大久保洋子のレビュー一覧

  • 喪服の似合う少女

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    女性探偵・劉のもとへ葛令儀という女学生から行方不明になった友人・岑樹萱を探してほしいと依頼を受ける。
    安くはない費用を女学生が払えるのかと言えば、彼女は地元の大物、葛天錫の姪であった。
    岑の行方を調べるうちに謎の男に襲われ、妨害された理由を知ったときに複雑な事情を知ることになる。
    岑が誘拐されたこととその後の錯綜する人間関係。
    単なる友情では済まされなくなったとき、何が残ったのか。

    最後まで言葉少なく感情のない岑樹萱(令淑)が、復讐をやり遂げたとき…
    劉との会話に寂しさを感じた。

    1930年代の中国と女性探偵の活躍という不思議な感覚ながらもこの事件の真相を思うままに楽しめた。




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    2024年09月30日
  • 検察官の遺言

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    個人的に構成が面白かったです。ただ話が進むにつれて最初から変わらない事実がどんどん悲しくもありました。
    解説を読むと、創作とはいえあまり踏み込むと圧力がかかったりしないのかなと心配しつつもこれからも中国ミステリーを楽しませてほしいです。

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    2024年03月13日
  • 検察官の遺言

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    駅で逮捕された弁護士のスーツケースから元検事の遺体が。殺害を自供したのに公判で覆す。12年前の事件と大きく関わる。

    初めて読む華文ミステリ。面白かった。なぜややこしいことを仕組むのかその長大なプロセスがすごく好み

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    2024年03月12日
  • ガーンズバック変換

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    表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きなた抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけ

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    2024年02月20日
  • ガーンズバック変換

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    香川県ネット・ゲーム依存症対策条例をテーマに書かれた表題作『ガーンズバック変換』が前から気になっていて読んだ。SF作品集とされているが、SFしていたのは『開かれた世界から有限宇宙へ』『ガーンズバック変換』『色のない緑』くらいかなあと思う。

    1番面白かったのは『色のない緑』。「色のない緑は猛烈に眠る」という文章がどうやったら成立するかを物語を通して伝える作品。
    「色のない〜」はチョムスキーの例示した意味は成立しないが文法的にはあっている文。

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    2024年02月08日
  • ガーンズバック変換

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    ネタバレ

    短篇集。8篇収録。
    理論とかすっとばしてただひたすらに読んでいく(難しくて理解できないところもあるので…)こういう作品が作られていることが嬉しい。

    物語の歌い手
    上質な童話というか、こういった中世の世界観大好き。

    三つの演奏会用練習曲
    こちらはインド。不思議な読み心地。


    開かれた世界から有限宇宙へ
    ゲーム世界の理論の作り込みってこんなに大変なんですね(汗

    インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ
    読み終えて、ごめんなさい分かりません(笑)と思ったら
    『異常論文』掲載の作品なんですね。私にはハードル高すぎました。

    ガーンズバック変換
    香川県にだけ存在するガーンズバック変換。面

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    2023年11月12日
  • 夜の潜水艦

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    刻々と変わりゆく街の風景と、変わり映えしない毎日に挟まれて、どちらにも馴染めずに少し疲れたとき、心はゆっくりと身体から離れて漂いだす。
    陳春成が描く物語は、黄昏と闇夜のあわいに立ち上る影のように、竹林を鳴らす風が耳元で囁く秘密のように形を留めず移ろってゆく。

    そこには驚異的なイマジネーションや壮大な幻想 の王国はないかもしれない。
    ナイーブ過ぎる白昼夢や、遠い記憶の残滓に過ぎないのかもしれない。
    だが、彼が描き出すイメージたち ー
    少年の夢を乗せたまま永遠の夜を航行する潜水艦(『夜の潜水艦』)
    取り壊された実家の記憶を宿して古い石碑と共に苔生していく使い道のない鍵(『竹峰寺 鍵と碑の物語』)

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    2023年09月24日
  • 絶縁

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    東アジア~東南アジアの若手作家による『絶縁』という共通テーマのもとに書き下ろされたアンソロジー。

    かなり読みごたえがある。
    読み終えるのに結構な時間がかかった。
    同じ時代を生きているのに、その国の政治・社会状況によりこんなにも違った世界が広がっているとは、想像もしなかった。そう、同じテーマのもとに書かれているにも関わらず。
    作家の個人的な傾向もあるだろうが、それとてその国の社会情勢に影響されることは少なくないだろう。

    村田沙耶香、チョン・セランの作品は、読みながら(村田沙耶香のはディストピアのようだったが)その状況や心理が掴みやすかったのは、やはり似通った社会構造の国の作家だからだろうか。

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    2023年06月17日
  • 絶縁

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    正直、難解なものも多く(特に燃える)、途中で断念しそうだったが、「穴の中には雪蓮花が咲いている」が素晴らしくて、読んでよかった〜と思った。チベットが中国なことも知らなかかった無知な私だが、ラシャムジャさんの他の作品も読んでみたい

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    2023年06月02日
  • ガーンズバック変換

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    SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。

    少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。

    その中

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    2023年05月20日
  • 絶縁

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    「絶縁」がテーマだからどの作品も薄暗い雰囲気だった。けどほのかに温かみも感じる作品が多かった。(特に、『穴の中には雪蓮花が咲いている』という話が最もそれ)
    全然読んだことないような国の作家さんたちの作品が読めてよかった。国が違うだけで雰囲気が全然変わる!

