大久保洋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
女性探偵・劉のもとへ葛令儀という女学生から行方不明になった友人・岑樹萱を探してほしいと依頼を受ける。
安くはない費用を女学生が払えるのかと言えば、彼女は地元の大物、葛天錫の姪であった。
岑の行方を調べるうちに謎の男に襲われ、妨害された理由を知ったときに複雑な事情を知ることになる。
岑が誘拐されたこととその後の錯綜する人間関係。
単なる友情では済まされなくなったとき、何が残ったのか。
最後まで言葉少なく感情のない岑樹萱(令淑)が、復讐をやり遂げたとき…
劉との会話に寂しさを感じた。
1930年代の中国と女性探偵の活躍という不思議な感覚ながらもこの事件の真相を思うままに楽しめた。
-
Posted by ブクログ
表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きなた抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけ
-
Posted by ブクログ
ネタバレ短篇集。8篇収録。
理論とかすっとばしてただひたすらに読んでいく(難しくて理解できないところもあるので…)こういう作品が作られていることが嬉しい。
物語の歌い手
上質な童話というか、こういった中世の世界観大好き。
三つの演奏会用練習曲
こちらはインド。不思議な読み心地。
開かれた世界から有限宇宙へ
ゲーム世界の理論の作り込みってこんなに大変なんですね(汗
インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ
読み終えて、ごめんなさい分かりません(笑)と思ったら
『異常論文』掲載の作品なんですね。私にはハードル高すぎました。
ガーンズバック変換
香川県にだけ存在するガーンズバック変換。面 -
Posted by ブクログ
刻々と変わりゆく街の風景と、変わり映えしない毎日に挟まれて、どちらにも馴染めずに少し疲れたとき、心はゆっくりと身体から離れて漂いだす。
陳春成が描く物語は、黄昏と闇夜のあわいに立ち上る影のように、竹林を鳴らす風が耳元で囁く秘密のように形を留めず移ろってゆく。
そこには驚異的なイマジネーションや壮大な幻想 の王国はないかもしれない。
ナイーブ過ぎる白昼夢や、遠い記憶の残滓に過ぎないのかもしれない。
だが、彼が描き出すイメージたち ー
少年の夢を乗せたまま永遠の夜を航行する潜水艦(『夜の潜水艦』)
取り壊された実家の記憶を宿して古い石碑と共に苔生していく使い道のない鍵(『竹峰寺 鍵と碑の物語』) -
Posted by ブクログ
東アジア~東南アジアの若手作家による『絶縁』という共通テーマのもとに書き下ろされたアンソロジー。
かなり読みごたえがある。
読み終えるのに結構な時間がかかった。
同じ時代を生きているのに、その国の政治・社会状況によりこんなにも違った世界が広がっているとは、想像もしなかった。そう、同じテーマのもとに書かれているにも関わらず。
作家の個人的な傾向もあるだろうが、それとてその国の社会情勢に影響されることは少なくないだろう。
村田沙耶香、チョン・セランの作品は、読みながら(村田沙耶香のはディストピアのようだったが)その状況や心理が掴みやすかったのは、やはり似通った社会構造の国の作家だからだろうか。 -
-
Posted by ブクログ
SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。
少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。
その中 -
-
-
-