大治朋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「ナラティブ」が現代社会にどのように影響を与えているか、
記者さんが自身の疑問や気づきをもとに、取材形式で掘り下げられています。調査報道、みたいなものなのかな。
安倍元首相銃撃事件の判決が先週1月21日に出たというニュースがありましたが、この事件も代表例的に取り上げられていました。
取材対象者の中でも著者がその主張を繰り返し引用していたのは、ケンブリッジ・アナリティカ元社員の人でした。
政治に影響を与えるには、個々人のナラティブを知ること、それによって、その背後にある個人の認知バイアスを割り当て、人心掌握する。
それをプログラム化して実行してきた成果が、トランプの初当選があったり、イギリスのEU離脱、ロシアの影響工作などなど… といった時事ニュースにもつながる。
情報が盛りだくさんで頭に収まり切りませんでした。
そして、ナラティブの定義は初めにありましたが、
ナラティブといっても、
肯定的に使っているところ(曖昧性、多様性を維持したそのままの語り、というような)と、
注意が必要な概念として使っているところ(物語化、一貫したストーリーに仕立て上げる、というような)とが、
あるような感じでした。 -
Posted by ブクログ
主にイスラエルに暮らすユダヤ人の話、イスラエルという国ができた成り立ち、近年発生した事件、イスラエルと関係ある諸国との最近の動向などが書かれた内容。
日本で暮らしている身からすると中東辺りの人々が考える世界観というのは良く分かっていなかったのだが、理屈を聞くと一定の理解はできるし、恐らく分かり合える部分もあるんだろうなと思った。お互いに容認できるかはまた別だが、そういう所のすり合わせを果てしなくやるのが外交なんだろう。喧嘩がエスカレートするのもお互いに被害者だという認識になっているからで、ある意味ヒステリーといった方が分かりやすいのかも。
巻を通して思ったのは、人間は自分を確立するために何らかの母岩を持っていないとダメで、どうも人種や宗教というものをそれに当てはめてるようだという所だ。自分と他人を区別する生物としての機能がそうさせてしまっているように思うが、そうであるなら、自分とあなたは違うが争いのもとになっているので、自分とあなたは同じと理解しあうことでそれ自体は減らせそうな気もする。
だが、この仕組みを利用して利益を得ようとする集団に誘導されてしまっているようなので、解決が難しいようにも思った。
理解して混ざるのか、あるいはどちらかを滅ぼすまでやるのか、果たしてどっちになるんだろうか。 -
Posted by ブクログ
※重い内容なのでご注意ください※
イスラエル軍の爆撃で殺されたガザの子どもの遺体が大型のアイスボックスに詰められている現場の取材を終えて、数十キロしか離れていないエルサレムに戻ると、ユダヤ人の家族連れの子どもがカフェの店先で、はじける笑顔でアイスクリームを食べている
『これはいったい何なのか。彼らはなぜ「平気」なのか、なぜ正気でいられるのか』
『虐殺の悲惨さを誰よりも理解しているはずの彼らがなぜ、新たな被害者を作り出すのか』
『和平から遠のき、10・7事件後もその過剰な「自衛権」を行使するイスラエルを事実上看過し、止められずにいる国際社会。なぜこれほどまでに無力なのか。』
毎日新聞のエルサレム特派員として現地で暮らしていた著者は、休職して滞在を延長までして合計6年半、そんな疑問への答えを追い続けます
今はもう圧倒的な軍事力を持っているのにまだ消えない民族としての強力な被害者意識とか、自衛のための先制攻撃という発想とか、国民にはびこる意図的な無関心とか、この本を読むまで想像もできなかったけど、一方で反戦の声を上げる元兵士たちとか、共生を目指す少数派もまだいることを知って少し希望も持てました
本を読み終えて、そういえば昔、旅先でたまたま知り合ったイスラエル人の好青年に、旅が好きなの?とか他愛もない質問をしたら、イスラエルは社会が不安定だからいたくないんだみたいな想定外の答えが返ってきて何も言えなかったことをふと思い出しました
⚠ Please be aware: this is heavy content ⚠
After covering a scene in Gaza where the bodies of children killed in Israeli airstrikes were being stored in large iceboxes, the author returned to Jerusalem—only a few dozen kilometers away—where Jewish children with their family were sitting outside a café, eating ice cream with bright, carefree smiles.
