ジェイムズ リーバンクスのレビュー一覧
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自然の描写を読んで想像するだけで清々しかった。
羊飼いと聞くとのどかなイメージがあるけど、実際の仕事はとてもハードだ。
体力的にもハードなのはもちろん生き物の生死に触れるという点から精神的にもハードだと思う。
また品評会や、仲間との腹の探り合いなど、人間らしい力が試される場面があることも意外だった。
また、その中で観光産業や、工業化にも言及しており、伝統と商業を両立することの難しさも感じた。
昔から変わらない風景というのは、なかなか難しいけどあってほしいと思う。
著者が羨ましいと感じる点は、自分のしたいこと、すべきことが幼い頃からわかっていて、それに向けてまっすぐ努力してきたということ -
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イギリス湖水地方で、600年以上に亘り代々牧羊を営み続けてきた家庭に生まれた著者の半生。夏、秋、冬、春と4つの章立てで構成されている。祖父や父に学び、恐らく著者の幼い子供も同じく、他の選択肢なく羊飼いを生業とすること(その繰り返しが600年間継続している)、時に過酷な自然環境、生き物の生死、生き物の血や体液が日常にある生活、子供たちに当たり前のように体験させる著者の考え、などが、取り立ててドラマチックではなく淡々と描かれている。
是非とももう一度読みたい。
またまた読んだ。なせだか、読みながらいつも思い浮かべるのは、上高地の山小屋の人々。先祖(といっても上高地の山小屋はまだ三代目とか四代目で -
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ネタバレ作者はイギリス湖水地帯で600年続く牧羊農場に生まれた。イングランド北西部、マターデールと呼ばれる渓谷で、遠くにペナイン山脈を望むこの地で、フェル(小さな山)で在来種の羊、地域に合った伝統的な羊(ハードウイック種)をいかに持続させていくかを考えながら牧羊を行ってきた。
この風景はここに住む人々が作ってきたものであり、その名はここに住むものしか知らない。彼は「おそらく100年後には、私が羊を山で放牧していたことなどなんの意味もない事実になる」と自嘲気味に語っているが、この本によって、少なくとも人々の記憶には残り続けるだろう。(2023年には続編『羊飼いの想い』も書かれている。未読)
羊飼いたち -
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「風光明媚な湖水地方で農業なんて、きっと毎日が美しくて素敵!」そう思って本を開く人は、農業が直面する「現実」にきっと衝撃を受けるだろう。大規模で工業的に行われる農業の影響で農産物の価格が下がり、中規模で家族経営の農家の経営が厳しいものとなっている現実。生と死が身近にあり、疫病や担い手の減少など美しい事ばかりではない現実。
はるか昔の先祖の代から湖水地方で羊飼いとして暮らしてきた著者だからこそ書ける日々の暮らしや農業に対する意見は、日々オフィスで働く現代人にとって一読の価値があると思う。
スーパーに並ぶ肉や野菜はどういった過程でここに並んでいるのか、その生産は今後も持続可能なのか。
当たり前にそ -
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ピーターラビットやワーズワースを読んで憧れて、旅行したときには景色の美しさに感動した湖水地方、そこでの羊飼いの暮らしが描かれている本だというので興味深く読んだ。
「羊飼い」という言葉にはなんとなくのどかな印象があるが、実際は、当然のことながら厳しい。しかし著者は、家業だから仕方なく継いだのではなく、好きだから自分で選び、誇りを持って続けているということが伝わってくる。
ビアトリクス・ポターは湖水地方の景観を保全するためには、ハードウィック種の羊での農場経営が重要だと考えていた。著者はそれを実践している人たちの1人だ。ワーズワースは湖水地方を独自の文化と歴史が根づく場所と考え、訪問者もそれを理解 -
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“私たちのような家族は長い絆を護りながら、時代を超えてお互い寄り添い続ける。人は生まれて死んでいくが、農場、羊の群れ、昔ながらの家族のつながりはずっと続いていく。”
土地に染み込んだ家族の記憶、土地の景観を形作った何世紀にも渡る牧畜のシステム。自らはその一部なんだ、自分の後にも続いていく大きな流れに含まれているんだという帰属感が、著者の人生を形作る。
しかし著者は伝統を重んじて、ただ家業を継いだ訳ではない。
立派な羊飼いである祖父に憧れた幼少期、農場経営方針で父親と対立し新しい生き方を模索して大学に通う青年期、牧畜を生涯の仕事でと定めて家庭を築き、そして家族経営農場で子供達を育ていく著者の -
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ひつじ好きとしては読まねばならぬと思っていた本。
湖水地方を「夢の場所」として描く作家たちに反感をおぼえる若い頃の著者。まあわからなくもない…大切なのは、そのあと、「本当の」湖水地方について書こうと考えたこと、だと思う。言葉にするのって、本当に大事。
仕事はぜんぶ祖父に教わったという。そうやって受け継がれていくことがある一方で、家族というものはままならないなあと思う。
母親が冷蔵庫に貼ったマグネットに「つまらない女性の家は汚れひとつなくピカピカ」と書いてあったというのが、とても、とても…そのマグネットほしい!
