去を「バス!」
目的地へ進み始めた。
片桐、岩本、どちらも格好いい。
みなぎる自信と研ぎ澄まされた哲学によるものだ。
とにかく表現がエロティック。
セックスは闇鍋。有は有だが意味は問わない。
大好きな作品
【星曝し】
時系列も世界観もなにもかもバラバラだが、伝えたいことは一貫していたと思う。
諸行無常。
やはり著者インドに精通してるからこそだと思う。
全ては移りゆく。 -
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ネタバレ不思議なお話なのだけど、現実的な部分は本当にリアルで、ファンタジーな場面もすべて
「インドなら本当にあるかもしれない」と思ってしまった。そしてあとがきに同じ感想が書かれていた。
大阪の招き猫とインドのガネーシャがすべて交換された街並みは実際にそうなったら面白いと思うし、インド人の登場人物がマクドナルドを「マクド」と言っていて、関西人のインド好きが多いのはとてもリアル。
インドの不思議さや、インド人の純粋さ、おおらかさ、嫌味な賢さ、日本語の間違え方など、本当にリアルで笑った
デーヴァーラージの過去、人となりは胸にグッとくるけど、悲しいとか、可哀想とか、そういう気持ちではなく、それを抱えて生きる -
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南インドのチェンマイで若きIT技術者たちに日本語を教えている「私」。
ある日、豪雨が続き百年に一度の洪水が町を襲い、もたらしたものは圧倒的な”泥”だった。
「私」は会社を目指して橋を渡り始めるが、百年の泥はありとあらゆるものを吞み込んでいた。ウイスキーボトル、人魚のミイラ、そして哀しみも。
新潮新人賞、芥川賞の二冠を獲得した文学小説。
百年に一度の大洪水であふれた泥の中から、登場人物たちの過去を振り返っていく作品です。
チェンマイという具体的な地名が出ており、主人公の「私」も現地IT企業の日本語講師という地に足のついたものであるにもかかわらず、現実と虚構、現在と過去の境が曖昧で、SFのよ -
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文庫じゃなくて
文芸書を持ってるんだけど
文庫しか出てこなかったので
文庫で登録
お誕生日に
こんな不思議な本を贈ってくる姉に
当時、困惑したことを思い出した
数年前にもらったのに
読むきしなくて放置してたのを
邪魔だし片付けたいなぁって読みました
姉はたぶん
芥川賞とってたから選んでくれたんだろう
自分ではこういう本読まないくせに
こういうの好きなんじゃないかな?
って考えてくれたのかと
今さら気づいてほっこりする
本の内容は
現実と非現実が
変なバランスでまぜこぜになってて
それがちょびっとおもしろい
あれ、これどっちだっけ?
って変な気分になる
その変な感じがわりと好き
装丁が残