"What on earth is this? How can they seem so ‘unaffected’? How can they stay sane?"
"Why do people who should understand the horrors of massacres better than anyone else go on to create new victims?"
"The international community, which has effectively looked the other way and failed to stop Israel from moving further away from peace and continuing to exercise its excessive ‘right to self-defense’ even after the events of October 7—why is it so powerless?"
The author, who lived locally as the Mainichi Shimbun’s Jerusalem correspondent for six and a half years, even took a leave of absence to extend their stay, pursuing answers to these questions.
Until I read this book, I could never have imagined the reality: the deeply entrenched national sense of victimhood that still lingers despite having overwhelming military power; the idea of launching preemptive strikes in the name of self-defense; the widespread, deliberate indifference among the public. And yet, I also found a glimmer of hope in learning about former soldiers who raise their voices against war, and about a small minority who still strive for coexistence.
After finishing the book, I suddenly remembered something from years ago: while traveling, I once happened to meet a young Israeli guy. I casually asked him if he liked traveling, expecting light conversation. But he gave me an unexpected answer: “I don’t want to stay in Israel because society there is unstable.” I was at a loss for words. -
Posted by ブクログ
ユダヤ人の歴史、世界観、パレスチナへとの想い、ホロコーストからの価値観の変化、イスラエルをいろんな側面で解説している
ホロコーストという虐殺された歴史を持ちながら、ガザに対して虐殺を繰り返すイスラエル
この負のスパイラルを断絶するために命をかけて活動する、ユダヤ人とパレスチナ人
読み進めるに連れて、何が悪なのか分からなくなる感覚が続いた
日本は世界唯一の原爆投下という大虐殺を受けた国となる
私の祖母も長崎で被爆しており、私は被爆三世だが、子供の頃から原爆に対する教育が徹底されていたと思う
著者も述べている通り、負のスパイラルを抜けるには、子供の頃からの地道な教育しかないのではないだろうか
世界から戦争が無くなる日を願う -
Posted by ブクログ
著者自身が言うように、同じように差別·貧困·死別·蹂躙に苦しんだある者はテロに走り、またある者は平和な生活に留まる。それを分かつ要素が何なのかを丁寧に突き詰めていった本である。ひとつひとつの要素が確かにローンウルフによるテロの引き金になりうるしテロ支援(エネイブラー)になり得ると、納得の説明だった。イスラエルによるパレスチナのジェノサイドが始まる前に書かれているので、パレスチナ人の自爆攻撃に怯えるイスラエル人寄りの立場で書かれているのが気になるが、確かに他では読んだことのない内容で面白かった。もう少し無駄な言葉を削ぎ落として整理してあればよかった。
