オリオン座のベテルギウス(三ツ星の左上の1等星)は、人類が観測し始めた1000年前の時点から既に星の寿命の末期の状態(赤く巨大化)だった。
そしてこの星は、地球から640光年離れており、現在見えているのは室町時代ごろの星の姿である。よって、既に超新星爆発して消えているかもしれない。
という話をつかみネタに、星や太陽系が生まれてから死ぬまでのサイクル、宇宙の誕生などの最新学説を分かりやすく説明してくれる宇宙入門。
小学生の息子たちに、宇宙の成り立ちや、宇宙の果てはどうなっているのか、などを聞かれることがあるのだけど、間違った答えを言いたくないので勉強のため読んだ。
この本の良かったところは、
・恒星までの距離、星の一生のサイクル、恒星の温度と明るさの散布図グラフなどの図が要所要所で掲載されているので、イメージしやすかった。
・宇宙に関する理論の紹介だけでなく、どういう観測結果の積み重ねからそういう仮説が生まれたのか、まで丁寧に書かれているところも分かりやすかった。
僕自身、そこまで宇宙に深く興味を持っているわけではないけど、著者の言うとおり、
宇宙誕生の謎を突き止めることは、私たち生命のもと(元素や素粒子)がどこからやってきたのかを知ることであり、人類共通の夢。
そして、宇宙の広大さ、誕生から138億年という時間軸の果てしなさを思うと、自分一人や人類・地球のちっぽけさを感じ、小さな悩みごと・争いごとはどうでもよくなってしまう。
宇宙を知りたいと思う知的好奇心の意義は、そういうところにもあるのかもしれない。
初めて知って驚いたこと
・恒星の寿命が尽きて超新星爆発し放射線(ガンマ線)が直接地球にあたると、生物が大絶滅する(過去の地球でも、4億4400年前のオルドビス紀末に57%が絶滅)。しかし、ベテルギウス超新星爆発が起こる際は、20度角度がずれているので、おそらくセーフ。
・恒星の一生のサイクルは質量で3種類に決まる。太陽は一番軽いグループであり寿命は100億年くらいだが死ぬときは爆発はせず、膨張して地球などを飲み込み、最後は冷えて暗い星になる(今は46億歳なのであと50億年後)。一方、重たい恒星は数百万年で超新星爆発してブラックホールになる。太陽の方が燃費が良く長生きするということらしい。
・最新の宇宙誕生説(ビッグバン説など)が出来るまでの経緯も簡単に紹介されており、以下のような経緯とのこと。様々な科学者が世代を超えて理論を積み重ねていった結果、今の学説があるのだことを知り、感動した。(一つ一つの物理化学現象までは理解できないけど)
(1)1929年ハッブルが、望遠鏡での観測結果(遠くの銀河から来る電磁波ほど波長がずれている)から、ドップラー効果でより速く遠くに遠ざかっている、つまり「宇宙が膨張している」ということを発見。
(2)1948年ガモフが、現在の元素分布から宇宙誕生時の分布を予測すると、最初は水素92%・ヘリウム8%でないと辻褄が合わない。その割合であるためには、宇宙が高温高圧の火の玉状態であった必要があると予想「ビッグバン理論」。(ちなみに、発表当時、他の学者がこの理論をバカにして言った「ビッグバン」という言葉が、証明された後に正式採用されたらしい。)
(3)1964年ベンジアスとウィルソンが、無線実験の際、どの方向からもノイズが入る「宇宙背景放射」があり、そのマイクロ波が放出された時の宇宙温度はマイナス270度であることが分かった。その状態が発生するためには、宇宙が膨張状態から冷えていった「宇宙の晴れあがり」という状態が必要であり、「宇宙のはじまりには、ビッグバンのような高温状態がなければ説明できない」と結論。
(4)1980年に佐藤とグースが、ビッグバン状態になる前に爆発的な空間の拡大が起こったという「インフレーション理論」を発表。(ここの説明はあまり無かったので、なぜそれが有力説になったのか理解できず)