ところで、冬はひつじを羊舎に入れたらダメなのかな…過酷…
羊飼いの杖かっこいい -
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まさに「ランドスケープ=風景そのもの!」
イギリス湖水地方に代々続く羊飼いの四季の営みを綴ったもの。
美しく豊かな風景がそこに存在するということ。それはつまりその風景を守り維持する生活が根ざしているということ。
四季を通して羊飼いの過酷な生活が綴られ自然の美しさと厳しさも綴られている。著者のユーモアを交えた文章にどんどん引き込まれる。
著者は羊飼いの息子として生まれ、後にオックスフォード大学を卒業、現在はユネスコのアドバイザーとしての一面もある(著者紹介より)
ランドスケープ、里山などの持続可能な開発...
それらの仕事に携わる人たちにも是非一読してほしい本だと思う。
目の前にひろが -
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ワーズワースやベアトリクス・ポターが愛した湖水地方で代々羊飼いを生業としてきた著者とその一族を語る。
湖水地方の春夏秋冬とともに、羊飼いの仕事を綴りつつ、祖父母から父母・著者とその家族の日々を綴る。
学問など何ぞや、羊飼いとしての経験と知識こそ最も信頼される社会。著者もまた、幼いころから祖父について回り羊飼いのノウハウを体験で学んだ。進学することなど考えてもみない、ちょっと乱暴な仲間たち。そして何よりも頼りになる先祖伝来の羊飼いの知恵。そんな環境の中、著者は祖父・父と続く羊飼いの道を歩む。
そんな中でも、母親の配慮で本を読む楽しさは知っていた。そして、進学の道を進んだ妹たちと自分を比べても、 -
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美しい景観とロマンチックなイメージのイギリス「湖水地方」だが、19世紀にワーズワースによって見出され、20世紀後半に観光地化が進むまでは、外部との交流が少なく、夏の間は山腹の共有地で羊を育てる昔ながらの伝統的な牧畜地域であったらしい。そして、そのようなファーマーの生活を今も続けている著者が、自然相手の厳しい羊飼いの暮らし、彼らの誇りと喜び、そして、自分たちが過去から未来へと連綿と続く鎖の一部であるという実感について、彼の家族史を含め、リアルかつ生き生きと描いている。かなり厚い本ではあるが、読むに連れて面白くなり、どんどん惹き込まれていく。
ピーターラビットの作者であるベアトリクス・ポターが自分 -
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イングランド北西部、湖水地方の羊飼いの暮らしがどういったものであるかを回顧録的に綴ってくれている一冊。
自身、だいぶ昔に湖水地方でないがイギリスを旅したときの電車からの風景、透き通った青空の下、木々の少ない一面牧草地の広大な丘があってそこに沢山の羊が放牧されていた風景をふと思い出しました。
私は日本の畜産農家の下で生活したことがないので、完全に想像の域であるが、日々の生活や人間関係など、日本のそれと結構近いものがあるんじゃないかなって想像してしまった。
コントロールできない自然現象との戦いに泥臭い人間関係、でも都会の生活より圧倒的に人間らしさを感じれる、そんなことを読んで思い考えました。 -
Posted by ブクログ
イギリス湖水地方の羊飼いの手記。
羊飼いというと、羊の大群を引き連れて散歩させて羊毛を刈って生活をしてるのかな、とテキトーな想像をしていたがそれは誤り。
彼らの生計は育てあげたよい羊を売ることで成り立っている。それを行うにはまた色々なTo Do listがある。親の雄羊&雌羊の最適な組合わせを見つけ、羊が繁殖に専念できるよう環境作りを注意を払う必要。産まれた羊飼いが健やかに育つよう、エサ(干し草)の確保。広大な牧場で羊がどこかに行ってしまわないよう、牧羊犬との連携などなど。
先代からの伝承を受け継ぎ、時には破壊的な大自然を前にして、羊飼いは日々従事している。
生と死の場面に何度も遭遇する仕事で