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ネタバレ昨今、よく耳にする「ナラティブ」。
前々から気になっていた一冊を、ようやく読めた(買って1年近く手を出せずに置いてた)。
学びは多岐にわたり、非常に興味ある内容だった。
主な主張は第一章を読めば分かるかな。
いや、本書の主旨より、そこでインタビューされる養老孟司さんの言葉、その主旨が重要か。
「ナラティブというのは、我々の脳が持っているほとんど唯一の形式じゃないかと思うんですね」
そして名著『バカの壁』にある以下の記述も引用されている。
“ 脳内には「一次方程式がある」と説いた。
人間は五感から入力した情報(x)をいったん脳内で回し、運動系で出力(y)して行動に移す。それを方程式に表すと「y(出力)= a(係数)x x(入力)」。「a」は変化する数値、つまり係数で、それぞれの個人が持つ「現実の重み」なのだという。“
要は、人心を操るナラティブ、それを駆使する集団は、その係数をいかに自分に都合の良いものにしていくかを考えて、テを変えシナを変えて、我々にアプローチしてくるという話を、後段にかけて、縷々と綴っていく。
古くは、民族につたわる神話や民話。そして、現代はSNSを駆使し、しかも、人の脆弱性につけ込んで、上記の「a」(変数)を、発信者側に都合いいように「下地」を作ることからはじめるという周到さが不気味だ。
「デジタル時代の昨今においては、カルト教団や詐欺師が勧誘対象者にやってきたような「聞き取り」は、SNSに公開されている「いいね」の大量分析で可能だ。あとはそれをもとに、特定の標的に刺さるであろう「だましのナラティブ」を生成してSNSに流し、標的に被爆させるだけだ。」
その実例が、2016年には英国のEU離脱、ブレグジットだし、先の米大統領選ではトランプ氏の勝利を後押ししたナラティブ戦略があったと本書は分析する(というか、ケンブリッジ・アナリティカという企業が行った所業を暴露した著書の分析を紹介している)。
本書そのものの分析より、養老さんの著書などのように、あれやこれやの書籍や関係者の証言、意見の引用が多い。新聞記者の記す著書らしいとも言える一冊。 -
Posted by ブクログ
嘘か本当かわからない情報にあふれ、様々な問題が複雑に絡まり合い、寄りかかれる先が少なくなってしまったこの時代に、ナラティブが自分たちの周りに溢れていて、良くも悪くも大きな影響を与え得るということを、様々な事例を通して分かりやすく教えてくれる。
ナラティブについて認識してこの世界を見ること、知らずにこの世界を見るのではまるで違う。
この世界の"なんでだろう?"を理解する糸口でもあり、情報兵器にもなり得るもの。
過激派テロ、米大統領選、性被害、旧統一協会、ナチス...
様々な事例をナラティブを軸に考えていくと、ものすごく理解が深まった。同時に、危険な思想に向かっていってしまう可能性はどこにでもあるのだと感じて少し怖くなった。
でも、イスラエル・パレスチナ遺族会の存在、
「相手も普通の人間なのだということが分かる。それだけでも意義があると思います」
これが希望だなと思った。
ナラティブが良い方向に活用される社会であってほしい。
それでも、情報兵器としてナラティブを利用する人は確実にいるから、情報を受け取る私たちが、真偽の分からない造られたナラティブに安易に飛びつくのではなく、しっかり考えて向き合っていかないといけない。
私はしっかりネットに浸かった生活を送っているタイプなので気をつけないと…。
本書を読んでから、生活の中でナラティブを自然と探すようになってしまった笑
意識してみると本当にたくさんのナラティブに溢れていて、その中でも印象的だったのは運転免許証更新の講習。講習ビデオ冒頭に事故被害者遺族の語りがあった。あ、これもナラティブだなと。実際、冒頭にその語りがあったことでその後の内容を自分ごととしてより注意して視聴できた感覚があった。
なるほど、自分は確かにナラティブの影響をしっかり受けてる。
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Posted by ブクログ
「普通の人」がなぜ過激化してしまうことがあるのかを、イスラム国、パレスチナ問題、それに日本で起きた障害者施設での殺傷事件、秋葉原での通り魔事件などを取り上げ、ローンウルフ型と言われるテロ行為を防ぐ方法を模索している。
読んでいて非常に気が重たくなる本であるが、重大事件の裏にも「防げたかも知れないタイミング」があったようで、個人レベルであれば周囲の人が手を差しのべることによる解決策が提示されているのが救いだ。
しかし国家同士となると難しい。読んでいて昔のアニメ「伝説巨神イデオン」を思い出した。異なる民族が誤解を重ねて戦いが泥沼化し、相互に愛し合う個人が存在し目的も望みもお互い似通っているにもかかわらず戦いがやめられずに、最後は「神」の力によって双方が全滅するという話だった。人類が到達する先終点がこうならないように祈りたいものだ。