    そもそも村田沙耶香さん目当てだったからだけれども、やっぱ村田沙耶香さんは圧倒的だ〜…
    読者をピシャリと閉め出す感覚がくせになるよね

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    2023年04月29日
  • 絶縁

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    アジアの作家の豪華ラインナップ。村田は相変わらずで、たまに読むとそのヘンさが心地よい。ハオ・ジンファンの作品は、彼女らしい寓話だがやや月並み。チョン・セランはさすが。こういう、ストレートに苦いテイストの作品も書くんだと思った。あとよいと思ったのは、ベトナムのグエン・ゴック・トゥと台湾のリエン・ミンウェイの作品。こうしてみると結局、日本と距離的に近い国々の作家に共感しやすいのかもしれない。

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    2023年03月03日
  • 流浪蒼穹

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    ネタバレ

    秋の夜の様に、長く静かな作品だった。二段組で669ページ。読んでは止まり、止まっては読み、数ヶ月かけてようやく読み終えることができた。地球より独立して数十年が経過した火星が舞台。地球への留学から帰ってきた少女ロレイン。二つの世界を知ってしまった彼女はその違いに迷い、自分の生きる道を見失ってしまう。彼女の揺れ動く心の動きを追いながら、微妙なバランスの上に成り立っている火星と地球の関係へと展開する。最後の十数ページにある、ロレインの祖父ハンスの独白が特に印象深かった。

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    2022年10月03日
  • 江戸の食空間――屋台から日本料理へ

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    ずっと昔から食べられていたように思っていた寿司やてんぷらといった料理が登場し、広まっていった過程を知ることができます。江戸という大都市の文化的な背景が外食文化の隆盛に繋がり、そこから多様な料理が生まれるというのが面白かったです。偏った人口構成が外食のニーズを生み、油や醤油の生産技術の発展が新しい流行を作り、庶民の料理が次第に上流階級に広まっていき…と渋い本ではありますが歴史のダイナミズムを楽しむことができます。

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    2019年05月26日
  • 江戸の食空間――屋台から日本料理へ

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    江戸時代に生まれた寿司や蕎麦、鰻の成り立ちや、下りものと呼ばれた酒や醤油などが関東で作られ始める様子がよくわかり、面白い。また、当時の食事の様子を再現しようと、幾つかの文献を手掛かりに庶民や武士、大名の食事が書かれている点は面白い。ただ、もっと当時の食事の様子が臭うようにメニューの様子がわかれば、もっと良いと思う。わからないことも多いと思うが。

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    2013年10月23日
  • 江戸の食空間――屋台から日本料理へ

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    江戸の食文化を扱った本なのですが、握りずしやてんぷらや醤油をはじめ、各職業層の食生活や江戸の水道事情、料理茶屋などなど扱う範囲は広く、気軽に読める程度に深いです。著者は食文化論と調理学が専門という事もあり士農工商を身分制度と誤解しているところはありますが、内容にはまったく影響はないので気になりません。時代小説を好む方にお勧めできる本だと思います。ストーリー以外にも楽しめる幅が広がるはずなので。食という面から江戸時代に接してみると、現代からそんなに遠い時代ではなかったのだなあ。と感じられて楽しめました。

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    2013年02月18日
  • 江戸の食空間――屋台から日本料理へ

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    江戸の食文化を考察する本。
    屋台や料理茶屋などの町人文化の発展が今も続く日本料理店の礎となっているという構成。食文化の追求は特権階級の役目であるのが世界標準かと思っていたが、こと江戸については平民が中心となっている。貪欲な江戸の人々のエネルギーを感じさせる本

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    2013年01月14日
  • 喪服の似合う少女

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    『ロス・マクドナルドに捧げる』という宣伝句と原尞氏の「私が殺した少女」にも通ずる装丁を見たら手に取らないわけにはいかない。地元の有権者一家を巡る事件というのは正にロスマクだし、V・I・ウォーショースキーや葉村晶を彷彿とさせる女性私立探偵のキャラクター造詣も良い。流行りのミステリーに背をそむけた静謐かつ(良い意味で)地味なハードボイルドが令和の世に新刊で読めるのは中々乙なもの。ラストシーンは実に遣る瀬無いが、退廃的様式美がこれまた心憎い。但し、全体的を通して盛り上がりに欠ける作品ではあり、読み手は選ぶかも。

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    2024年12月22日
  • 絶縁

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    様々な縁切り。
    人と人であったり社会であったり或いは自分であったり。
    物語の背景に其々のお国柄が透けて見えるようで興味深く読めました。
    ただやっぱり翻訳モノはちょい苦手、、、

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    2024年12月16日
  • 日中競作唐代SFアンソロジー 長安ラッパー李白

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    中国唐の時代の短編集8篇
    中国4人.日本4人によるアンソロジー。
    はちゃけた表題作、パンダの活躍?する「破竹」、ひらがなの元になりそうな話「仮名の児」が良かった。

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    2024年11月11日