鈴木達治郎のレビュー一覧
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我が国の原子力に関するテーマを、技術的な点、政治的な点について語っている本。
タイトルにもある通り、そこには「核兵器」というものが含まれる。この点が日本の抱えるジレンマであることが、なんとなく知識人の間で示唆されているのを読んだり聞いたりしてきたけど、本書を読んで、明確になった。
以下の引用をいつまでも心にとどめておきたい。
「再処理の合理性が崩れている今、政府が核燃料サイクルに固執する理由はなにか。おそらく政府は、再処理や濃縮といった核兵器転用可能な核物質を生産できる技術・施設を保持することが、「潜在核抑止力」につながると考えているのではないか。」(P114)
「核兵器製造の経済的・技術的ポ -
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原発推進側にいた人による、核兵器と原発の解説書、といえると思います。
著者は、原子力に関する技術にも精通しており、核兵器と原発の違いや、原発の構造や危険性についても、わかりやすく説明しています。
また、核兵器の開発の経緯や、原発の推進の過程も追うことができる構成になっており、福島第一原発の事故を踏まえた、核兵器の現状や原発の世界情勢を含め、核兵器と原発についての大枠の理解に適した本だと思います。
著者としては、原発推進側にいたこともあり、おそらく今後も原発を推進していきたいという想いを持っているのだと思いますが、福島第一原発の事故のことを考えると、無邪気に原発推進を唱えるわけにもいかず、そ -
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3.11時の原子力委員会委員長代理が記した原発と核兵器に関する解説と提言。
原発は、安全面からも経済面からもさらにはゴミを未来に残すといった問題からも、非合理であることが明らかになっているのだが、フクシマを経験してもなお硬直的な原子力政策を継続しようとしているのは何故なのか。
ムラの維持もあるが、再処理や濃縮といった核兵器転用技術が「潜在的抑止力」になると思っている人たちがいて、手放したがらないようだ。
この話を以前聞いた時はネット上の戯言と思って思ったが、原子力委員会の中枢にいた人から聞かされると、暗然とする。
筆者の核廃絶に向けた真摯な提言には頭が下がるのだけど。 -
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核分裂による巨大なエネルギーは核兵器としての軍事利用、原発などのエネルギー源としての平和利用の2面性があり、その二つは密接に関わっています。
日本の原子力政策はそのどちらの面についても、くびをかしげてしまうような問題をいくつも抱えています。
なぜ日本(自民党)は世界的には衰退傾向である原発を推進しようとするのか、高速増殖炉「もんじゅ」が実質破綻しているのになぜ核燃料サイクルの存続に拘るのか、唯一の被爆国である日本がなぜ核兵器禁止条約に参加しないのか、アメリカの核の傘の下で北朝鮮の核戦力から本当に安全なのか、等の疑問について丁寧に実情を交えて解説しています。
原子力委員長代理、核兵器廃絶研究セン -
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高濃縮ウランはウラン235の量でわずか25キログラム、プルトニウムはさらに少ない8キログラムで核爆発装置が作製可能と考えられている。高濃縮ウランは作製に高度な技術が必要でかなり困難であるが、いったん作製されると核爆発装置の作製は容易で、核実験も必要がないとされている。広島に落とされた「リトル・ボーイ」と呼ばれた原爆が、この高濃縮ウランを利用したものであった。
一方、前述したようにプルトニウムを化学的に分離することは可能で、その際、放射線を遮る厚いコンクリートの背後ですべての操作を行う「再処理施設」が必要となるが、一度、高放射能の核分裂生成物から分離されると、プルトニウムは比較的容易に取り扱