南インドのチェンナイで働く日本語教師。行き当たりばったりで胡散臭いけど、不思議と親近感が湧いてくる。
連想ゲームみたいに数珠繋ぎに話が展開されるのが面白くてどんどん読み進める。彼女の物語であって彼女だけのものではないそれらが波のようにうねる。
実話のようなトーンで、有る事無い事ごった煮の世界なんだけ
...続きを読むれど、悲しい過去も思い出も一切を包み込む懐の深さを感じた。
ガネーシャと招き猫の共通点や、インドの名誉殺人と日本の敵討ちを見比べたりしていたら、そう遠い話でもない気がしてきた。
無口というのを通り越した無言の母と旧友の話は、なんだか美しくて切なくて聞き入ってしまう。「ことば」のない心が繊細に描かれていて、そんな静かな世界をかつて共有してきた主人公の話をもっと聞いていたかった。誰になんと言われようと、「話されなかったことば、あったかもしれないことば」を大事にしてほしいと思った。
無数の人生が埋まった百年泥に私も埋もれているかもしれないと思ったら楽しい。個人でなく誰かの記憶や過去のひとつとして、ただの生命として、地球に飲み込まれたら面白いな。