大久保洋子のレビュー一覧
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どこか哀しさを感じさせ、作品世界の中での現実と幻想がいりまじる美しい物語たち。
寝る前に一編ずつ読み進めたくなるそんな夜の似合う短編集。読み終えてしまうと、この世界が終わってしまうのがつらくて、一編ずつ、ゆっくり読み進めました。
失われた世界に漂う『夜の潜水艦』
鍵のストーリーが印象的な『竹峰寺 鍵と碑の物語』
他人の視線に触れると文字が消えてしまう『彩筆伝承』
雲を管理する『歳雲記』
不思議な方法で作られたお酒を巡る『杜氏』
かつて庭園だった耽園での僕と李茵のエピソードから始まる『李茵の湖』
祖父が濃霧の中で経験した不思議な話『尺波』
レニングラードに響く禁制音楽『音楽家』
またこの作者 -
Posted by ブクログ
『闇に包まれた穴の底には、龍が横たわっているような気がした。(中略)年寄りたちの言うには、そうした穴は龍が冬眠をする穴ぐらだそうで、龍は夏になると穴からはいずり出てきて天空に飛び立ち、冬になると再び穴に舞い戻ってくるという。穴の付近の雪が解ける理由は、龍の吐く息が穴から噴き出してくるせいらしい。ぼくはその言い伝えを知っていたので、穴の底でひとりぼっちにさせられたとき、龍に食われてしまうんじゃないかと怖くてたまらなかった』―『ラシャムジャ/穴の中には雪蓮花が咲いている』
「絶縁」というテーマのアンソロジー。村田沙耶香が作品を寄せているというので読んでみたのだけれど、その他のアジア圏の作家の短篇 -
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日本の作家と共作しませんかと問われた韓国の作家チョン・セラン氏が「アジアの若手世代の作家が同じテーマのもと短編を書くアンソロジーはどうか?」と編集部に逆提案。それで編まれたのが本書だとか。
今回のテーマは“絶縁”。人によって、国や地域によって、こんなにもいろんな“絶縁”があり、それぞれが自分だけの「生」に翻弄されながらそれでも生きていくしかないのだな…。誰かに代わってもらうわけにはいかないものね。
作品ごとに作者紹介に加えて訳者解説やあとがきがあるのがうれしい。世界が広がるような一冊でした。テーマを変えたり執筆者の顔ぶれを入れ替えたバージョンも読んでみたい! -
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日本のミステリー作家にも敬意を払うあとがきにびっくりさせられた中国の作家によるハードボイルドミステリー。主人公は女探偵で、舞台は1930頃の架空の地域(省城と書かれる)。この女探偵は特に優れた能力もないし、財産もないのだけれど、知恵と肝の太さでどんどん真相に迫っていきます。基本的にはいなくなった女子学生を探すというお話です。謎解き的にもさほど入り組んでないのに解けていく楽しさは十分にあり、一昔前の中国の様子がわかるのと、中国人の名前の表記や本棚の本、詩の引用で昔の偉人による漢詩がでてきたりと周りの小道具がいちいち異文化で楽しめました。最初は薄い本だったので簡単に読めるかと思っていましたが、ふつ
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ネタバレ久しぶりの華文ミステリ。
たまには読んでみるかぐらいの気持ちだったがなかなかに面白かった。
路線的にはこってこてのハードボイルド。
それもそのはず、逝去40周年を迎えるロス・マクドナルドに捧げる一編とあれば。
その王道の中のそこここにまぶされる中華風味と、序盤で明らかになるものの、あれ、これってもしかして?と引き込むちょっとした設定の妙がにくい。
とある都市省城の資産家の姪が親友を探して欲しいと私立探偵劉の事務所を訪れる。
調査妨害もありつつ、巻き込まれ逮捕もありつつ、細い糸を辿るように行方を探っていく過程で見えてくる2人の少女の関係性。
最終盤の揺り戻しの「なぜ?」に応えるビターな真意も -
Posted by ブクログ
1930年代の中国、私立探偵を営む女性のもとにひとりの女子学生が依頼を持ち込んできたことから、彼女は奇妙な因縁まつわる事件に巻き込まれていく。
端正で無駄のない筆致で綴られる、きわめて冷静なハードボイルドの筆致が、まだ年若い作者によるものだと思うとかなり驚く。並々ならぬ博識も、ほかの著作で片鱗を味わったものの本当に凄い。そして堅苦しさを懸念する縁遠い時代設定も「物事がどう進み、誰がなにを企てたか」をスマートに描いているので、意外なほどすんなりと物語を追える。ほんと巧い作家だと感心します。
登場人物たちが良い意味で皆「冷静な大人」ばかりなので、それなりのドロドロとした因縁話ではあるものの、激情